エチレンジアミン四酢酸

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エチレンジアミン四酢酸
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識別情報
略称 EDTA
H4EDTA
CAS登録番号 60-00-4 チェック, 15251-22-6 (2H),(2H),(2H)
PubChem 604946781544 (13C),(13C),(1-13C)16217600 (2H),(2H),(2H)
ChemSpider 5826 チェック
17345117 (2H),(2H),(2H)?
UNII 9G34HU7RV0 チェック
EC番号 200-449-4
国連/北米番号 3077
DrugBank DB00974
KEGG D00052 チェック
MeSH Edetic+acid
ChEBI
ChEMBL CHEMBL858 チェック
RTECS番号 AH4025000
ATC分類 V03AB03
バイルシュタイン 1716295
特性
化学式 C10H16N2O8
モル質量 292.24 g mol−1
外観 白色粉末
密度 0.86 g/cm3
融点

237–245 °C
510-518 K
(分解)

酸解離定数 pKa pK1=0.0 (CO2H) (µ=1.0)
pK2=1.5 (CO2H) (µ=0.1)
pK3=2.00 (CO2H) (µ=0.1)
pK4=2.69 (CO2H) (µ=0.1)
pK5=6.13 (NH+) (µ=0.1)
pK6=10.37 (NH+) (µ=0.1)[1]
危険性
安全データシート(外部リンク) External MSDS
主な危険性 irritant
NFPA 704
0
1
0
Rフレーズ R36
Sフレーズ S26
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
二ナトリウム塩二水和物
識別情報
CAS登録番号 6381-92-6
KEGG D01802
特性
モル質量 372.24
外観 無色結晶
融点

248 °C, 521 K, 478 °F (分解)

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

エチレンジアミン四酢酸(エチレンジアミンしさくさん、ethylenediaminetetraacetic acid)は金属キレーション剤の一種であり、EDTA あるいはエデト酸と呼ばれることがある。示性式は (HOOCCH2)2NCH2CH2N(CH2COOH)2。通常、とくに断らない場合の EDTA はジナトリウム塩であり、日本薬局方ではエデト酸ナトリウムである。ジナトリウム塩であることを正確に記述したい場合や強調したい場合などは、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム、EDTA・2Na、などと記述される。

錯体による形成

金属-EDTAキレート錯体(Mは金属イオン)

EDTAはキレート剤であり、Ag+Ca2+Cu2+Fe3+Zr4+ などのそれぞれ1価、2価、3価、4価の金属イオンとキレート錯体を形成する(キレート結合)。特にカルシウム、銅、鉄(3価)、コバルト(3価)とは強く結合する。この特性を利用してキレート滴定に広く使われている。EDTAは4つのカルボン酸と2つの3級アミンを持つため、酸塩基反応にも利用される。

使用例

EDTAの錯化特性を利用して硬水中のMg2+Ca2+をキレートで捕集することで軟水化することができ、その目的でシャンプーなどの化粧品に添加される。あるいは金属中毒の治療剤として処方される場合もある。

最も重要な利用法として以下のようなものがある。

  • 工業的洗浄 - 重金属表面に付着したカルシウム、マグネシウムの錯化除去
  • 合成洗剤 - カルシウム、マグネシウムの除去(水の軟水化)
  • 写真工業 - 鉄(III)-EDTA錯体の酸化剤としての利用
  • パルプ・製紙業 - 非塩素系漂白剤を使用する際に生じる過酸化水素の安定化を目的とした重金属の錯化除去
  • 繊維工業 - 漂白剤安定化のための重金属錯化除去
  • 農業 - 主に石灰質土壌における鉄、亜鉛、銅を含む肥料としての利用

またその他にも以下のような利用法が挙げられる。

  • 食料品 - 保存料、安定化剤、鉄分強化剤としての利用
  • 化粧品 - 保存料としての利用
  • 石油生産 - 無機物の沈殿を防ぐためのボアホールでの利用
  • 乳製品・飲料 - 乳成分由来の汚れの除去
  • 排気ガス - 窒素酸化物の除去
  • 医薬品 - 急性高カルシウム血症鉛中毒の治療、抗凝固剤入り採血管
  • 歯科治療 - 歯の根管の洗浄(無機物の除去)
  • その他の治療 - デトックスキレーション治療、キレート療法等と称し、主にアメリカで行われているという。これに関連してEDTAを合成アミノ酸と呼ぶ例が見られる。確かに広義のアミノ酸に違いないが、大衆向け広告の表現としては疑問がある。

科学の分野では以下のように利用される

環境への影響

微生物には分解できないため、水処理としてはやや難易度の高い処理が必要である。一般に次亜塩素酸ナトリウム添加による酸化分解法が採られるが、重金属等の共存下では事前実験が必要である。

ヨーロッパでは使用が規制されている。また、世界保健機関では、飲料水水質ガイドラインとして、0.6mg/Lと定めている。これは、EDTAが亜鉛をキレートして、飲料水から亜鉛が摂取できなくなり、亜鉛欠乏に陥ることもあることを懸念しての策である。

出典

  1. ^ Harris, D.C. "Quantitative Chemical Analysis", 7th ed., W. H. Freeman and Compagny, New York, 2007

関連項目