液晶ディスプレイ

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液晶ディスプレイ(えきしょうディスプレイ、Liquid Crystal Display、LCD)は液晶の素子を組み込んだコンピュータ・ディスプレイなどの画像表示装置である。

単に「LCD」と呼ぶ場合は、液晶ディスプレイ装置ではなく部品としての「液晶パネル」を指す場合があり、ディスプレイを省いて単に「液晶」と呼ぶこともある。

テレビ携帯電話デジタルカメラPC用表示装置として広く用いられている。本項目では、液晶プロジェクタは扱わない。

目次

[編集] 液晶パネルの原理

1.偏光フィルタ(垂直)
2.ガラス板
3.透明電極に挟まれた液晶
4.ガラス板
5.偏光フィルタ(水平)
6.光源

単体装置としての液晶ディスプレイは、駆動回路や電源回路、接続コネクタ、ケース等を除けば主要部分が液晶パネルと呼ばれる薄い板状部品で構成されている。

液晶パネルは、外光や、フロントライトバックライト等の光源により発せられた光を部分的に遮ったり透過させたりすることによって表示を行なう。半ば液体状の液晶に電圧を加えると液晶分子[1]同士が互いに整列して向き、つまり「配向」が電圧の方向にそろう。この時の配向によって液晶中を通過する光の偏向が変化する。液晶を挟む表裏に特定の偏光方向の光のみを透過させる偏光フィルタ板を置くことで、偏向した光を選択的に通過、又は遮断できるようになる。こうして光学的なシャッターを実現し、このような微細なシャッター1つを1画素とする無数の画素によって望む画像を表示する。このシャッターは光の透過と遮断だけを行なうので多様な色は、概ね3原色を備えた色フィルターで実現される。

液晶テレビにおいて、液晶パネルは製造原価の6割から7割を占める重要な部分である。

電卓時計の液晶は、あらかじめ「絵」の形に電極を配置して液晶に電圧を加える。さまざまな画像や映像を表示するものでは、格子状に配列した画素(ドットまたはピクセル)を用いる。

[編集] 液晶パネルの構造

液晶パネルの構造概略
説明のために光源も加えた。

液晶パネルは、大きくは表裏2枚の基板とその間の液晶材料から構成される[2]

  • 液晶パネル
    • 基板(アレイ基板とカラーフィルタ基板)
    • 液晶材料
    • スペーサー
    • カラーフィルタ(カラーフィルタ基板上に作りこまれる)
    • 配向膜
    • 偏光フィルタ
    • 封止剤

液晶パネルは、油状の透明な液晶組成物(液晶材料)が2枚の透明な基板の間にサンドイッチされ、周囲が封止剤によってシ-ルされていて、液晶材料が漏れ出すことなくまた液晶材料が清浄に保たれるようになっている。基板同士の間隔(セルギャップという)を一定に保つためのスペーサーとして、粒の大きさが揃ったプラスチック球[3]も少しだけ散布されている[4]

アレイ基板とカラーフィルタ基板それぞれには、TFTなどのアクティブ素子を画素のアレイ(配列)にしたものと、カラーフィルタを配列したものとが作られるが、その基板としては、光を通過させる性質が必要であり、ガラス基板が用いられることが多い[5]。耐衝撃性、フレキシブル性などの点からプラスチック基板を用いることもある。各基板の内面(液晶材料側の面)には、光を通すことができ液晶に電圧を印加できる透明電極が、各画素に配置されている[6]。透明電極の材料としては、電気抵抗が低くパターン加工の容易なインジウムスズの酸化物であるITO(Indium-tin-oxide)が広く用いられている。また、透明電極に印加される電圧は、アレイ基板ではTFTなどのアクティブ素子を通じて外部から印加されるが、外部から画素までの配線として金属配線もアレイ基板の内面に配置されている[7]。アレイ基板の端部には、配線電極の接続部が露出しており、ここに駆動回路が接続されて電気的に実装される。表裏2面の透明電極のそれぞれの内側には、ポリイミド材料の配向膜が配置されて、液晶材料を所望の配向状態になるようにしている[出典 1]

液晶パネルでは、液晶を封入した表裏の透明基板のさらに外側に、1組の偏光フィルタ(偏光板)を設ける形式が主流である。透過型の液晶パネルでは、裏側の光源(バックライトシステム)から出た光は、光源⇒偏光フィルタ⇒ガラス基板⇒透明電極⇒配向膜⇒液晶⇒配向膜⇒透明電極⇒ガラス基板⇒偏光フィルタ、という順に各要素を通過して観察者の目に届く。ごく安価な表示用途で使われる簡易な反射型の液晶パネルでは、散乱性の反射板を液晶パネルの背面(裏面)に配置してそれ自体には光源を設けず、周囲の光(外光)によって表示する[8]

実際の製品ではこういった基本構造の他にも、視野角特性を改良するための光学フィルム(視野角補償フィルム)などが偏光フィルタとガラス基板との間に追加して挿入される場合がある。また、バックライトシステムの一部にも、視野角や輝度を向上させるための光学フィルム(輝度上昇フィルム)を用いる場合もある。

[編集] 液晶モジュールの構造

液晶モジュールは大まかに云って液晶パネルに駆動回路と駆動用プリント基板、必要ならばバックライトを取りつけたものである。

  • 液晶モジュール
    • 液晶パネル
    • TABモジュール、又はCOGモジュール
    • 駆動用プリント基板
    • バックライト
TABモジュール・COGモジュール
安価なモノクロの電卓用液晶ディスプレイなどを除けば、多数の画素を駆動するための縦横合わせて数百から数千もの配線を液晶パネルの外部に引き回すことは避けて、パネルの端部にTAB(Tape Automated Bonding)、又はCOG(Chip On Glass)という2種類の実装方法によって、TABモジュール、又はCOGモジュールという駆動回路が接続されている。TABモジュールは、TABやTCP(Tape Carrier Package)と呼ばれる実装方法が用いられた液晶駆動用半導体のパッケージであり、必要なだけ複数個のTABモジュールがACF(Anisotropic Conductive Film、異方性導電膜)によって液晶パネルの端部に接続される。[9]COGモジュールでは、名前の通り、半導体のベアーチップを液晶パネルのアレイガラス基板上に直接実装する。ベアーチップとパネル電極との接続方法には、次の4方式がある。いずれの方式でもベアーチップを保護するために電極の接続後は保護樹脂でコートされる。
  • 金バンプ直接接続方式
  • ワイヤーボンディング接続方式
  • 銀ペースト接続方式
  • ACF接続方式
駆動用プリント基板
駆動用プリント基板はTABモジュールやCOGモジュールに画像信号や駆動電力を供給するための電子回路基板であり、液晶モジュールが外部と接続される部分でもある。プリント基板用のACFで接続される。[10][出典 1]

