シャコバサボテン

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シュルンベルゲラ属
シャコバサボテン系園芸品種の花
シャコバサボテン一品種の花
保全状況評価
ワシントン条約附属書II類
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
: ナデシコ目 Caryophyllales
: サボテン科 Cactaceae
亜科 : ハシラサボテン亜科 Cactoideae
: 葦サボテン連 Rhipsalideae
: シュルンベルゲラ属 Schlumbergera
学名
Schlumbergera
Lem.
タイプ種
Schlumbergera truncata (Haw.) Moran, 1953
シノニム

Zygocactus truncatus (Haw.) K. Schum., 1890

和名
シャコバサボテン
英名
Christmas Cactus


シャコバサボテン(蝦蛄葉仙人掌)学名(Schlumbergera truncata (Haw.) Moran, 1953)とは、サボテン科シュルンベルゲラ属に属する森林性樹上着生生活をするサボテンの一種である。ブラジルリオデジャネイロ州のオルガン山脈などの高山を原産とするサボテンで、場(北半球ではクリスマスの時期)に開花することから「クリスマス・カクタス」と海外では呼ばれる。短日性植物で一日の日照時間が短くなってくるとを形成することが知られている。シャコバサボテンの種内交配園芸品種も昭和期には日本に多数存在していたが、現在はほとんどが失われてしまった。ごとに一対の突起が隆起しており、これがシャコの身体を彷彿とさせることからこの名が付いた。現在は、この原種を基にした雑種群に慣用的に「シャコバサボテン」と呼ぶことが多い。また、本種を使用して発展した現在主流の雑種群は、商品名として「デンマーク・カクタス」として普及している[1]

形態・生態

多肉質で縁にぎざぎざがある小判型の形状をした葉茎節がいくつも連なった形状をしており、幾又にも枝分かれする。その枝先にをつける。現在の様々な園芸品種群の花色は赤色ピンク桃色朱色黄色(低温下で開花させると濁った橙色に花色が変わる性質を持つ)、白色(低温下で開花させると薄い桃色に花色が変わる性質を持ち、白く咲いても雌蕊は赤紫色をしている)、アルビノ性の純白色品種(温度に関係なく純白の花を咲かせ、雌蕊が黄色いところで前述の白花品種とは区別できる)など多彩である。開花期は10月頃から1月頃にかけてが中心であり、花は7cmほどの大きさ。商業鉢物として広く普及してきたが、落蕾と言い、がポロポロと取れてしまう欠点がある。蕾が未成熟の時に移動させると落蕾しやすいのである程度蕾が大きくなってから、株を移動させないとならない。

原種

現在の様々な園芸品種群は以下の(しゅ)が元になっているが、

・シュルンベルゲラ・トルンカタSchlumbergera truncata (Haw.) Moran, 1953)[2] が最も重要な原種であり、この原種にシャコバサボテンと名付けられたが(狭義の意味で)、これが以下に示す園芸品種群の基礎になったもので、現在は複数の原種の遺伝子を取り込んで作出された雑種群に対して総称的に「シャコバサボテン」(広義の意味で)と呼ばれている。他に関与した原種としては、

・シュルンベルゲラ・ルッセリアナ (和名:カニハサボテン / 蟹葉仙人掌)Schlumbergera russeliana (Hook.) Britton et Rose, 1913)[3]があり、シヤコバサボテンと分布域が重なるのだが、自生地の標高が異なり、シヤコバサボテンが秋~冬咲きなのに対して、本種は春咲きである。ルッセリアナはギザギザの少ない小判型の茎節が特徴である。遅咲きの園芸品種の遺伝形質は本種に起因している。

・シュルンベルゲラ・×バックレイ(Schlumbergera × buckleyi (T.Moore ) D.R. Hunt, 1969)と1969年に学術命名記載されている。これは、シャコバサボテンとカニハサボテンの自然交雑種で両者の特徴を持つもので、開花期が様々な子に分離する。この親同士の組み合わせを人為的に再現したものを使用して、昭和後期に発展した「クリスマス・カクタス」と慣用的に称される初期の園芸品種群を形成した。

・シュルンベルゲラ・オプンチオイデスSchlumbergera opuntioides (Loefgr. et Dusén) D.R. Hunt, 1969)をシュルンベルゲラ・×バックレイに交配したものは春咲きの傾向が強いが、この雑種群を基に花が12月近辺に開花するものを選抜した一群を商品名として「デンマーク・カクタス」と呼び市場に流通しており、これらの雑種群が現代の園芸界の主流の品種群である。但し、この原種自体は一般には普及していない。

・シュルンベルゲラ・オルシッチアナSchlumbergera orssichiana Barthlott et McMillan, 1978)は大型で、四季咲き性があるが、オルシッチアナを「デンマーク・カクタス」に交配されたものも存在し、これらの雑種群は、超早咲き、夏咲き、花の大型化などの形質を受け継ぐ。これらの雑種群は「チバ・シリーズ」と名付けられている。ただ、オルシッチアナを交配に使用すると夏咲き品種すら作出できるが、商品性に薄く一般には普及しなかった。オルシッチアナ自体の観賞価値は高いが、日本の夜間の蒸し暑さに弱い弱点があり、この原種自体は一般には普及していない。

保全状況評価

シュルンベルゲラ属自体はワシントン条約附属書II類に掲載されており、取引が規制されている。ただし、「Schlumbergera truncata(シュルンベルゲラ・トルンカタ)の栽培品種」および「Schlumbergera truncata(シュルンベルゲラ・トルンカタ)の交配種」は除外されており、ワシントン条約の適用を受けない[4]

脚注

  1. ^ 中村浩『園芸植物名の由来』東京書籍、1998年、240頁。ISBN 4-487-79558-3 
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “{{{taxon}}}”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年12月8日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “{{{taxon}}}”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年12月8日閲覧。
  4. ^ 経済産業省貿易経済協力局. “ワシントン条約附属書(植物界)平成25年6月12日から発効” (PDF). ワシントン条約について. 経済産業省. 2013年12月8日閲覧。

関連項目

外部リンク