タニジャコウソウ

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タニジャコウソウ
静岡県伊豆半島 2020年10月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : シソ類 Lamiids
: シソ目 Lamiales
: シソ科 Lamiaceae
亜科 : オドリコソウ亜科 Lamioideae
: ジャコウソウ属 Chelonopsis
: タニジャコウソウ C. longipes
学名
Chelonopsis longipes Makino[1]
和名
タニジャコウソウ(谷麝香草)[2][3]

タニジャコウソウ(谷麝香草、学名Chelonopsis longipes)は、シソ科ジャコウソウ属多年草[2][3][4][5]

特徴[編集]

根茎から数本が直立し、上部は斜上して、長さは50-70cmになり、下向きに開出する毛が生え、多くは紅紫色をおびる。は対生し、葉質はやや薄く、葉身は広披針形または狭倒卵状長楕円形で、長さ8-15cm、幅2.5-5cmになり、先は細長くとがり、縁に鋸歯があり、基部は次第に細まって耳状心形になり、長さ5-10mmになる葉柄がある。葉の両面と特に葉脈上には斜上する毛があり、葉柄にも斜上する毛が生える[2][3][4][5]

花期は9-10月。上部の茎の葉腋から長い花序柄をだし、その先に1-3個からなる集散花序をつける。花序柄は下垂し、長さは1.5-5cmになり、小花柄は1-3mmになる。花序柄、小花柄ともに毛が密生する。は鐘形で圧毛が生え、長さ7-8mmになり、先は不等に浅く5裂し、果時には球状の鐘形になって大きく膨らんで先がすぼまり、長さは15-18mmになる。花冠は長さ3.5-4cmになる2唇形で、淡紅紫色をし、筒部は長く、上唇が短く、下唇はやや長く先は半開して3裂する。雄蕊は4個あり、下側の2個が長い。雌蕊は1個ある。果実は長さ約1cmになる分果で、1-3個あり、宿存性の萼に包まれる[2][3][4][5]

分布と生育環境[編集]

日本固有種[6]。本州の神奈川県以西、四国、九州の、おもに太平洋側に分布し[4][5][6]、温帯の山地の谷沿いなどの湿った林床に生育する[2][4][3][5]

名前の由来[編集]

和名タニジャコウソウは、「谷麝香草」の意[2][3]牧野富太郎(1898) による命名である[7]

種小名(種形容語)longipes は「長柄の」の意味[8]。(牧野(1898)) による記載命名で、シンタイプは、高知県高岡郡新荘村(現、須崎市)、高知市土佐山、高知県高岡郡佐川村(現、佐川町)および高知市鷲尾山で採集されたもの[1][7]

分類[編集]

日本に分布する本属の3種は日本固有種。本種は、他の2種と比べ花序柄が著しく長い。ジャコウソウ Chelonopsis moschata は、茎に鈍い4稜があり、長さ50-100cmになり斜上する。アシタカジャコウソウ C. yagiharana は、茎は円柱形で、高さ20-40cmでほとんど直立する[4]。3種とも「麝香」の名がつくが、そのような香りはない[4]

一方、イブキジャコウソウ Thymus quinquecostatus は、名前が似ているが、属が異なり、イブキジャコウソウ属 Thymus に属する。この属は「麝香」の名前のとおり、植物体全体に芳香がある[9]

種の保全状況評価[編集]

準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト

(2019年、環境省。2012年の環境省第4次レッドリストから新たに準絶滅危惧にランキング)

下位分類[編集]

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b タニジャコウソウ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e f 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.424
  3. ^ a b c d e f 新分類牧野, p. 1071.
  4. ^ a b c d e f g 日本の野生植物5, p. 122.
  5. ^ a b c d e 絶滅危惧植物図鑑(2015), p. 137.
  6. ^ a b 『日本の固有植物』p.124
  7. ^ a b 牧野(1898).
  8. ^ 新分類牧野, p. 1500.
  9. ^ 日本の野生植物5, p. 140.
  10. ^ a b シロバナタニジャコウソウ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  11. ^ 本田(1939).

参考文献[編集]