[編集] 液晶パネルの種類(表示原理)

セグメント表示の例

[編集] TN型

もっとも代表的な表示方式であるTN型の表示動作について説明する。

TN型とは、Twisted Nematicの略称であり、ネマティック液晶と呼ばれる液晶組成物の配向をねじるものである。電圧が無印加の状態では、液晶配向をねじって表裏2枚の基板間で90度方向が異なる配向となるように各基板表面の配向膜に配向処理が施される[11]。無印加なままではこのねじれによって液晶を通過する光では、偏光成分がほぼ90度回転する[12]。また、正しく電圧が印加されると、分極している液晶分子は電界方向に揃って並び、つまり2枚の基板面に対して垂直に近い姿勢となるため、液晶層を通過する光の偏光はあまり変化しなくなり、光源側の偏光フィルムを透過した光の偏光状態がそのまま保たれて逆側の偏光フィルムにそのまま届くようになる。

2枚の電極に挟まれた各画素での表示には偏光フィルムの配置方向に応じて、2種の表示モードが存在する。

  • NWモード:ノーマリー・ホワイト・モード。電圧の無印加状態で明表示(白表示)となる
  • NBモード:ノーマリー・ブラック・モード。電圧の無印加状態で暗表示(黒表示)となる

偏光フィルムの配置方向は、NWモードでは入射側と射出側の偏光板の透過軸方向同士が互いに直交するように置かれ[13]、NBモードでは互いに平行になるように設定される[14]

TN型においては、大抵(TFT方式などでは、ほぼ全数)NWモードが用いられる。これは、セルギャップ(液晶層の厚み)に対する製造マージンが広く安定した品質の生産が可能であること、クロスニコルの偏光フィルム配置を用いるため特殊な構造を採用しなくても黒表示に着色が生じないこと、などによる。TN型のNBモードは、NWモードに比べた場合の視野角の広さからTFT方式への応用が検討された時期もあるが、上述のNWモードの利点の裏返しの欠点があり一般化するにいたっていない[15]

[編集] IPS型・VA型

TN型とは異なり、IPS型(インプレインスイッチング型)、VA型(垂直配向型)では、上述のTN型のNWモードの場合の偏光フィルムのクロスニコル配置がNBモードに用いられており、TN型のNWモードの利点がIPS型、VA型ではNBモードの利点にほぼ対応する。このため、IPS型、VA型ではNBモードが用いられる。NW,NBという名称が電圧と表示との関係のみを表す名称であるため、注意が必要である。

[編集] 表示内容の制御動作

電圧による表示内容の制御動作を説明するために、最も身近な例を出せば、電卓に多用されている8の字によって数字を表示する、7セグメントディスプレイが挙げられる。このように電圧を印加する単位、つまり「セグメント」を小さい領域に分割し、その領域毎に外部から所望の電圧を印加するものを、セグメント表示と呼んでいる。どのセグメントに電圧をかけるかを適宜制御すれば、数字の0-9を表示し分けることができる。また、通常のセグメント表示では、明表示と暗表示の2つの表示状態によって表示が実現されているが、電池が消耗した電卓などでしばしば観察されるように、電圧が不十分な場合には、薄くなった表示、すなわち、中間調の表示が実現する。液晶ディスプレイで中間調を実現する場合は、表示データに応じて液晶層に印加する電圧を調整している。

[編集] 液晶パネルの駆動

上記セグメント表示では、固定した表示パターンしか行えないが、変化に富んだ画像表示を行うために、各画素を格子状に均等配列したドットマトリクスタイプの液晶パネルを使うことが一般的となっている。ドットマトリクス表示の多数の画素にそれぞれ電極の配線をしようとしても、基板周縁部にすべての端子が取り出せなくなることから、TFT(薄膜トランジスタ)などのアクティブ素子を各画素に配置して駆動を行うか(アクティブマトリクス駆動)、直交させたストライプ電極を両方の基板に設けて、その交点の液晶を駆動する(単純マトリクス駆動)ことが行われる。

TFT等のアクティブ素子を用いる液晶パネルは、1990年代末頃から生産技術の発展とともに低価格化し、2000年代に入ると高品質の表示が必要なテレビ受像機やコンピュータモニタ、携帯電話の表示部として広く普及している。

なお、TFTとして現在最も多く普及しているのは、アモルファスシリコンを用いたTFTである。大型のガラス基板に対して容易に成膜ができることから、高い生産性を誇っている。また、アモルファスシリコン膜を結晶化させたポリシリコン(正しくはpoly-crystalline Si)TFTも用いられている。このポリシリコンTFTにはさらに製造温度プロセスによって高温ポリシリコンと東芝が開発した低温ポリシリコンがある。高温ポリシリコンは、溶融石英基板に成膜したアモルファスシリコンを熱アニールして結晶化するものであり、プロジェクター等の液晶ライトバルブに用いられている。低温ポリシリコンは、ガラス基板に成膜したアモルファスシリコンをレーザーアニール等して多結晶化するものである。ポリシリコンはアモルファスシリコンとは異なり高い移動度を有するので、ガラス基板上に液晶を駆動するためのドライバー回路を作りこめる利点がある。

[編集] 経済規模

2009年1月の10型以上のTFT液晶パネルの世界売上高が25億米ドルだったと発表した。 これは前月2008年12月から10.7%減であり、前年同期比では63.3%も減ったことになる。 枚数で云えば、2,380万枚であり、これは前月2008年12月から12.4%減、前年同期比では33.5%減ったことになる。

メーカー別の売上高シェアでは、1位が韓国Samsung Electronics社の27.9%、2位が韓国LG Display社が27.8%だった。出荷枚数別では、1位が韓国LG Display社が26.4%で逆転し、2位は韓国Samsung Electronics社の26.0%、3位が台湾Chi Mei Optoelectronics社で13.8%だった[出典 2]

