ダルマ (ジャイナ教)

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ジャイナ教
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祝日
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ダルマサンスクリット語: धर्म, dhárma)あるいはダンマプラークリット: धम्म)という言葉に対して、ジャイナ教の文献では様々な意味があてがわれている。ジャイナ教がその信者によって「ジャイナ・ダルマ」と呼ばれており、ダルマはしばしば「宗教」あるいは「信仰」と翻訳される。

ジャイナ教ではダルマという言葉は以下の意味を含む:

  1. 物事の真の本性
  2. 知覚、知識、行為の合理性
  3. 寛大さなどの十の美徳。十種のダルマとも呼ばれる
  4. アヒンサー―生きとし生けるすべての物を保護すること
  5. 二つの道―僧と在家信者
  6. ドラヴィア(実体)としてのダルマ(運動の原理)

事物の本性[編集]

ジャイナ教によれば、宇宙とその構成要素は創造されたものではなく、永遠に過去から存在し永遠に未来に存続していく。そういった構成要素は自然法則や自身の本性に則って運動し、外的存在の干渉は受けない。ダルマ、つまり真の信仰は、ジャイナ教によれば、「ヴァットゥ・サハヴォー・ダンモ」(物体の生来の本質がその物体の真のダルマだ)ということである。『カールティケヤーヌプレクサー』(478年)ではこう説明している: 「ダルマは他の何物でもなくまさに物体の真の本性である。の本性が燃えることであり、の本性が冷却効果をもたらすことであるのと全く同様に、魂の本質的性質は自己実現と精神的高揚を追求することである[1]。」

サムヤクトヴァ―知覚、知識、行為の合理性[編集]

ジャイナ教によれば、総称して「ラトナートラーヤ」、あるいは「ジャイナ教の三つの宝石」とも呼ばれる、「サムヤク・ダルシャナ」(理性的知覚)、「サムヤク・ジニャーナ」(理性的知識)、「サムヤク・チャリトラ」(理性的行為)が真のダルマを構成する。ウマースヴァーティーによれば、サムヤク・ダルシャナとジニャーナ・チャリトラがともにモクシャマールガ、つまり解脱への道を構成するという[2]

「サムヤク・ダルシャナ」つまり理性的知覚は宇宙に存在する全ての物体の真の本性に対する理性的な信頼である[3]。「サムヤク・ジニャーナ」つまり理性的な知識は実在物に関する知識、タットヴァを知っていることである。これはアネカーンタヴァーダ、つまり反絶対主義と、スヤーダヴァーダ、つまり真理の相対性という二つの原理と合併される。正しい知識は三つの主な難、つまり疑い、惑わし、非決定性から逃れていなければならない。「サムヤク・カリトラ」つまり理性的行為は(魂)生きたものの生来の振る舞いである。これは後述するような禁欲行為から成り、正しい行為と戒律の順守、用心深さと自己抑制から成る[4]

ダルマとしての十の美徳[編集]

以下の十の美徳が真のダルマを構成する[5]-

  1. この上ない寛容さ
  2. この上ない謙遜
  3. この上ない率直さ
  4. この上ない正直さ
  5. この上ない純潔さ
  6. この上ない自制
  7. この上ない苦行
  8. この上ない放棄
  9. この上ない独占欲のなさ
  10. この上ない独身主義

ダルマとしてのアヒンサー[編集]

ジャイナ教の経典によれば、アヒンサーは最高のダルマであり、非暴力のダルマに比肩するダルマはないという。

苦行と在家の二つの道[編集]

ダルマは「シュラーヴァカダルマ」つまり在家信者の道と「シュラマナダルマ」つまり出家信者托鉢者の道の二つからなる[6][7](ただし、仏教においてはシュラーヴァカつまり声聞は出家信者を意味する)。シュラーヴァカダルマは高潔な世帯主が歩める宗教的な道で、喜捨と信仰が第一の義務となる。世帯主のダルマは十二の戒律、つまり五つのより小さな戒律と七つの懲戒的な戒律、の順守から成る。 シュラマナダルマは高潔な出家信者の宗教的な道で、経典の研究と瞑想が第一の義務となる。僧侶のダルマは五つの「マハーヴラータ」つまりより大きい戒律から成る。彼らは正しい信念、正しい知識、正しい行為を授かり、完全な自己抑制と苦行に携わる。

ダルマ・タットヴァとダルマースティカーヤ[編集]

ダルマは宇宙を構成する六つの実体の一つである[8]。六つの実体とは、ダルマ(運動の媒体)、アダルマ(静止の媒体)、アーカーシャ(空間)、カーラ(時間)、プドガラ(物質)、ジーヴァ(魂)である。実体としてのダルマは宇宙全体に延長・拡散しているため、ダルマースティカーヤとしても知られている。これは物体や魂が運動するのを助けている。それ自体は運動しないが運動の媒体として働くのである。アダルマはダルマの対立物である、つまり、アダルマは魂や物質といった実体が静止するのを助ける。

脚注[編集]

  1. ^ Kārtikeyānupreksā
  2. ^ Kuhn, Hermann (2001). Karma, The Mechanism : Create Your Own Fate. Wunstorf, Germany: Crosswind Publishing. ISBN 3-9806211-4-6. 
  3. ^ Jaini, Padmanabh (1998). The Jaina Path of Purification. New Delhi: Motilal Banarsidass. ISBN 81-208-1578-5. 
  4. ^ *Varni, Jinendra; Ed. Prof. Sagarmal Jain, Translated Justice T.K. Tukol and Dr. K.K. Dixit (1993). Samaṇ Suttaṁ. New Delhi: Bhagwan Mahavir memorial Samiti.  Verse 262 - 4
  5. ^ Varni, Jinendra; Ed. Prof. Sagarmal Jain, Translated Justice T.K. Tukol and Dr. K.K. Dixit (1993). Samaṇ Suttaṁ. New Delhi: Bhagwan Mahavir memorial Samiti.  verse 84
  6. ^ Varni, Jinendra; Ed. Prof. Sagarmal Jain, Translated Justice T.K. Tukol and Dr. K.K. Dixit (1993). Samaṇ Suttaṁ. New Delhi: Bhagwan Mahavir memorial Samiti.  verse 296
  7. ^ Acarya Haribhadra, Dharmabindu
  8. ^ Varni, Jinendra; Ed. Prof. Sagarmal Jain, Translated Justice T.K. Tukol and Dr. K.K. Dixit (1993). Samaṇ Suttaṁ. New Delhi: Bhagwan Mahavir memorial Samiti.  Verse 624

関連項目[編集]