サロス周期
サロス Saros | |
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量 | 時間 |
組立 | 6585.3212 d = 18.029627 a |
定義 | ~ 223 朔望月 ~ 242 交点月 ~ 239 近点月 ~ 19 食年 |
サロス周期(サロスしゅうき、Saros cycle)とは日食や月食が起こる日を予測するのに用いられる周期である。単にサロスと呼ぶこともある。1サロス周期は6585.3212日(約18年10日8時間)である。1サロスごとに太陽と地球と月が相対的にほぼ同じ位置に来るため、ある日食または月食から1サロス後にはほぼ同じ条件の日食または月食が起こる。
概要
例えば1999年8月11日にヨーロッパを中心とする皆既日食が起こったが、これとほぼ同じ条件の日食が2017年8月21日に見られる。サロス周期には1/3日という端数が含まれているため1サロス後の日食は地球の1/3回転分、すなわち120度西にずれた位置で起こる。よって上記の2017年の日食は北アメリカを中心とする地域で見られる。また2009年7月22日の皆既日食は21世紀中に観測される日食のうち最も皆既継続時間が長いものとして有名であるが2番目に長い日食もこの日食の1サロス後2027年8月2日の日食であり、3番目に長い日食もさらに1サロス後の2045年8月12日の日食である。
たとえば、今世紀中に観測される皆既日食のうち皆既継続時間が長いものはつぎのとおり。
サロス 系列 |
中心位置到達日時 (UTC) |
最大皆既 継続時間 |
中心位置 | ||
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緯度 | 経度 | ||||
1 | 136-37 | 2009年7月22日 2:36:25 | 6分39秒 | 北緯24.2° | 東経144.1° |
2 | 136-38 | 2027年8月2日 10:07:50 | 6分23秒 | 北緯25.5° | 東経33.2° |
3 | 136-39 | 2045年8月12日 17:42:39 | 6分6秒 | 北緯25.9° | 西経78.5° |
4 | 139-34 | 2096年5月22日 1:37:14 | 6分6秒 | 北緯27.3° | 東経153.4° |
5 | 136-40 | 2063年8月24日 1:22:11 | 5分49秒 | 北緯25.6° | 東経168.4° |
6 | 139-33 | 2078年5月11日 17:56:55 | 5分40秒 | 北緯28.1° | 西経93.7° |
7 | 136-41 | 2081年9月3日 9:07:31 | 5分33秒 | 北緯24.6° | 東経53.6° |
8 | 146-27 | 2010年7月11日 19:34:38 | 5分20秒 | 南緯19.7° | 西経121.9° |
9 | 136-42 | 2099年9月14日 16:57:53 | 5分18秒 | 北緯23.4° | 西経62.8° |
10 | 139-32 | 2060年4月30日 10:10:00 | 5分15秒 | 北緯28.0° | 東経20.9° |
これらはいずれも136番のサロス系列で中心の位置は各々北緯24.2度 東経144.1度、北緯25.5度 東経33.2度、北緯25.9度 西経78.5度と1サロス毎にほぼ120度ずつ西にずれてゆく。
exeligmos
サロス周期は古代の天文学者によって発見され、計算法が簡単だったために広く使われていた。唯一の問題は、1サロス後の食が約8時間遅れて起こることであった。これは日食の場合には、現象を見られる地域が地球1/3周分だけ西にずれることを意味する。よって、ある日食が見られた地域のほとんどの場所ではその1サロス後の日食は見ることができない(月食の場合には、月が地平線上に上ってさえいれば1サロス後の月食も見ることができる)。そこでより長い3サロス分の周期(54年31日)をトリプルサロスあるいはギリシャ語で「exeligmos」と呼び、この周期がよく用いられた。1exeligmos後にはほぼ同じ場所で食が見られることになる。
原理
天文学的には、サロス周期は月と太陽の周期の倍数が同じ(公倍数)になるために起こる。1サロスは以下の時間に等しい[1]。
このため、食の条件も1サロス前と非常に似たものとなるのである(太陽と月の合または衝が月のどちらかの交点で起こる、すなわち月が軌道面と交差するところで合または衝になる時に食となる)。
1サロス周期は223朔望月なのである朔(または望)を1番目とすると、そこから数えて223番目までの朔(望)はみな異なる周期に属する。224番目の朔(望)は、1番目と同じ周期に入る。同時進行している223の周期のうち太陽、地球、月がうまく重なるものは一部しかない。その一部も毎回少しずつ場所がずれていき、やがて食を作らなくなる。その一方で、今まで食を作らなかった周期が食を作るようにもなる。
系列
歴史時代に日食を作ったサロス系列には、ジョージ・ヴァン・デン・ベルグ (George van den Bergh) によって番号が付けられている。2011年7月1日より前には、117から155までの番号を付けられた39本の系列が進行していた。2011年7月1日に156番の系列が発生し、現在は40本の系列が進行している。2054年8月3日の部分食を最後に117番が消滅するまでは40本の系列が進行する[2]。日食のサロスの系列は食が69~86回(1,226~1,532年間)起こるまで持続する。平均すると77回(1,370年間)である。サロス系列の始まりと終わりは部分日食で、系列の中ほどに約48回の皆既食または金環食を含む。
月食の場合、現在は110~149番の40本の系列が進行しているが2013年5月25日に150番の系列が発生して41本となり2027年7月18日には110番が消滅して再び40本となる[3]。月食のサロス系列は食が71~87回起こるまで(1,262~1,551年間)持続する。平均すると日食の系列よりは短く、72回(1,280年間)である。このうち40~58回が皆既食となる。
語源
サロス周期はおそらくカルデア人(古代バビロニア地方の天文学に長けていた人々)には知られていたと考えられ、後にヒッパルコスやプリニウス、クラウディオス・プトレマイオスにも知られるようになったがサロスという名前では呼ばれていなかった。サロスという語は、バビロニア時代において3,600年という別の周期の呼び名として使われていたものだった。サロスを食の周期の名前として最初に使ったのはエドモンド・ハレーで、1691年のことであった。ハレーは11世紀のビザンツ帝国の『スーダ辞典』からこの語を採った。ハレーのこの誤りは1756年にフランスの天文学者ギヨーム・ル・ジャンティによって指摘されたが、サロスという用語はそのまま使われ続けた。
脚注
参考文献
- George van den Bergh, Periodicity and Variation of Solar (and Lunar) Eclipses, 2 vols. H.D. Tjeenk Willink & Zoon N.V., Haarlem, 1955