[編集] 液晶パネルの種類

駆動方式、液晶の配列方式によって分類できる。

[編集] 単純マトリクス駆動

TN
Twisted Nematicの略称でもっとも一般的に用いられている液晶の表示方式である。早くから実用化され、液晶といえばTN型が用いられているという時代が長く続いた。現在でもセグメント表示などの簡易な液晶表示部は、TN型が主流である。特徴として、構造が簡易で表示品位も比較的高いことが上げられる。また、良好な電圧に対する透過率変化が緩やかであり、表示ドット数の大きいドットマトリクス表示を行うためには、TFT素子などを用いたアクティブマトリクス駆動を行う必要がある。なお、単純マトリクス駆動(デューティー駆動)でもデューティー比が少ない場合には利用されることもある。
STN
Super Twisted Nematic。液晶分子のねじれを180~270度程度まで深めたもので、TN型では難しいハイデューティ駆動を可能にし、TFT等のアクティブ素子を用いないでドット数の多い表示が可能となる。
TN型と同様NBとNWがあり、NBは黒と黄色、NWは白と青の表示になる。
DSTN型
Dual scan STN。STN液晶を二分割して別々に駆動することで、応答速度の低下などを防ぎつつ表示ドット数の増加を可能にしたもの。
FSTN型
Film-compensated STN。位相差(液晶の屈折率の波長分散)を補償する高分子フィルムを貼ることで画面の色づきを減らしたもの。
上述のDSTNやFSTNを含むSTN型が開発された背景として、1990年代初頭までは、TN型液晶でアクティブマトリクス駆動をおこなってドット数を増やすために必要なアクティブ素子(TFT素子)の量産性が低く、産業としての成立性が危ぶまれていたことが挙げられる。一方、各種機器のポータブル化などにより、TN型のアクティブマトリクス駆動に代わる量産性の高い低コストの駆動方式(表示方式)に対するニーズも高まっていた。そういった中で、STN型が開発され、ハイデューティ駆動が可能であり、アクティブ素子が不要なことから一時期広く利用された。特に、FSTN型では、色づきが低減できてカラーフィルターを組み合わせるとカラー表示が可能なことから、アクティブマトリクス駆動のTN型ディスプレイが高価な一時期利用された。このように、アクティブ素子のない廉価さが最大の利点であったが、それゆえ、TFT液晶の低価格化、また、視野角特性や応答特性がTN型に比べて劣るなどの理由により、最近は徐々に利用されなくなってきている。TN方式と比較するとアクティブ素子を作るための難しさはないが、その一方で、液晶層の厚みの均一化、プレチルト角の精密な制御など、液晶パネルの製造技術としては高度な生産管理が必要である。

[編集] アクティブマトリクス駆動

TN型
単純マトリクス駆動と同様に、アクティブマトリクス駆動と組み合わせても、もっとも多く利用されている[16]。生産技術が確立されており比較的安価である。また、特別な工夫をしなくても高い開口率[17]が得られるため、明るい表示が容易に得られる、あるいは同じ表示輝度であればバックライトの消費電力を削減できる)。また、応答速度が比較的早いという特徴もある。その反面、視野角が狭く、色度変位が大きい。主に表示品位より消費電力を優先する用途(ノート型パーソナルコンピュータなどの小型の機器)に用いられる。
IPS
In-Plane Switchingの略称である。液晶配向は基板に平行な面に含まれる向きで動作し、電圧を印加しない場合の一様な平行配向から、電圧を印加することによって基板に平行な面内で回転するようにしたものである。この回転は、電極構造を工夫して実現されるため、半導体技術を用いるアクティブマトリクス駆動でのみ用いられる。液晶配向が基板に対して垂直方向に立ち上がることがないため、視野角が広い[18]。このように、視野角特性が良好なIPSは、液晶ディスプレイの一般的な視野角特性に対する懸念を大きく払拭できることから、特にテレビジョン用途に多く用いられている。その反面、開口率を上げにくく表示が暗くなり易い、正面表示でのコントラストを高めにくいといった課題もある。
VA
Vertical Alignmentの略称である。これは、TN型とは異なり、電圧を印加しないときの液晶配向を基板に垂直になるように配置し、電圧印加時に液晶が基板法線方向に対して傾くようにするものである。高速で高いコントラストを実現できる。電圧は両側の基板それぞれに設けられた一対の電極によって印加するため、配向方向が電界に対して傾くような誘電的性質を有する液晶(ネガ型の液晶)が必要となる。配向分割法と組み合わせれば比較的広い視野角が得られる。このため、特にテレビジョン用途に多く用いられている。
OCB型
Optically Compensated Bendの略称である。液晶配向を弓状に配置し、電圧印加時に発生する液晶の流れが配列変化を加速するようにするものである。その為、高速な応答が出来る。

[編集] 液晶パネルに用いられる液晶材料

ネマティック液晶

液晶パネルに使用されている液晶は、ほとんどがネマティック液晶である。この液晶は、一般に、ダイレクター (director) と呼ばれる分子の統計平均的な配向方向と誘電的性質および光学的性質とが密接に関連している。液晶パネルにおいては、誘電的性質が配向方向と電圧との組み合わせから決まる駆動動作に積極的に利用され、光学的性質が配向方向と偏光フィルムとの組み合わせから決まる表示動作に利用される。

上述の誘電的性質に関連して、通常液晶パネルに用いられる棒状分子からなるネマティック液晶を誘電率によって分類すれば、ダイレクター方向に大きくダイレクターに垂直な方向に小さい場合(ポジ型液晶)と、ダイレクター方向に小さく、ダイレクターに垂直な方向に大きい場合(ネガ型液晶)がある。ポジ型液晶は、TN型やIPS型に用いられ、ネガ型液晶はVA型に用いられる。光学的性質については、ポジ型およびネガ型のいずれにおいても、屈折率がダイレクター方向の光電場に対して大きく、ダイレクターに垂直な方向の光電場に対しては小さい複屈折性を有している。

このような誘電的性質と光学的性質とを組み合わせて適切な表示を実現するために、液晶パネルでは、ガラス等の基板に適当な電極を設け、液晶材料の配向方向をその電極間に与えた電圧によって制御し、各電圧での配向方向と屈折率の関係から所望の表示を得る。

