ミルベンケーゼ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
新しいミルベンケーゼ

ミルベンケーゼMilbenkäse. 「ダニチーズ」の意)は、ドイツ特産のダニ入りチーズである。現在では、ザクセン=アンハルト州ヴュルヒヴィッツ村だけで生産されている。この地方の方言では、メルンカーゼ(Mellnkase)と呼ばれる。


ヴュルヒヴィッツ村のダニチーズの記念碑

このチーズの伝統は中世に遡るが、1970年ごろにはすでに老齢のリースベト・ブラウアー(Liesbeth Brauer)がその製法を知るのみで、殆ど失われかけていた。この地域の科学教師ヘルムート・ペッシェル(Helmut Pöschel)は、彼女から正しい作り方を習い、仲間のクリスツィアン・シュメルツァー(Christian Schmelzer)と共に、このチーズの伝統を蘇らせた。

ヴュルヒヴィッツには、現在、ミルベンケーゼ生産の再生を祝う記念碑が建てられているが、この碑の背面は空洞で、通行人や観光客が食べられるように、ここに定期的にミルベンケーゼが補充されている。

製法[編集]

年代物のミルベンカーゼ
チーズの入った木箱

塩とキャラウェイで風味を付けたクワルク(熟成させないフレッシュチーズの一種)を小さなボールや筒などに入れて形を作り、乾燥させる。それを、ライ麦粉のはいった木製の箱に入れ、最低3ヶ月間、チーズダニ(Tyroglyphus casei)に住まわせるようする。ダニの消化管液がチーズ全体に広がり、発酵を促進させる。ライ麦を加える理由は、ダニが少しずつかじっていくのではなく、ただ好き放題に丸ごとチーズを食べてしまうことを避けるためである。一ヶ月後にチーズの外皮は黄色くなり、3ヶ月後には赤茶色になる。チーズが黒くなるまで、1年ほど寝かす生産者もいる。

味はハルツァー(ドイツの酸乳チーズ)に近いといわれているが、やや苦味があり(年月と共に増す)、独特の風味の後味がある。外皮についているダニも一緒に食される。

衛生と健康[編集]

ミルベンケーゼの販売は、法的にはグレーゾーンにある。EU の規則(EC Reg. 178/2002 Article 2(b))は、「食用品市場に置かれる準備が整っている」場合に、動物が生息している食料品の販売を認めている[1]。一方で、ドイツの食品添加物とチーズに関する規定(Zusatzstoff-Zulassungsverordnung and Käseverordnung)では、チーズダニとその消化管液を、チーズの添加物としてはっきりとは認めていない。ミルベンケーゼはこの地方の食品衛生局の許可を得て生産されており、この製品のHACCPが施行されている。

ミルベンケーゼは消化に良いと言われており、またチリダニによるハウスダストアレルギーをやわらげるとも言われているが、(この食品の珍しさやデータの少なさ故に)いまだ十分な研究がなされていない。

同種のチーズ[編集]

チーズを熟成させるためにダニを使うことは、他所でも見られる。最も知られているものとしては、フランス北東部やベルギーのミモレットが挙げられる。フランスの中央高地、アルプス、ピレネーといった地域のチーズにも、多かれ少なかれ、外皮にダニを使っているものがある(例えば、程度の多いものとしてカンタルサレ、少ないものとしてトム・ド・モンターニュの中のいくつか)。

スペインのオビエド地方のカブラレスチーズも、ダニ入りのチーズとして知られる。ただし、数の上では少なく、また熟成において重要な要素ではない。

他に、動物の棲みついているチーズとしては、イタリア・サルデーニャ地方の蛆入りチーズカース・マルツゥがある。こちらは主に衛生面から来る危険性を唱えられており、イタリア自体もこれを「腐敗した食品」と見なし、違法と定めているため、販売も厳しく取り締まっている。生産地のサルデーニャ地方でさえ厳しくは無いものの、それでも闇市でしか入手出来ないほどだという。

脚注[編集]