XLRタイプコネクター
XLRタイプコネクターとは、米キャノン社(Cannon社)が開発したXLR型コネクター及びその互換品を指す。一般にキャノンコネクターとも呼ばれる。光学機器のキヤノンとは無関係。
概要
構造上1番ピンが他のピンより先に接続されるため、1番ピンをGNDにすることで筐体間電位差を解消してから信号線を接続することが出来る。このために抜き挿し時のノイズを嫌うオーディオ用音声コネクタとしてデファクトスタンダードの地位を築いた。 プラグ、レセプタクル各々にオス、メスの極性があり、ケーブルの延長が容易に出来る点やロック機構で抜けにくい点などがメリットである。外観は銀色または黒色でつや消し処理が施されており、舞台やスタジオの照明が反射しないよう配慮されている。
業務用・放送用機器あるいはハイエンド向けAV機器に多く使用されているのは、後述のノイズ対策をはじめとして業務用途での使い勝手が良いことが採用の理由である。
1ピン当たりの電流容量が比較的大きいことから電源コネクタやスピーカー接続用としても利用される。
オーディオ用途に於ける用例
現在のところ、平衡回路の接続において標準的なコネクタとなっている。マイクロフォンの接続用として最もメジャーになっているが、その他にもスピーカー接続用、デジタル伝送用、アナログオーディオ伝送用などの種類がある。
電子機器の場合、一般には外部に対して電圧を供給する出力側にメスコネクタを用いて不測のショート事故を防止するが、プロオーディオ分野に於いてはミキサーのマイク入力からマイクに対し電源(ファンタム、ファントム電源)を供給する需要があった。そこで、ミキサーの入力側のショート防止を優先し、機器同士をオス/メスのケーブルで接続する利便性を取ったために、一般の電子機器と逆にマイク等出力側をオス、ミキサー等入力側をメス端子にすることが一般的になった。
3極コネクタによる音声の平衡接続に於いて信号線の正相(HOTと呼ぶ)を2番ピンにするか3番ピンにするかは長い間混乱していたが、AESにより1992年に2番ピンをHOTとすることで規格化(AES14-1992)され、以降は2番HOTが国際標準となった。同時に5極コネクタに於ける2ch平衡接続のピンアサインも規格化された。
XLRコネクターからフォーンコネクターなど不平衡回路に接続する場合は、逆相側(COLDと呼ぶ。3極コネクタの場合は3番ピン)を未接続にするか、不平衡側で1番ピン(GND)にショートさせる方法が一般的であるが、インピーダンスが合わないという問題上、マッチングトランスを用いて接続した方がよい。
家庭内のオーディオ機器に採用されている場合も存在するが、この場合、マイクロフォンの信号レベルよりも大きなラインレベルとなり、ケーブルも比較的短くなるため、ノイズの影響を受けにくい。従って本来の用途を考えた場合、このような使用方法に利点は殆どないとされるが、プレーヤー→プリアンプ→メインアンプまでの信号処理が完全にバランス回路化された製品を揃えたメーカー(国内ではラックスやアキュフェーズ)もあり、その場合バランス接続の方が推奨されている。
電源コネクタとしての用例
日本国内においては放送機器の電源接続用として機器の筐体とACケーブルとの接続部分に多用された。この場合は2極のコネクタを用い接地極は設けなかった。現在ではIECタイプの3極コネクタが標準的に使用されるようになっている。
ITTキャノンは自社のXLRシリーズコネクタについて、一次電源用としての使用を認めていない[1]。
主なメーカー
- ITTインターコネクト・ソリューション - XLRタイプコネクターを開発した企業Cannon(キャノン)社が現在米ITT社の傘下となり、社名をITTインターコネクト・ソリューションとしている。日本法人は「株式会社アイティティキャノン」。
- スイッチクラフト
- ノイトリック
- 日本航空電子工業(既に同社2007年版カタログには存在しない)
- ヒロセ電機
知られている問題
このコネクタがバランス伝送用とうたって搭載されていても、内部ではアンバランス接続になっているアンプが存在する。これを批判する者も居る。
多極コネクターのピン配列が一部メーカーで異なる場合があるので注意が必要である。6極コネクターには5極が入ってしまうことがあるため6Aコネクターが存在する。6と6Aは互換性がない。
主な関連規格
- AES14-1992 - XLRコネクターの極性、接続の方向性に関して定義された。
- AES3-2003 (AES3-1992) - デジタルオーディオ信号のバランス伝送の接続に関して定義された。
脚注
- ^ 製品情報 Audio Connector ITT Cannon