強誘電性液晶・ブルー相液晶

液晶パネルに用いられる液晶材料としては他には強誘電性液晶ブルー相液晶などがある。どちらもネマティック液晶と比較して高速な応答を実現することができ、特に、ブルー相液晶は応答速度が10-100μsと速く、暗状態に視野角依存性が原理的に無い。そのため配向膜やラビング[19]などの配向処理や視野角補償のための光学フィルムが不要なためパネルを薄く安く作れる。近年になって非常に狭かった温度域を広げる技術が登場し、実用化が期待される。

ポリマーネットワーク型液晶
(電界が無い状態)
光は透過できず散乱される。
ポリマーネットワーク型液晶
(電界がある状態)
光が透過できる。
ポリマーネットワーク型液晶

ポリマーネットワーク型液晶(PNLC, polymer network liquid crystal)は散乱液晶の1種であり、電圧が無印加の状態では液晶層内部の網目状の高分子繊維に沿って液晶分子が不規則に並び、表示が不透明となるが、電圧が印加された状態では液晶分子が表示面に対して垂直に整列するので、表示が透明になる。偏光を利用しないので偏光フィルター[20]が不要である。他の一般的な反射型液晶パネルが11%程度の反射率なのに対して50%と高く、これは実用化されている電気泳動式の電子ペーパーの40%よりも高い。窓ガラスに張り合わせた調光シャッターやプロジェクター投影用スクリーンとして採用されている[出典 3]

[編集] 表示素子としての特徴

液晶パネルには、形状的な特徴、電気的な特徴、並びに、光学的な特徴および構成部品数などの面で他の表示装置とは異なる特徴がある。

[編集] 形状的な特徴

液晶パネルの形状的な最大の特徴は、薄型である点である。ガラス2枚と偏光フィルター2枚、必要に応じてバックライトによって表示が行えるため、非常に広汎な製品に応用されている。

[編集] 電気的な特徴

LCDモニターの一部を拡大した画像

また、液晶パネルの電気的な面での最大の特徴は、液晶パネルそれ自体の電力消費が非常に小さいことである。数ボルト程度の電圧によって表示が書き換わり、電流はほとんど流れないためである。このため、ロジック系ICによって容易に駆動が可能であるなどの特徴から、用途の制限が少ない。ただし、液晶パネルの液晶部分は通常は交流駆動する必要があり、表示内容を書き換えなくても極性反転のために充放電電流が消費される。また、液晶パネルは自発光しないため、照明を設ける場合には、照明のために消費電力が大きくなるという課題がある。

[編集] 光学的な特徴

液晶ディスプレイの光学面での最大の特徴は、液晶それ自体が発光しないことである。表示には、バックライトフロントライト、外光などの光源を必要とする。液晶ディスプレイでは、白色光のバックライトにカラーフィルタを用いた液晶パネルを組み合わせるカラー表示が主流である。[21]

