2-ブロモブタン

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2-ブロモブタン
2-Bromobutane
識別情報
CAS登録番号 78-76-2 チェック
PubChem 6554637147 R12236140 S
ChemSpider 6306 チェック
552796 R ×
EC番号 201-140-7
国連/北米番号 2339
MeSH 2-bromobutane
ChEMBL CHEMBL156276 チェック
RTECS番号 EJ6228000
バイルシュタイン 505949
特性
化学式 C4H9Br
モル質量 137.02 g mol−1
外観 無色ないしわずかに黄色の、透明な液体[3]
匂い 芳香[3]
密度 1.255 g mL−1
融点

-112 °C, 161 K, -170 °F [2]

沸点

91 °C, 364 K, 196 °F [2]

への溶解度 不溶
有機溶媒への溶解度 アルコールエーテルに可溶。アセトン四塩化炭素メタノール脂肪族及び芳香族炭化水素等に溶解
log POW 2.672
屈折率 (nD) 1.437
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −156 kJ mol−1
標準燃焼熱 ΔcHo −2.706–−2.704 MJ mol−1
危険性
GHSピクトグラム 可燃性
GHSシグナルワード DANGER
Hフレーズ H225
Pフレーズ P210
引火点 21 °C (70 °F; 294 K)
発火点 265 °C (509 °F; 538 K) [2]
爆発限界 2.6 vol% - 6.6 vol% [2]
関連する物質
関連するアルカン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

2-ブロモブタン: 2-Bromobutane)とは、化学式C4H9Brで表される有機臭素化合物であり、ハロゲン化アルキルの1種でもある。sec-ブチルブロミドメチルエチルブロモメタンなどとも呼ばれる。構造異性体には、1-ブロモブタン2-ブロモ-2-メチルプロパンがある。

性質[編集]

常温常圧において、2-ブロモブタンは芳香のある無色の液体で、比較的安定している。ただし、引火性があるため扱いには注意を要する [4] 。 臭素に結合した炭素原子が他の2個の炭素に結合していることから、第2級アルキルハライドと呼ばれる。また、この臭素が結合した炭素は不斉中心であるため、2-ブロモブタンは1対の鏡像異性体を持つ。

合成[編集]

2-ブロモブタンは、1-ブテンに対して臭化水素を付加することで合成できる。この際、中間体として第1級カルボカチオンよりも第2級カルボカチオンの方が圧倒的に安定性が高いため、2-ブチルカチオンを生じやすく、この付加反応による主生成物は2-ブロモブタンになる。2-ブチルカチオンの正電荷を持った炭素はsp2混成軌道を持った平面構造であるため、臭化物イオンによる求核攻撃は、この平面のどちらからも同じ確率で発生するため、この合成方法で生成した2-ブロモブタンはラセミ化する [5]

反応[編集]

2-ブロモブタンには、ハロゲンのうち臭素が結合しており、この臭素は比較的脱離しやすいため、強塩基で処理すると、脱離反応であるE2反応を起こしやすく、二重結合を生じて、trans-2-ブテン、cis-2-ブテン、1-ブテンの3種類のアルケンを生じ得る [6] 。 ただし、2-ブロモブタンではSN2反応も起こり得て、例えば、水酸化ナトリウムなどが発生させる水酸化物イオンとSN2反応を起こせばブタン-2-オールが生成するし [7] 、他にも、シアン化物イオンとSN2反応を起こせば2-メチルブタンニトリルが生成する [8]

法規制[編集]

日本の消防法では、危険物第4類 第二石油類 非水溶性液体に区分される。

出典[編集]

  1. ^ 2-bromobutane - Compound Summary”. PubChem Compound. USA: National Center for Biotechnology Information (2005年3月26日). 2012年6月17日閲覧。
  2. ^ a b c d e 2-ブロモブタン”. 安全データシート厚生労働省職場のあんぜんサイト) (2018年3月16日). 2019年7月14日閲覧。
  3. ^ a b c 2-ブロモブタン”. 東京化成工業 (2018年10月3日). 2019年7月14日閲覧。
  4. ^ 2-ブロモブタン
  5. ^ Harold Hart 著、秋葉 欣哉、奥 彬 翻訳 『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.156、p.157 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
  6. ^ Harold Hart 著、秋葉 欣哉、奥 彬 翻訳 『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.179 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
  7. ^ Harold Hart 著、秋葉 欣哉、奥 彬 翻訳 『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.168 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
  8. ^ T.W.Graham Solomons、Craig B. Fryhle 著、花房 昭静、池田 正澄、上西 潤一 監訳 『ソロモンの新有機化学 (上巻) (第7版)』 p.269、p.270 廣川書店 2002年10月5日発行 ISBN 4-567-23500-2