ランベルト・ベールの法則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ランベルト・ベールの法則の例。Rhodamine 6Bの溶液中の緑色レーザー光。光線は溶液中を進むにつれて弱くなる。

ランベルト・ベールの法則( - ほうそく、Lambert-Beer law、英語ではBeer-Lambert law、Beer-Lambert-Bouguer law、または単にBeer's lawと呼ばれるものも同じ意味)は物質による吸収を定式化した法則である[1]。法則名はヨハン・ハインリッヒ・ランベルトアウグスト・ベーアピエール・ブーゲに由来する。

公式[編集]

媒質に入射する前の光の強度(放射照度)をI_0、長さ l の媒質を透過した後の光の強度をI_1としたとき、以下のようになる[2]

{\log_{10}}\left(\frac{I_1}{I_0} \right) = -{\alpha}L = -{\epsilon}cl

ここで{\alpha}吸光係数{\epsilon}モル吸光係数と呼ばれる。 c は媒質のモル濃度

物理的な意味[編集]

光の吸収とは、量子論的に考えれば、分子原子イオンが光(電磁波)のエネルギーを用いてエネルギーの低い固有状態からエネルギーの高い固有状態に遷移することにより起こる現象である。

今、二つの固有状態(a,b、エネルギーはそれぞれ{E_a},{E_b}であり{E_a}<{E_b}とする)のみをもつ分子を考える、それぞれの状態に単位体積あたり{N_a},{N_b}個の分子が存在すると考えると、このに光が入射したとき、{N_b}の時間変化は媒質中の分光放射照度{\rho}=I/c(ここで、c光速)を用いて

\frac{dN_b}{dt}=-B_{b \to a}\rho N_{b}+B_{a \to b}\rho N_{a}

と表される。ここで、B_{a \to b},B_{b \to a}の単位は(光エネルギー/体積 時間)であり、それぞれアインシュタイン係数を示す。これらは遷移ごとに決まる定数でありB_{a \to b}=B_{b \to a}=B_{ab}と仮定すれば、

\frac{dN_b}{dt}=B_{ab}\rho (N_{a} - N_{b})

となる。また{\rho}放射束フラックスFを用いれば{\rho}=h{\nu}F/c(ここで、hプランク定数{\nu}は光の振動数)と書けるので、

\frac{dN_b}{dt}=\frac{B_{ab}h\nu}{c}F(N_{a} - N_{b})={\sigma}F(N_{a} - N_{b})

ここで{\sigma}の単位は面積であり、吸収断面積と呼ばれ、物理的にはあるフラックスの光が分子に吸収される有効的な面積をしめす。つまり、微小距離dxを仮定したときに、dxを移動した後のフラックスの変化(単位面積あたりに吸収される光子の数)は、

dF=-{\sigma}F(N_a - N_b)dx\,

と表せる。上の式を光が媒質をとおる長さLで定積分すれば、

{\log_{10}}\left(\frac{I_1}{I_0} \right)=-{\sigma}(N_a - N_b)L

フラックスFは放射照度Iを用いてF=c{\rho}/h{\nu}=I/h{\nu}より、

{\log_{10}}\left(\frac{I_1}{I_0} \right)=-{\sigma}(N_a - N_b)L

と書ける。これは定義の式と等価である。

脚注[編集]

  1. ^ IUPAC Gold Book - Beer–Lambert law (or Beer–Lambert–Bouguer law)
  2. ^ Atkins, P. W. 『アトキンス 物理化学』下、千原秀昭・中村亘男訳、東京化学同人2001年、第6版、495頁。ISBN 4-8079-0530-9

関連[編集]