[編集] 液晶パネル、液晶ディスプレイの技術課題

液晶ディスプレイを下からのぞき込むと、上方が暗く見える。

液晶パネルは、様々な利点を有する一方、表示原理に起因する技術課題(欠点)もある。

応答速度と残像
液晶パネルで動きの早い動画を表示させると、残像が残って不明瞭な印象を受ける事がある。これは表示が変更されるまでの応答時間が長いためで、ブラウン管やプラズマ・ディスプレイ・パネル (PDP) に比べてかなり長い。
これは液晶パネルが動画表示を行なうテレビに採用されて問題となった。応答時間が長い理由は、主に液晶の粘度および層の厚みのために液晶分子の配向変化が物理的に遅れるためである。バックライトも含めた表示装置としてみると、表示フレーム内でバックライトが常時点灯していて画像が表示され続ける点(ホールド駆動)も大きな要因である。これらに対して、液晶材料の低粘度化、液晶層厚の低減、表示駆動波形をオーバーシュートさせる工夫(オーバードライブ)、表示駆動波形による表示フレーム間への黒表示の挿入、バックライトの明滅、駆動周波数の増大(倍速駆動)などの対策が採られている。
なお、測定規格および計測技術上の問題点として、カタログ等に表記される応答速度の数値が参考にならない場合が多いという問題点も指摘されている。
視野角
ブラウン管などの他のディスプレイと比較して液晶パネルは視野角が狭い。液晶配向の向きと観察者の位置関係が透過率や反射率に影響するためである。[22]このため、液晶ディスプレイでは視野角特性が表示性能の1つとなっている。特にリビングに置くような大画面テレビ用途の液晶パネルでは、視野角特性を改善して、斜め向から見た場合でも正面方向と変わらない表示品質に近づけることが大きな技術的課題となっている。
視野角特性の改善は、IPS方式や、VA方式[23]で利用されるマルチドメイン方式によって図られている。マルチドメイン方式は、表示に用いる液晶配向の向きが、明表示の場合と暗表示の場合で同じになるドメイン(領域)を画素内にいくつか設けて、複数のドメインの明度や色調をいくつか平均化したものが画素の透過率や反射率となるように構成する手法である。こうすることで、液晶パネルの観察方向を傾斜させたときの透過率が上下左右あるいは斜めの観察方向に依存しにくくなる。
ただし、IPS方式とVA方式では、ひとつ1つのドメインの視野角特性は異なっており、IPS方式の方が優れている。IPS方式におけるマルチドメインでの特性の平均化は、個々のドメインのわずかな色調の平均化が主眼であるのに対し、VA方式の特性では明度の平均化が主眼である。VA方式ではIPS方式に比べて不利な視野角特性を改善するため、1つの画素を複数の電圧で駆動するサブピクセルの組合せとすることも行われている。この手法により、基板に対する液晶の傾きが、中間調において一定の傾きではなく、強く傾いたサブピクセルと傾きの少ないサブピクセルの組み合わせとなり、上下左右斜めの観察方向に対する明度依存性が強い、中間的な液晶の傾きを表示に用いずに実質的に同様の明度が得られるため、視野各特性が改善される。また、このような中間的な液晶の傾きを避ける駆動方法は、応答にも良い影響を与える。また、前述程の効果は得られないが、液晶性分子を用いた位相差フィルムを、偏光フィルターと液晶層との間に配置して視野角を拡大する工夫もなされている(主にTN方式やOCB方式で利用)。
なお、上記の応答と同様に、測定規格および計測技術上の問題点として、カタログ等に表記される視野角の数値が参考にならない場合が多いという問題点も指摘されている。例えば、多くの場合にはコントラスト比が10程度の表示が実現する最大の視野角(正面からの傾斜角、またはそれを両側で表記した2倍の数)によって表示される。その結果、例えば176度の視野角などという観察方向として意味の無い範囲の数字の大きさばかりが強調されているのが実情である。注意深く観察するユーザーにとっては、観察方向による色調の変化やコントラストの変化がいまだ認識できる程度に残存しており、液晶ディスプレイの方式やメーカーによってそれが異なることも事実であるが、このような意味のある特性がユーザーに比較可能な状態で示されることは殆どない。
コントラスト比
画像表示製品の持つ明表示の最大の輝度を暗表示の最小の輝度で割った値を「コントラスト比」と呼び、表示品位の指標となる[24]。特にバックライトを制御することで得られる最大と最小輝度の比は、「ダイナミック・コントラスト比」と呼ばれる。コントラスト比が小さな表示装置は、白黒の表示が不明瞭になるだけではなく、カラー表示の色純度が低下するため重要な指標である。液晶パネルでは動作原理上、画面を完全な黒表示にすることが難しくコントラスト比をあまり大きくできない。これは、バックライトの光を液晶パネルが遮蔽し切れず、たとえ光源の光量を制御しても液晶パネル面から光が漏れるためである[25]
なお、日中の屋外や、明るい照明が点灯した室内におけるコントラスト比、つまり明所コントラスト比は、透過型液晶パネルはPDPなどに比べてむしろ高い。明所コントラスト比は、観察者が見る光と同様に、表示による輝度に加えて周囲の照明が表示面で反射された光も同時に測定するためである。液晶パネルの表示面の反射率は、PDPのものより低く、明所コントラスト比の低下が少ない。これは、液晶は光を吸収するカラーフィルター、偏光フィルムが表示面にあるのに対し、例えばプラズマディスプレイ(PDP)では表示のための蛍光体それ自体が白く反射率が高いためである。実際、現在の液晶パネルの暗所コントラスト比(500-3,000程度)では、液晶パネルのコントラスト比が問題になるのは通常以下の明るさの室内で観察する場合に限られ、通常の部屋で使用するような用途では液晶パネルのコントラスト比は、PDPを用いるテレビ(プラズマテレビ)との比較としては問題にならないことが多い。これは、PDPの明所コントラスト比の低下が、液晶ディスプレイの低下を大幅に上回るためである。特に、家電販売店などでの照明の明るさ(照度)は家庭の場合の数倍から10数倍ある場合があり、そのような明るい展示状態においてプラズマディスプレイが液晶ディスプレイに比べて見劣りすることが多い。
コントラスト比は、同一画面表示上の明(白)表示部と暗(黒)表示部との比ではなく、その製品における明表示部と暗(通常全画面黒)表示部との比である。一部の液晶テレビ、液晶プロジェクタにおいては、コントラスト比の数値を稼ぐ目的ではなく、暗い画面での階調表現能力を向上させるために、液晶パネルに入る光の量を調整すものがある。(その結果、意図的ではないがコントラスト比の数値を上げることとなっている。)なお、画像エンジンとバックライトの全体の明るさや部分的な明るさの制御とを協働させることにより、黒表示の多い画面では、バックライトの輝度を、時間的に必要なタイミングや位置的に必要な部分のみで高くし、それ以外では削減するような技術が確立されはじめており、コントラスト比の向上と消費電力低減の両者に役立っている。LED光源の欄を参照。
低消費電力化
液晶パネルは消費電力の低さが優れているために電卓に使われはじめ、CRT(ブラウン管)ディスプレイとの比較でも画面サイズ当りの消費電力でも低く、21世紀初頭現在実用となっている中では低消費電力の表示装置である。また、電池駆動を行う携帯電子機器で使用される用途や大画面テレビなどの用途では、消費電力をさらに削減する要求も存在する。[26]
バックライトを持つ液晶パネルの消費電力は、液晶を駆動するための電力よりも光源での消費電力が主な要素となる。一般的な透過型カラー液晶パネルでは、バックライトからの光量の大半が、偏光フィルターやカラーフィルタ、液晶を駆動するための金属配線などによって失われる。カラーフィルタを用いる液晶パネルの全面白表示での透過率は約5-10%に過ぎず、光量の90-95%は内部で失なわれる。液晶パネルの透過率を上げると共に、バックライトの発光効率の改善が求められる。
また、携帯機器に使用される液晶パネルでは、正面方向だけに明瞭な表示をすれば良いものが多く、バックライトも正面方向にだけ光を放ってそれ以外には無駄に光を出さないことで低電力化が図られている。反対に据え置き式の映像機器に用いられる液晶パネルでは、バックライトができるだけ全方向に万遍なく光を放射しないと使用者の位置が制限されることになる。
また、バックライトを使わない反射型液晶パネルでも、電池を電源とする携帯機器の用途では、液晶を駆動するわずかな消費電力ですら削減が求められる。このとき液晶は交流駆動されなければならず、表示内容が変わらない静止画であっても消費電力はゼロにはできない。この課題に対して、液晶配向に双安定性を持たせて電圧を印加しなくても液晶の表示を固定することができるメモリー性表示が開発されている。これは表示内容の書き換え時以外では電力を消費しないため、電子書籍端末などの表示装置として用いられている。[27]
こういった消費電力の削減要求に対しては、発光効率のよいバックライトを選択するなどの工夫により、年ごとに液晶パネルの消費電力量は削減されている。
LED光源
光源にLEDを使用することで、周囲の明るさにあわせて全体の表示輝度を調整したり、動画像に合わせて画面上の場所ごとの明るさを変更することにより、電力消費を抑えてコントラストや明暗のダイナミックレンジ[28]、動画追従性を向上させる「ローカルディミング」や「エリア制御」と呼ばれる工夫も試みられている[29]
ドット落ち
液晶パネルの構造は極めて繊細である。現在主流の薄膜トランジスタを利用するTFT液晶パネルでは、膨大な数のトランジスタがガラス基板上に形成されている。トランジスタは異物混入に極めて弱く、数オングストローム程度の塵であっても動作不良を起こす。(1オングストローム=0.1ナノメートル)このため、ドット(画素子)を構成するトランジスタや関連回路に異常があると、一般に言う所のドット落ちが発生する。現状ではパネル1枚当り2-3個程度のドット落ちを容認しないとパネル単価は10倍にも上昇するといわれており、メーカーは技術上の限界として顧客対応に苦慮している。その為、液晶パネルを使用した製品にはその旨の注意書きが書かれている。(→ドット落ち不良品
耐衝撃性
液晶パネルは薄いガラスでできている。このため、CRT(安全のために破損が許されず、厚いガラスを用いる必要があった)等と比べると、大画面を実現できるものの、逆に容易に割れて破損しやすい。なお、種々のフィルムが表面に張ってあるため、割れた場合の危険性は低い。このためノートパソコンなどの可搬性機器の破損例や、液晶テレビが一般家庭に浸透するに伴い幼児がいる家庭での破損例が多くなっている。そのため、画面それ自体に衝撃を与えないようにする工夫や、それ自体の頑丈さが求められるようになってきている[30]。なおデスクトップのパーソナルコンピューター用の液晶モニターのタッチパネル付き製品では、前面にタッチパネル用ガラスが装着されているためにセット全体としては衝撃に強い。また、ガラス基板でなくプラスティック基板を用いて耐衝撃性を高めることも検討されている。
液晶配向のくせの固定化(擬似的な焼付け)
液晶ディスプレイで同一画像を長期にわたって表示し続けた場合には、見かけ上発光型表示装置の焼付けと同じような現象が起きることがある。このような現象は、発光素子の焼付けのような外観を呈するので専門家でも焼付けと呼ぶことがあり、メーカーサポートなどでも焼付けとして扱う社もある。しかし、自発光デバイスではいため、液晶ディスプレイのこの現象は、CRTやPDPや有機ELや無機ELのような焼付け(発光素子の部分劣化)とは原理的に異なり、その意味で厳密には焼付けではない[31]
バックライト寿命
PCのディスプレイや液晶テレビに使用されている液晶パネルは、ほとんどがバックライトが必要な透過型である。このバックライトの光源としては冷陰極管(CCFL)というごく細い蛍光管、又は、LEDが使用されている。冷陰極管やLEDは照明器具の蛍光灯等と同様に長期間使用するにつれて光度が低下する等劣化が避けられない。また、バックライトに用いる光源以外の光学部材の色調も長期間には変化することがある。その結果、画面全体や端の輝度が低下したり、色調が変わってくることがある。一般に、バックライトの寿命は(輝度が半分になる点灯時間として規定することが多いがその場合でも)液晶パネルの他の部分に比べて短いことが多い[32]
ハイディンガーのブラシ
人間の眼は偏光方向を感知できないと思われがちだが、実は感知することができる。

