モンセラートの朱い本

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モンセラートの朱い本のフォリオ

モンセラートの朱い本カタルーニャ語Llibre Vermell de Montserrat)は、中世西洋の歌曲集。14世紀の手写本で、スペイン・バルセロナ郊外モンセラート山の、黒い聖母像で知られるモンセラート修道院に伝承される。13~14世紀頃、モンセラート修道院へ参ずる巡礼者たちによって歌い踊られた10曲の歌謡を含む。

写本の特徴[編集]

『モンセラートの朱い本』は、1399年ごろに作製された。元来は172ページのフォリオがあったが、そのうち32ページ分が失われている。『モンセラートの朱い本』という通称は、この曲集が19世紀に赤表紙によって装幀されたことを表している。個々の曲目は作者不詳である。モンセラート修道院には、当時の巡礼地の遺構である「モンセラートのマリア聖堂が建っており、曲集中でしばしば聖母マリアに言及されているのもこのためである。

音楽[編集]

編集の意図は、無名の編集者によって次のように明瞭にされている。

Quia interdum peregrini quando vigilant in ecclesia Beate Marie de Monte Serrato volunt cantare et trepudiare, et etiam in platea de die, et ibi non debeant nisi honestas ac devotas cantilenas cantare, idcirco superius et inferius alique sunt scripte. Et de hoc uti debent honeste et parce, ne perturbent perseverantes in orationibus et devotis contemplationibus.
(英訳からの重訳:巡礼者は、昼はもちろん、モンセラートの聖母マリア教会において寝ずの夜を過ごす間、歌ったり踊ったりしたくなるものだ。そして教会では、お行儀よく敬虔にしていられないのなら、歌を口ずさんではならないのである。というわけで、ここに発表されるこれらの歌曲が作曲された。これらの歌曲は、遠慮がちに使われなければならず、祈りと瞑想のうちに夜明かしをする人にうるさがられないように注意されたい。)

したがって、収録された歌曲は、巡礼者が何か「行儀よい敬虔な」歌を口ずさむことができるように書かれている。詩はカタルーニャ語とラテン語によっている。曲集はほとんど14世紀末に成立したが、収録された多くの曲は、様式の点から早くに成立したようだ。たとえばモテートゥス《悦びの都の女王》は、別々の2つの歌詞が使われている。このような作曲様式は、この曲集が編纂されたときには、流行遅れのものであったろう。

曲集中の多くは、民謡イムヌスの特徴を示している。いくつかの曲は単旋律で書かれているが、2声体から4声体のポリフォニー歌曲もある(ただし通模倣様式ではない)。単旋律歌曲は、カノンとして歌うこともできる。曲集中の素朴ながら力強い旋律は、非常に魅力的なものであり、歌曲のいくつかは、古楽の中でもとくに頻繁に録音されているものとなっている。

現存する歌曲[編集]

以下の10曲がある(“fol.”以下の数字はフォリオ番号を表す)。

  1. カッチャ《おお、輝く聖処女よ》 O virgo splendens (fol. 21v-22)
  2. ヴィルレー《輝ける星よ》 Stella splendens (fol. 22r)
  3. カッチャ《処女を讃えよ》 Laudemus Virginem (fol. 23)
  4. ヴィルレー《処女なる御母を讃美せん》 Mariam, matrem virginem, attolite (fol. 25r)
  5. ヴィルレー《あまねき天の女王よ》 Polorum Regina (fol. 24v)
  6. ヴィルレー《声をそろえいざ歌わん》 Cuncti simus concanentes (fol. 24)
  7. カッチャ《笏杖もて輝ける御身》 Splendens ceptigera (fol. 23)
  8. バラード《七つの悦び》 Los set gotxs (fol. 23v)
  9. 2声のモテートゥス《悦びの都の女王/処女よ、お慈悲を》 Imperayritz de la ciutat joyosa / Verges ses par misericordiosa (fol. 25v)
  10. ヴィルレー《われら死をめざして走らん》 Ad mortem festinamus (fol. 26v)

これらの楽曲は、ジョルディ・サヴァールとエスペリオンXXや、アンサンブル・ユニコーン、アラ・フランチェスカなど、多くの古楽奏者によって演奏されている。

関連事項・[編集]