日高拓殖鉄道D形蒸気機関車

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D形は、かつて日高拓殖鉄道(現在の北海道旅客鉄道日高本線の一部)に在籍した、特殊狭軌線テンダ式蒸気機関車である。

概要[編集]

日高拓殖鉄道により、1923年(大正12年)に2両および1925年(大正14年)に1両の計3両が北海道小樽市の橋本鉄工所(後の東亜車輛)で製造された。日高拓殖鉄道では、D形1 - 3)と称したが、1927年(昭和2年)8月1日の国有化にともない鉄道省籍となり、ケ510形ケ510 - ケ512)と改番された。形式がD形とされたのは、直通運転を行った苫小牧軽便鉄道の続きとしたもので、同社との関係の深さがうかがわれる。

形態は、飽和式2気筒単式の車軸配置0-6-0(C)形10トン級機関車で、炭水車は二軸である。この機関車は、ポーター製のB1形(後の鉄道省ケ500形)を模倣したもので、基本寸法の大部分はそれに倣っている。ただし、シリンダ直径を1/2インチ太くし、出力を増大するとともに、砂箱と蒸気ドーム前方に移し、ドームが外に露出している。

前述したように、本形式は苫小牧軽便鉄道の機関車と混用された。国有化後は1,067mm軌間への改軌工事が行われ、1931年(昭和6年)11月10日に完成した。これにより、本形式は同年12月に廃車された。譲渡されたものはないが、1942年(昭和17年)に同形機が2両製造され、王子製紙専用鉄道(山線)の4(2代)、5(2代)とされている。

主要諸元[編集]

  • 全長:9,392mm
  • 全高:2,937mm
  • 軌間:762mm
  • 車軸配置:0-6-0(C)
  • 動輪直径:711mm
  • 弁装置スチーブンソン式アメリカ形
  • シリンダー(直径×行程):216mm×356mm
  • ボイラー圧力:9.8kg/cm2
  • 火格子面積:0.53m2
  • 全伝熱面積:19.13m2
  • 機関車運転整備重量:10.2t
  • 炭水車整備重量:5.0t
  • 水タンク容量:2.73m3
  • 燃料積載量:1.20t
  • 機関車性能
    • シリンダ引張力(0.85P):1,950kg
  • ブレーキ方式:手ブレーキ

参考文献[編集]

  • 臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成 2」1969年、誠文堂新光社
  • 臼井茂信「機関車の系譜図 3」1976年、交友社
  • 臼井茂信「国鉄狭軌軽便線 12」鉄道ファン1984年3月号(No.275)
  • 金田茂裕「形式別・国鉄の蒸気機関車 国鉄軽便線の機関車」1987年、エリエイ出版部刊

関連項目[編集]

外部リンク[編集]