 偏光した光の下では、視野の中央にごく薄い黄色いブラシ状の模様が見え、ハイディンガーのブラシとして知られている。そのブラシに直行するかたちで、さらに薄い青い模様も見える。  見え方には個人差があり、偏光を利用した液晶ディスプレイでも大多数の人はまったく気づかない。しかしながら一方では、気になって仕方ないという人もごく稀に存在する。


[編集] 多様な技術

[編集] 構成部品数

構成部品の多さは、例えば、画面の表面をマット(つや消し、あるいは、ノングレア)処理したものと光沢画面(グレア処理)したものを偏光フィルムの表面処理によって作り分けることが可能、といった製品バリエーションの多さにもつながっている。このため、映り込みが気になるテレビ用途や事務処理用のコンピュータ画面にはマット処理したものが用いられ[33]、動画再生時などにおける色純度やコントラストの感覚的な品位を高めたい場合には光沢画面とするといった用途別のつくりわけが容易に行える[34]

一方で、構成部品の多さは、例えば、液晶透過型液晶ディスプレイにおいて、液晶パネルの液晶部分は全く変更がなくても、バックライトが改良されれば、例えば色再現範囲(色域、color gamut)が大幅に改善されたり、消費電力が低下するといった全体の性能の改良が実現すること、つまり、液晶そのものの改良ではなく、周辺技術である光源技術の進化によって表示特性が改良されることにもつながっている。

[編集] 多様性

液晶パネルは、透過型液晶パネル、反射型液晶パネル、プロジェクター、フィールドシーケンシャルカラー表示、半透過型液晶ディスプレイといったさまざまな表示方式が実用化または創出されており、それ自体が発光しないという特性とあわせて、非常に柔軟な光学的構成で用いられ、構成部品の改良が技術的進歩に寄与している。

液晶パネルの多様性の一例を挙げるなら、液晶パネルでは、外光を利用することにより照明を設けずに低消費電力の表示を行うことも可能であるし、必要に応じて照明を設けて、自発光型の表示装置と類似の用途に用いることもできる点が好例である。

液晶パネルに照明を設けない場合には、外光を反射板で反射させて往復で表示を行うことが多い(反射型液晶パネル)。反射型液晶パネルでは、多くの場合に裏側の偏光版の背面に適当な凹凸をもった金属などの反射板を配置する方式(セル外反射板方式)が主流で、主に安価な液晶表示部で背景が薄緑、表示が変化する部分がこの背景色と黒色との間で変化するものはこの方式である。一部には、裏面側には偏光板を設けず、液晶層の裏側の基板の液晶層側反射板を配置して、液晶層と反射板を近接させ手配置する方式(セル内反射板方式)も実用化されている。この場合、一枚の表側の偏光板で、液晶層を往復する光の偏光を制御するが、その際には、フィルム位相差板が併用されることが多い。

また、液晶パネルに照明を設ける場合には、EL(エレクトロ・ルミネッセンス)、冷陰極管発光ダイオードなどの光源によって背面から照明するバックライトによる透過光を観察する透過型液晶パネルや、表示面側からフロントライトと呼ばれる照明装置により照明して反射光を観察するフロントライト付き反射型液晶パネルがある。

