D-STAR

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D-STAR英語: Digital Smart Technologies for Amateur Radio)とは、日本アマチュア無線連盟が開発した音声モードとデータモードとをもつデジタル化されたアマチュア無線通信網である。従来と同様の無線機同士直接の通信又はレピータを介した通信の他に、レピータ間の中継ができるよう設計されているなどの特徴がある。

D-STAR方式のレピータを、ここではデジタルレピータと書く。

モード

通信モードには、DV(Digital Voice:デジタル音声)モードとDD(Digital Data:デジタルデータ)モードとの2種類がある。 電波型式は、F7Wである。

DVモード

VHF・UHF帯を使用し、音声をAMBE(米デジタルボイスシステムズ社(Digital Voice Systems, Inc.、略称DVSI)が開発した高度マルチバンド励振方式:「Advanced Multi-Band Excitation」の略)で2.4kbpsに符号化し、GMSK(Gaussian filtered Minimum Shift Keying、ガウス最小偏移変調)で変調して占有周波数帯幅6kHzで送信するモードである。DVモードでは、音声の伝送と同時に4.8kbpsの低速デジタルデータ送信が可能である(後述のDDモードの上にイーサネット電話又はIP電話を乗せているものではない)。

DDモード

1200MHz帯を使用する、占有周波数帯幅150kHzで速度128kbpsのデジタルデータ通信モードである。イーサネットフレームを透過的に流すことができる。DDモード対応トランシーバ(市販モデルとしてアイコムのID-1など)はイーサネット接続が必要である。

前方誤り訂正が含まれていないため、データエラーには上位層が再送を行うことによって対応する。そのため、マルチパス等によってエラーレートが上がると輻輳が生じて伝送速度が著しく低下するという問題がある。

中継

デジタルレピータ局間は、5GHzまたは10GHz帯レピータアシスト局による10Mbps非同期転送モード(ATM)回線(アシスト回線という)、もしくはレピータに接続されたゲートウェイと呼ばれるホストPC間のインターネット接続により中継ができる。DDモード上のTCP/IPについては、ゲートウェイから外部のインターネットへも接続できる。

従来のアマチュア無線におけるパケット通信との互換性

ターミナルノードコントローラを利用する従来のパケット通信 (アマチュア無線) とはインタフェースが異なるため、相互利用はできない。従来のパケット通信でもTCP/IP通信がおこなわれていたが、そちらはAX.25(en:AX.25)にIPを乗せたものであり、D-STARのDDモードはイーサネットであるため直接の相互運用はできず、レイヤ3(IPの層、ネットワーク層)を通す必要がある。

利用

ローカル局同士直接のデジタル音声・デジタルデータ通信も可能であるが、ローカル局の無線機からデジタルレピータを経由して相手先の無線局又は更にアシスト回線、ゲートウエイ局経由のインターネット回線などのデジタル幹線網を経由して別のデジタルレピータを経由して相手先の無線局と通信する、という利用法が広く行われている。

応用として、DVモードのデジタル音声通信と同時にGPSとDVモードの4.8kbpsデジタルデータ通信機能を利用して、位置情報をリアルタイムに交換しあう通信方法が利用されている。

2006年9月以降に周波数などが再編成され、430MHzでのDVのレピータ局も増設された。D-STARのレピータは、当初、日本国内(G1=第一世代)だけだったが、珍しく日本発の規格が欧米に広がり世界規模のアマチュア無線デジタル網に育った。2015年現在、世界のレピータ数:1000程度、日本国内:160以上と、後発の欧米のレピータは世界のレピータ群串刺しの反射板(レフレクタ、Reflector)と接続できるなど仕様が新しい(G2=第二世代)。

歴史

  • 1998年 郵政省からの依託により日本アマチュア無線連盟が「アマチュア無線へのデジタル技術導入に関する調査検討」プロジェクト開始。
  • 2001年 日本アマチュア無線連盟の次世代通信委員会が中心となりD-STARシステムの実験局免許を取得、実用化実験を開始。
  • 2002年 アマチュア無線フェスティバルでの展示・デモ通信を実施。
  • 2004年 総務省省令等の改正により、日本アマチュア無線連盟によるD-STARシステムの運用開始。当初は関東、東海、関西の3地域のレピータで開始。
  • 2005年 レピータ開設募集開始。

外部リンク