チコ・ロール

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袋の中にあるチコ・ロール

チコ・ロール(Chiko Roll)は、オーストラリアの軽食である。

中国春巻きに触発されたフランク・マッケンロー(Frank McEncroe)が考案し[1]、実際には鶏肉を包んでいないにもかかわらず「チキン・ロール」として1951年に販売した。皿や食器なしに移動しながら容易に食べられるように作られている。1995年以降、農業・食品関連企業シンプロットがチコ・ロールを製造している。

チコ・ロールの具材は基本的にはキャベツオオムギであるが、ニンジン、サヤインゲン、牛肉、牛脂、小麦シリアル、セロリ、タマネギも含まれている[2]フットボールの試合でも扱いに困らないように、半流動状の具材をと小麦粉からなる厚い生地で巻いている。巻いたものを植物油で揚げるのが一般的。

1960年代から1970年代におけるチコ・ロールの人気絶頂期に、オーストラリアでは毎年4000万個のチコ・ロールが販売された。この商品はオーストラリアの文化的な象徴として記述されている[3][4][5]

現在、チコ・ブランドにはチコ・ロールのほかにもコーン・ジャックス(Corn Jacks)、ハワイアン・シュプリーム・ピザ・サブス(Hawaiian and Supreme pizza subs)、スパッドスターズ(Spudsters)[注 1]オニオンリング魚肉団子英語版、そしてベジタブルナゲットのような商品がある[7]

歴史[編集]

開発[編集]

チコ・ロールはフットボールの試合や他の屋外イベントで配膳業を始めたビクトリア州ベンディゴ出身の元ボイラー製造人フランク・マッケンロー英語版により考案された[8]。1950年、マッケンローはパント・ロード・オーヴァル英語版の外側で競合相手が中華風のチャプスイ・ロールを販売しているのを見かけ、彼独自の方法で同様の製品をメニューに加えることを決めた。マッケンローはチャイニーズ・ロールが普段の屋外状況で容易に手づかみできるには薄すぎると感じ、食べ応えがあって手づかみで食べられる手早い食事となる、より大きくて長持ちするロールのアイデアを思いついた。その結果が1951年にウォガウォガ農業見本市で初公開されたチコ・ロールである[9][10][11]

評判[編集]

1960年代、マッケンローは家族とともにメルボルンへ移住し、チコ・ロール用に改造したソーセージメーカーで量産を始めた。チコ・ロールの人気が高まると、マッケンローはメルボルン郊外のエッセンドン英語版にあるより大きな工場に生産拠点を移した。のちに彼は自分の会社をフロイド・アイスワークスと呼ばれる地元企業と合併させてフローズン・フード・インダストリー株式会社(Frozen Food Industry Pty Ltd.)を設立した。新しい会社は1963年に株式公開した。

1965年までにオーストラリアのテイクアウト専用レストラン、特にフィッシュ・アンド・チップス販売店英語版の多くがチコ・ロールを取り扱うようになった。「チコをつかもう(Grab a Chiko)」という販売スローガンは、店主が冷凍庫からチコ・ロールを取り出して、フライヤーに入れて、ブランド特有の袋に滑り込ませる容易さを意味していた[9]。1970年代におけるチコ・ロールの人気の絶頂期には、各年にオーストラリア全土で4000万個を売り上げ、100万個が日本に輸出された[5]

近年の状況[編集]

1995年以降、チコ・ブランドはシンプロットに所有権が渡った。現在、全てのチコ・ロールはニューサウスウェールズ州バサーストで製造されている。製造にはペイストリー生地と具材を同時に生産して長いロール状にする専用の装置が用いられる。その後自動で筒切りにし、切り口を折りたたんで端部の独特な形状を作る。

過去数10年間におけるオーストラリアのテイクアウト食品市場の競合増加がチコ・ロールの人気を落ち込ませており、2011年には毎年1700万個にまで消費量が下がった[12]。しかしながら、チコ・ロールはスポーツイベントで人気のある軽食として生き残り、オーストラリアの至る所にあるフィッシュ・アンド・チップス販売店やスーパーマーケットでは今もなお幅広く入手することができる。

2016年9月、チコ・ロールの起源を巡りオーストラリア連邦議会内で論争が勃発した。カラア選挙区英語版選出のオーストラリア国民党アンドリュー・ギィ英語版議員、ベンディゴ選挙区英語版選出のオーストラリア労働党リサ・チェスターズ英語版議員とリベリナ選挙区英語版ミッチェル・マコーマック英語版議員の全員が各自の地元に起源があると主張した[13]

現在の製造会社はチコ・ロール誕生50周年を記念してベンディゴウォガウォガに金メッキ製の複製を贈呈した[14]

チコ・チック[編集]

1950年代以来、チコ・ロールの宣伝はオートバイに乗った魅惑的な女性「チコ・チック」を前面に出して「チコ・ロールは欲しくない?(Couldn't you go a Chico Roll?)」というスローガンを用いている[9][15]。1980年代初期には「あなたはロールを非難できない(You can't knock the roll)」というスローガンが使用された。

2008年、シンプロットは従来の煽情的なイメージから「隣の家にいる女の子(girl next door)」のイメージに方針転換すべく、新しい「チコ・チック」を全国から募集した。2008年7月17日、新しい顔として女優のアネット・メルトン英語版を起用した新しい宣伝ポスターがウォガウォガ催事会場で発表された[11]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ひと口サイズのマッシュポテト[6]

出典[編集]

  1. ^ Chiko Rolls”. CooksInfo.com. 2016年1月12日閲覧。
  2. ^ Chiko Rolls | Products | Chiko”. Chiko Rolls. 2021年11月18日閲覧。
  3. ^ Chiko's search for roll model Archived 25 February 2008 at the Wayback Machine., news.com.au website.
  4. ^ "Chiko Roll Nostalgia" Archived 21 June 2009 at the Wayback Machine., TV story from the Nine Network's A Current Affair news magazine program.
  5. ^ a b McEncroe, Francis Gerard (Frank) – David Dunstan, Australian Dictionary of Biography Online.
  6. ^ "Simplot Spudsters". Simplot Australia. 2022年12月7日閲覧
  7. ^ Chiko – Products”. www.chiko.com.au. 2016年1月21日閲覧。
  8. ^ The Chiko Roll: aussie snack icon”. Wagga Wagga City Council. Museum of the Riverina. 2008年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年7月25日閲覧。
  9. ^ a b c The Chiko Roll”. Up From Australia. 2008年4月3日閲覧。
  10. ^ Fun Facts”. Wagga Wagga Guide. 2008年4月3日閲覧。
  11. ^ a b Davies, Laura (2008年7月18日). “Chiko chick is back”. Fairfax Media (The Daily Advertiser). http://www.dailyadvertiser.com.au/story/724287/chiko-chick-is-back/ 2016年8月10日閲覧。 
  12. ^ Pitt, Helen (2012年8月15日). “Farewell to surfie molls and panel vans”. The Sydney Morning Herald (Fairfax). http://www.smh.com.au/entertainment/tv-and-radio/farewell-to-surfie-molls-and-panel-vans-20120814-246vs.html 2012年8月15日閲覧。 
  13. ^ Three regional MPs at war over the origin of the Chiko Roll”. News.com.au. 2017年9月4日閲覧。
  14. ^ The Gold Chiko Roll”. Wagga City Council. 2013年10月12日閲覧。
  15. ^ Chiko still on a roll fifty years on Archived 20 July 2008 at the Wayback Machine., Simplot Australia website.

外部リンク[編集]