照明を設けるのは、多くの場合、カラー表示を行うカラーフィルタの吸収によって表示が暗くなる場合である。

そして、照明を設ける液晶パネルには、照明を用いない液晶パネルの特徴と組み合わせるようなもの、つまり、透過型と反射型を組み合わせることにより、外光を反射しつつ、バックライトの照明も利用するものもある。これにより、夜間の周囲が暗いときから日中の直射日光下まで表示内容が確認できるパネルが開発できるため、家庭用ビデオカメラ、ディジタルスチルカメラなどに利用されている。これは、半透過型液晶パネルもしくは半(微)反射型液晶パネルと呼ばれる。このように、発光ディスプレイに近い照明を用いた表示と外光を利用した反射ディスプレイとしての表示を1つの表示パネルで両立するものは液晶以外の表示方式では知られておらず、液晶パネルに用いることができる技術の多様性を示す好例といえる。

[編集] カラーフィルタ

カラーフィルタは、画素に対応させて、赤色 (R)・緑色 (G)・青色(B) の光を透過させる着色層を配置した薄いガラス製の着色層である[出典 1]。この着色層は、液晶をはさむ2枚のガラス基板のうちの一方の液晶層側に配置されており、吸収を利用している。このため、各画素の通過光をR、G、Bに着色することができ、カラー表示が実現する。各画素の電圧を制御することで、表示画素の領域上の任意の一点で任意の発色が可能になる(非発色=黒も可能)。これがカラー液晶パネルの仕組みである。[35]

