テトラメチルエチレンジアミン

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テトラメチルエチレンジアミン
テトラメチルエチレンジアミン
IUPAC名N,N,N',N'-テトラメチルエタン-1,2-ジアミン
別名1,2-ビス(ジメチルアミノ)エタン
TMEDA
TEMED
TMED
TMEN
分子式C6H16N2
示性式(CH3)2NCH2CH2N(CH3)2
分子量116.20
CAS登録番号110-18-9
形状無色液体
密度0.78 g/cm3, 液体
融点−55 °C
沸点120–122 °C
SMILESCN(C)CCN(C)C

テトラメチルエチレンジアミン (tetramethylethylenediamine) は、有機化合物の一種で、エチレンジアミンN-メチル化により合成されるアミンである。不快な魚臭を持つ無色の液体。TMEDA, TEMED, TMED, TMEN などの略称で呼ばれる。pKb(塩基解離定数)は 5.85。消防法に定める第4類危険物 第1石油類に該当する[1]

有機/無機合成における用途[編集]

テトラメチルエチレンジアミンは金属イオンへのキレート配位子(二座配位子)として用いられる。さまざまな金属塩と安定な錯体を作り、有機溶媒へ可溶化させる。

有機金属化学では、リチウムイオンへの親和性がよく知られる。n-ブチルリチウム (n-BuLi) が作る6量体クラスターに作用し、活性化させる。この n-BuLi/TMEDA 錯体はベンゼンフランチオフェンN-アルキルピロールフェロセンなどのプロトンを、場合によっては 2個引き抜くほどの強い塩基性を示す[2]。さまざまな有機金属アート錯体が、[Li(TMEDA)2]+ を対カチオンとする形で単離されている[3]。それらの錯体では、[Li(TMEDA)2]+ イオンは4級アンモニウムイオンのようなはたらきをしているが、塩基に対する耐性はずっと高い。

他の用途[編集]

テトラメチルエチレンジアミン(0.1~0.2% v/v)はペルオキソ二硫酸アンモニウムAPS)とともに、アクリルアミドポリアクリルアミドゲルとする重合ゲル化反応の開始剤として用いられる。ポリアクリルアミドゲルはポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE) やウェスタンブロッティングで担体とされる。

出典[編集]

  1. ^ 法規情報 (東京化成工業株式会社)
  2. ^ Haynes, R. K.; Vonwiller, S. C. "N,N,N',N'-Tetramethylethylenediamine" in Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis (Ed: L. Paquette) 2004, J. Wiley & Sons, New York.
  3. ^ 例:Morse, P. M.; Girolami, G. S. J. Am. Chem. Soc. 1989, 111, 4114-4115.