Construction Master

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Construction Master IV

Construction Masterは、米国Calculated Industries社が販売している建築計算用電卓である。Construction Master IV、Construction Master V、Construction Master Pro [1]、Construction Master 5 [2] など、数種類の機種がある。 隅棟計算、屋根谷計算、配付け垂木計算、階段計算等の建築計算機能があり、三角関数の扱いにも独特のものがある。[3]

概要[編集]

以下の仕様は Construction Master IV のものである。

  • データメモリ[4][5]: 1本
  • 基本計算機能[6]: 四則演算[7]、平方根、平方、逆数[8]、ほか
  • 建築計算機能[9]: 隅棟計算[10]、屋根谷計算[10]、配付け垂木計算[10]、階段計算[11][12]、屋根計算(直角三角形計算)[13]、ほか
  • 寸法計算機能[14][7]:長さ計算[15]、面積計算[16]、体積計算[17]、体積重量計算[18]、体積価格計算[19]、長さ換算、面積換算、体積換算、ほか
  • 計算履歴表示機能[20]: 20件[21]
  • 入力装置: 42キー (写真参照)
  • 出力装置: LCD (文字表示部14セグメント、数字表示部7セグメント)。文字4桁、整数部7桁[22]、インチ分数[23][24]部2桁/2桁 (写真参照)
  • 電源: CR2032ボタン電池1個[25]

特徴[編集]

三角関数の扱い[編集]

三角関数については、一般的な関数電卓では、角度θを与えて、sinθ、cosθ、tanθ等を求めるという実装となっており、sinθ、cosθ、tanθ等の値には単位がない。

Construction Masterでは屋根計算(または直角三角形計算)[13]という機能があり、ピッチ(Pitch)、ライズ(Rise)、ラン(Run)、ダイアゴナル(Diag)の4値の内の2値を与えて、残りの2値を求めるという実装となっている。[26] ライズは直角三角形の高さを、ランは底辺の長さを、ダイアゴナルは斜辺の長さをそれぞれ表し、単位が存在する。[27] 単位はヤードフィートインチでの指定とメートルセンチメートルミリメートルでの指定が可能である。[28]

ピッチは斜辺の勾配を示す数値で、ピッチの指定には下記の4通りの方法が用意されている。[26]

  • 角度(angle) - 角度θを度数法の度で表した値
  • 寸法(dimension) - ラン12インチあたりのライズのインチ数[29]
  • 比(ratio) - ランに対するライズの比[30]
  • パーセント(percentage) - 上記の比をパーセントで表した値(パーセント勾配)[31]

計算結果としてピッチを求めた場合には、角度が返される。

Construction Masterでsinθ、cosθ、tanθを求めるには以下のようにする。[27]

  • ダイアゴナルに 1 を入力し、ピッチに角度θを入力すれば、ライズで sinθ を、ランで cosθ を求めることができる。
  • ランに 1 を入力し、ピッチに角度θを入力すれば、ライズで tanθ を求めることができる。

また、sin-1x、cos-1x、tan-1xを求めるには以下のようにする。[27]

  • ダイアゴナルに 1 を入力し、ライズに x を入力すれば、ピッチで sin-1x を求めることができる。
  • ダイアゴナルに 1 を入力し、ランに x を入力すれば、ピッチで cos-1x を求めることができる。
  • ランに 1 を入力し、ライズに x を入力すれば、ピッチで tan-1x を求めることができる。

cotθ、secθ、cosecθ、cot-1x、sec-1x、cosec-1xも同様の手順で求めることができる。

Construction Masterは建築計算用の電卓であるので、角度には度数法の度のみが使用でき、ラジアンは使用できない。[32] また、建築に存在しないような数値は使用できない。角度θは屋根の勾配を想定しているので 0≦θ<90 である必要があり、ライズ、ラン、ダイアゴナルの入力値も正数である必要がある。数学的用途に使用するには工夫が必要となる。

脚注[編集]

  1. ^ Construction Master Pro”. Calculated Industries. 2021年7月9日閲覧。
  2. ^ Construction Master 5”. Calculated Industries. 2021年7月9日閲覧。
  3. ^ Construction Master IV User's Guide (CM4-Mon MANU-075-02), Calculated Industries, 1995 (以下「UG」と省略)
  4. ^ UG P5
  5. ^ UG P22
  6. ^ UG P4-P5
  7. ^ a b UG P19-P20
  8. ^ UG P13
  9. ^ UG P10-P11
  10. ^ a b c UG P47-P52
  11. ^ UG P12
  12. ^ UG P53-P55
  13. ^ a b UG P39-P46
  14. ^ UG P15-P18
  15. ^ UG P27-P28
  16. ^ UG P29-P31
  17. ^ UG P32-P36
  18. ^ UG P37
  19. ^ UG P38
  20. ^ UG P25-P26
  21. ^ 「=」または「rcl」を押すと履歴に登録される。
  22. ^ UG P57
  23. ^ UG P14
  24. ^ UG P23-P24
  25. ^ UG P58
  26. ^ a b UG P9
  27. ^ a b c UG P39
  28. ^ UG P6-P8
  29. ^ 12インチ進んだときに何インチ昇るかという測り方
  30. ^ 要するにtanθの値のことである。
  31. ^ tanθの値の100倍。パーミル勾配の10分の1。
  32. ^ 円周率πを置数する機能はあるので、ラジアンで計算できないこともない。