[編集] 脚注

  1. ^ 液晶分子は直径が0.4nm、長さが2nm程度の細長い有機分子である。
  2. ^ この節では構造の説明のために製造工程で使用される用語を使い、「液晶パネル」は、駆動用回路等が実装されて「液晶モジュール」となる前のものとする。
  3. ^ プラスチック球はアレイ基板の完成後にガスでスプレイされてランダムに撒かれる。画素の上にその球が乗れば暗表示(黒表示)の光漏れの原因となってコントラスト比を悪化させる。特に大画面液晶パネルでは、わずかな振動でプラスチック球が移動して配向膜を傷付ける事がある。そこで、最近では、スペーサーとしてパネルの製造工程において事前にフォトスペーサと呼ばれる樹脂製の柱を作成しておくことも行なわれるようになっている。アレイ基板の作成時に表示のための光が透過しないブラックマトリックス部分にフォトスペーサによって柱を形成して、コントラストの低下や配向膜への傷を避ける。
  4. ^ なお、多くの場合、基板が互いに接着されているのは基板周囲のシール部分のみである。画面の中央部は、液晶材料の圧力およびスペーサの弾性的な支持力(単位面積当たり)とが、基板外部からの大気圧とバランスしてセルギャップが維持される。
  5. ^ 実際のTFT液晶パネルでは、高い平面性、液晶材料等の汚染を防ぐ低イオン汚染性等の厳しい基準に適合する必要があるため、液晶パネル用途に特別に作られた無アルカリガラス(ホウケイ酸ガラス)が用いられる。STN液晶パネルでは、二酸化珪素をコーティングしたソーダガラスも利用される。
  6. ^ 画素を用いず、透明電極が表示すべき模様に応じたパターンに形成されるものもある。
  7. ^ この金属配線としては、種々の金属配線が用いられるが、通常はアルミニウム系の材料が用いられる。大画面高精細化つまり表示面積を大きくして表示容量を増大させるには、信号線の抵抗と浮遊容量による信号波形のナマリが問題となる。例えば、4096×2048画素級の液晶パネルでは従来以上に抵抗の低い金属配線が必要となるため、アルミニウム系の金属配線に代わって例えば銅系などの低抵抗の材料によって金属配線を実現する開発が行なわれている。(日経エレクトロニクス 2009年2月9日号 P.53)
  8. ^ この場合には、表面から入射する外光が反射板によって反射するまで、および、反射板によって反射したあと表面からから出射すまでの合計2回、液晶パネルを通過する。簡易な反射型の液晶パネルでは、この2回の通過の際に液晶パネルが光を通過させるか通過させないかによって表示を行う。この2回の通過の際に、液晶層と反射層との間に厚みが大きいガラス基板や偏光フィルムが配置されるため、表示が2重に見える問題もあり、精細な画素による表示には向かない。
  9. ^ ACF(Anisotropic Conductive Film)は熱硬化型の樹脂フィルムであり、エポキシやアクリルの基材に熱硬化反応材が混ぜられ、内部にはニッケルをメッキした直径3-5μm程の樹脂ボールが無数に分散されている。TABモジュールは液晶パネルの接続部との間にACFが挟まれ精確な位置合わせの後に、加圧・加熱される事で樹脂ボールの金属によって導通が得られた状態で樹脂の硬化が進み、そのまま液晶パネルの端部にTABモジュールが固定される。
  10. ^ 駆動用プリント基板はガラスエポキシ製であり、耐熱温度130℃程度と高熱に弱く、接続端子は分厚く柔らかな銅箔製でTABモジュールの実装時のACFをそのまま使えば微小な樹脂ボールが銅の内部へとめり込んで圧接できない。このため、プリント基板用には低温で硬化する樹脂と樹脂ボールに加えてニッケルや半田などの金属粒子も加えられている。
  11. ^ この配向処理は、ラビングという。配向膜上を布でこする(rubする)ことによって、その基板に接する液晶配向がその方向を向くようになる。なお、液晶配向には方向性があり、一方が、基板からわずかだけ(数度程度)持ち上がる。例えば基板上に適当に取った時計文字盤によって方向を表して12時から6時の方向に向かって配向膜を布でこすると、液晶配向は、6時の側が持ち上がる。これをプレチルト角という
  12. ^ 無印加時に偏光が回転する角度は、屈折率異方性に液晶層の厚みを乗じたものと、伝播する波長との間の比率などといった液晶層の設計パラメータに依存する。
  13. ^ この表裏2枚の偏光板の配置を「クロスニコル」という。
  14. ^ この表裏2枚の偏光板の配置を「パラレルニコル」という。
  15. ^ 現在でも、表示部のバックグラウンドを暗表示として数値を明表示にする数値表示を実現したいというデザイン上の必要性がある場面では、簡便な表示を用いる機器(時計など)の表示部としてTN型のNBモードが利用されることもあるが、ごく稀である。
  16. ^ ただし、要求される表示品位が異なることから、設計パラメータは異なる
  17. ^ 液晶パネル部の画素を透過部と遮光部とに分けた場合の透過部の面積割合
  18. ^ 電圧印加時の画素内の配向が一つの回転方向にある場合には、視野角が広いものの、傾斜方向からの観察を行うと傾斜方位(画面に向かって傾斜させるときの傾斜の方位)に依存するような色づき(色度変化)が残ってしまうが、これは、液晶の回転する方向が互いに逆となる領域を画素内に設けるような電極構成をとることにより、ごく小さくすることができる。
  19. ^ 「ラビング」とは配向用の微細な溝を形成するために一般的に行われるラビング工程のことである。ラビング工程では基板に樹脂等の液体を塗布した後、固着前に布地の細かな繊維によって表面を一方向に撫でることで微細な溝を作る。
  20. ^ 一方の偏光を吸収するため透過率が50%、実用的なものでは約42%しかない。
  21. ^ 液晶それ自体が発光しないという光学的な特徴は、構成部品数が増えることで液晶パネルの多様性の一因となっている。
  22. ^ 液晶表示の電卓やデジタル時計を、様々な角度から眺めるとモノクロ表示の場合は、単にコントラストの問題だが、カラー表示の場合は3色のコントラストの組み合わせによりカラーを表示しているので、見やすい角度と見えにくい角度が色毎に異なる(屈折率の波長依存性)。
  23. ^ VA方式の例にはASV液晶がある。
  24. ^ 通常は暗室で測定されるため、「暗所コントラスト」とも云う。
  25. ^ コントラスト比を大きくできない詳しい要因は、偏光フィルターの偏光度が完全に100%ではないこと、液晶層やカラーフィルター等により偏光が若干解消されるため、視野角によっては表示光が漏れてきてそれが見えるため等である。このため、液晶ディスプレイで映画などの暗い画面を映すと、「漆黒の闇」の表現が難しくなり、テレビなどの映像用途に液晶パネルを用いる場合の技術課題となっている。
  26. ^ 携帯機器では小型軽量化への要求と電池容量のトレードオフの関係が年々厳しくなっている事情があり、また、大画面の用途では、ブラウンTVの買い替え時により大きな画面の液晶TVが選ばれる傾向があり、液晶TVとプラズマTVの消費電力競争という背景もある。
  27. ^ 原理は全く異なるが、メモリー性液晶表示機に似た動作が可能な物に電子ペーパーがある。
  28. ^ 明暗のダイナミックレンジの向上とは、例えば闇夜の映像では真っ暗な画面が求められるため、光源も輝度を落とせばより黒がはっきりすることで、画面上の明暗の表現幅が広がることを云う。
  29. ^ エリア制御の中には、部分的な明暗だけでなく色調まで変化させることで、例えば真っ赤なリンゴの背後のLEDでは赤色だけを発光させるといった制御を行なうことで色純度を向上させるものが現れている。
  30. ^ コレガは2007年に衝撃に強い光沢硬化ガラス保護フィルター付き液晶モニターを発売した。ASUS社の液晶モニターLS201はダイヤに近い9hの硬度をもち、ボウガンで射撃されても鉄製の矢尻のほうが損傷するほどである。
  31. ^ 液晶パネルメーカーでは、この現象の原因を、液晶の光シャッター機能の要である液晶配向にくせがつくこと、液晶材料中や配向膜中に残存したりそこに溶出する微量の不純物の影響などと考えており、液晶パネル部分の長期信頼性の問題として管理している。
  32. ^ なお、このような液晶モジュールのうちのバックライトシステムのみの劣化は、原理的には、バックライトシステムを交換すれば回復するが、そのような交換はメーカーの修理としては通常は行われない。というのは、液晶モジュールの表示性能は、バックライトユニットの発光特性と組み合わせて設計されていて、液晶モジュールの品種だけの各種のバックライトを補修目的でそれだけで保有することが現実的でないこと、実際の作業の際にも、バックライトユニットの大きさは画面と同じ大きさであり、特に大型の液晶テレビなどではバックライトを輸送すること自体が本体の輸送と変わらないこと、液晶パネルとバックライトの間に異物(ホコリ)が進入すると表示欠陥につながり、設置場所での作業は大型になればそもそも難しいこと、バックライトが寿命となるような段階で、上記の費用をかけるだけの価値がその他の部分に残存している状況はデジタル機器では考えにくいこと、などのためである。逆に、バックライト寿命がモジュール寿命を決める面もあるため、バックライトの長寿命化のための開発も行われてきている。
    なお、バックライトが冷陰極管を光源とするものの場合には、冷陰極間を点灯させるためのインバータ回路が動作不良となることもあり、外観上正常なのに画面が突然全く点灯しなくなるような故障ではその確率が高い。インバータ回路は、液晶モジュールとは別部品であることが多く、液晶モジュールの交換などに比べて安価に修理できることがある(なお、通電時に高電圧となる部分があり危険なので専門家に依頼すること)。
  33. ^ パソコン用の一般作業には光沢は作業をし辛いという欠点がある。
  34. ^ マット処理では、外光が表面でわずかに反射し、その反射が画面全体の明るさをわずかに増加させるため、コントラストが悪化し、色純度を低下させる
  35. ^ カラーフィルタを用いずにカラー表示を行う方式として、直視型の液晶ディスプレイにおいて、R、G、Bの光を順次発光させるように構成したLEDバックライトに、高速で書き換え可能な液晶パネルを組み合わせてカラー表示を行うフィールドシーケンシャルカラー表示方式のものも試作されている。これは、カラーフィルタを用いないため、必要な画素数が3分の1となり開口率が上がるために光の利用効率が良くなる利点がある。一方で、必要な応答速度が単純計算でも3倍になるために、一般に応答速度で劣る液晶表示素子では実現に難しさがある。また、色を順次表示するために色割れという問題も起きる。

[編集] 出典

  1. ^ a b c 鈴木八十二編著 『液晶ディスプレイのできるまで』 日刊工業新聞社 2005年11月28日初版1刷発行 ISBN 4526055476
  2. ^ 『ニュースランキング』 「日経エレクトロニクス」 2009年3月9日号 P.101
  3. ^ 佐伯真也著 『消費電力は有機ELの1/500 シャープのメモリ回路内蔵液晶』、日経エレクトロニクス2009年6月15日号。ただし、画素に設けられる反射層が光を反射するため、白と黒の表示ではなく白とミラーの表示となる。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ

[編集] 外部リンク