世界宗教

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宗教分布図

世界宗教(せかいしゅうきょう)は、世界的規模でその思想が浸透し、様々な地域・民族によって信仰されている宗教を指す。

起源[編集]

そもそも宗教の始まりは、ひとつの思想なり教義が、1人1人の持つ信仰とは異なり、ある集団(民族部族など)に共通して信仰される共通認識となった時点であり、これを民族宗教と呼ぶ。その段階での宗教は他の民族には理解しきれない独自な思想や儀式を有している事が多いが、その中から他の民族にも理解しやすい普遍的な思想、現状からの救済、単純な規則(十戒五行五戒)、平等意識(の下の平等・山川草木悉有仏性)などの特徴を持った宗教が現れ、やがて、他の民族にも伝播して行き、複数の民族によって信仰されるようになった。

なお、これらの宗教は、通常民族間を越えて移動する商人によって伝播したが、中には宗教者による宣教伝道、あるいは宗教者に帰依した人々によって引き起こされた戦争によって伝播した事もある。

具体例[編集]

今日世界宗教とみなされている宗教はキリスト教イスラム教仏教である。過去にはマニ教ゾロアスター教も世界宗教の性質を有していた。

ただし、世界宗教と民族宗教の境界は実際には非常に曖昧である。

ヒンドゥー教は一般にインド文化圏内で信仰され民族宗教に分類されるが、その信者は、インド・アーリヤ系民族、ドラビダ系民族、チベット・ビルマ系民族、オーストロアジア系民族など多岐にわたり、その国籍もインド、ネパール、スリランカ、バングラデシュなど様々である。またヒンドゥー教を民族宗教と定義するとき、インドネシアのバリ島のヒンドゥー教や、東南アジア各地に残存するヒンドゥー教諸神への信仰は考慮されていない。そしてヒンドゥー教も他宗教からの改宗も認めている。ヒンドゥー教も十分、世界宗教としての性質を持ち合わせている。

ユダヤ教も同様に民族宗教の代表のように扱われるが、事実は幾分異なる。ユダヤ教は実際には他宗教からの改宗を認めており、世界中でユダヤ人と称する多くの集団は実際には他宗教からの改宗者の子孫、あるいはユダヤ教を最初にもたらした者たちと現地人との混血である。この事はエチオピア、インド、中国、ヨーロッパ、アラビアなどのユダヤ人がそれぞれ現地の人間と形質上はなんら区別が無い事からもうかがい知れる。つまりアフリカ人、アジア人、ヨーロッパ人のキリスト教徒がいるのと同様、アフリカ人、アジア人、ヨーロッパ人のユダヤ教徒がいるにすぎない。ユダヤ教はユダヤ教徒のみを救済する事を目的としているが、それはイスラム教やキリスト教などと同じと言える。

シク教ジャイナ教のように、民族宗教的な(排他的)性格はほとんど持ち合わせず、(全人類の救済を目的とした)世界宗教的な性質をより多く持ち合わせながらも、実際にはインド以外には広まっていないため民族宗教として扱われている宗教もある。シク教やジャイナ教は明確な創始者を持つ宗教であり、その信者の始まりは全て他宗教からの改宗者である。特定の民族のみの救済を目的とはしていない。

一方で、世界宗教として分類される宗教にも、民族宗教的な側面は存在する。例えば、イスラム教では、イスラム教徒の子供として生まれたものは自動的にイスラム教徒になるとされる。全人類を救済することを目的としながらも、血統に基づく民族の宗教としても機能している。また、中国や、東欧、南アジアなどの多くのイスラム教徒は、現地の民族と、形質上の人種や言語が全く変わらないにもかかわらず、イスラム教徒だということで、別の民族として扱われ、また本人たちも周囲の多数派の宗教の信者たちとは別の民族だと言うアイデンティティーを持っている。このような場合、教義の性質の如何にかかわらず、イスラム教は自他共に民族の宗教として扱われている。スンナ(イスラム教徒が従うべき習慣)の多くも(特定の民族である)アラブ民族の習慣に由来していることも注目すべきである。