エゾエンゴサク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。禁樹なずな (会話 | 投稿記録) による 2021年3月1日 (月) 11:54個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎主な群生地: リンク追加)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

エゾエンゴサク
北海道滝川市 2014年4月下旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: キンポウゲ目 Ranunculales
: ケシ科 Papaveraceae
: キケマン属 Corydalis
: Corydalis fumariifolia
亜種 : エゾエンゴサク C. f subsp. azurea
学名
Corydalis fumariifolia Maxim. subsp. azurea Lidén et Zetterlund[1]
シノニム

エゾエンゴサク(蝦夷延胡索、学名:Corydalis fumariifolia subsp. azurea)はケシ科キケマン属多年草[3]

従来、本種の学名は C. ambigua とされ、分布地は、北海道から本州の中部以北の日本海側とされていた[4]が、学名は上記のものに変更され、また、本州の東北地方から北陸地方に分布するものは、別種のオトメエンゴサク C. fukuharae とされている[5]

特徴

地下に径1-2cmの球形の塊茎があり、塊茎の中身は黄色をおびる。植物体は無毛か毛状の乳頭突起がある。花茎の高さは10-30cmになり、2個の普通葉と1個の鱗片葉がある。普通葉は葉柄があり、1-3回3出複葉で、線形から卵円形の小葉3枚からなるが、個体による変異が多い。小葉の長さは1-3cm、全縁か3裂し、先は鈍頭または円頭になる[3]

花期は4-5月。茎の上部に青色から青紫色の総状花序に咲かせる。苞は卵形でふつう全縁。花柄は長さ1cmほど。花の長さは17-25mmになり、距は基部が太く、先がしだいに細くなる傾向がある。果実は蒴果で、線形から長楕円状線形になり、長さ15-23mm、幅2.5-3mmになる。種子は黒褐色で光沢があり滑らかである[3]

春先に花を咲かせ、落葉広葉樹林の若葉が広がる頃には地上部は枯れてなくなり、その後は翌春まで地中の地下茎で過ごすスプリング・エフェメラルの一種。

分布と生育環境

南千島、北海道、サハリンに分布し、樹林地や林縁、草地などに生育する。分類上の基本種 subsp. fumariifoliaオホーツク海沿岸に分布し、エゾエンゴサクより複葉の小葉や花が狭い[3]

名前の由来

和名エゾエンゴサクは、「蝦夷延胡索」の意で、蝦夷に生えることと、地中の塊茎が漢方薬の「延胡索」に似ていることから付けられた[5]

利用

エゾエンゴサクは、同属のキケマンムラサキケマンなどと違い、毒性が無く風味が良いので食用に供される。花を含む地上部は普通の野菜のように加熱調理して食べる。塊根アイヌ語で「トマ」と呼ばれ、保存食として利用されてきた。 有毒のキケマンは草をちぎると不快臭がするので判別は容易である。観賞用としても良いが、漢方薬にも使用される。

画像

近縁種

主な群生地

脚注

  1. ^ エゾエンゴサク「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ エゾエンゴサク(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ a b c d 福原達人 (2016)「ケシ科」『改訂新版 日本の野生植物 2』p.104
  4. ^ 久志博信『「山野草の名前」1000がよくわかる図鑑』主婦と生活社、2010年、18ページ、ISBN 978-4-391-13849-8
  5. ^ a b 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.461

参考文献