タコグラフ

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トラックのフロントウィンドウ上部に設置された1DIN形状のタコグラフ。形状は光学ディスクドライブによく似ている。トレイに載っているディスクがタコチャート紙
速度計と一体のタコグラフからタコチャート紙を取り出すところ
タコチャート紙の記録例
デジタルタコグラフ

タコグラフ: tachograph)とは自動車に搭載される運行記録用計器の一種であり、運行時間中の走行速度などの変化をグラフ化することでその車両の稼動状況を把握できるようにした計器である。道路運送車両法に基づく道路運送車両の保安基準には「運行記録計」という名称で、装着を義務づけた車両の種類や、型式認定を受けた機器を使用する旨などが規定されている。

日本では1962年にタコグラフ装着義務対象車が初めて指定され、貸切バス、片道100kmを超える路線バス、路線トラックが対象となった。次いで1967年には総重量8トン以上、および最大積載量5トン以上のトラック、セミトレーラー・フルトレーラーのトラクター(牽引車)、国内15都市のハイヤータクシーに拡大、1990年には特別積合せ貨物運送に係わる運行系統に配置する事業用自動車にも拡大されている。

基本構造[編集]

自動車の速度計(スピードメーター)は通常、変速機を通過した出力軸から機械的または電気的に回転数情報を得て表示するが、タコグラフもこれを応用している。

一般的な従来型タコグラフのしくみは次の通りである。速度計の裏面に取り付けられた円形の感圧記録紙(タコチャート紙、: tachograph disk)は、通常24時間に1回転する。走行速度に応じ上下運動する鉄針が定速回転する記録紙を擦ることで、縦軸が速度・横軸が経過時間の2要素からなる折れ線グラフを描く、走行距離は速度と時間の積から判断できる。

速度計を手前に引くと蓋のように開き、記録紙を交換することができる。この開閉部は管理のため施錠することもできる。従来型のタコグラフ装着車は通常この鍵穴や、速度計の針と同軸上に時計が装備されていた事から非装着車との見分けがついた。なお現在では記録紙の交換を容易にするだけでなく、運転席の設計上・デザイン上の理由から、記録部を速度計から分離させ、筐体を1DIN規格とした機種や、タクシーを中心に時計の形状をした機種もある。

時間対走行速度に加え予備針の付いている物は、エンジン回転数 (rev) も要素に含め記録する機種もあり、「レボタコグラフ」と呼ばれる。他には、保冷車では荷室温度、特殊車両の作動油圧なども記録できる機種がある。

効用・問題点[編集]

運行管理者は速度や運転時間を分析することで、速度超過や無理な長時間運転の予防のための適切な指導が行えるようになったといえる。運転者としても、エンジン回転数の記録が残る事から、自分の運転を客観的に捉えるための参考になる。また、自動車の運転に関しては個々の運転手ごとにいわゆる「運転癖」(ハンドルの切り方・アクセルやブレーキの踏み具合における特徴)が少なからず存在するものであるが、違う人間が運転した場合はその癖の違いがグラフ波形パターンの違いとなって残ることから、同一の運転手がその自動車を連続して運転していたかどうかのおよその推測が付く。労務管理面では作業報告書と併せて所定の休憩時間を確保しているか、車両を出勤点呼後に出発し退勤点呼前に入庫したかを確認できる。

一方で、それを過剰な束縛と感じる運転者も少なくない。従来型装置では記録部へ容易に手が入れられたことから、以前は例えば鉄針に輪ゴムをかけ動作を抑制する・下方に曲げるなどして、走行速度を実際より低く報告するといった改竄が常態化し、運行管理上の問題でもあった。

また、タコグラフを搭載した車両の運転手が、加古川バイパスに設置されたオービスによる取締りの際に速度超過で検挙・起訴されたが、タコグラフに記録された速度との誤差の大きさによるオービスの異常を指摘され、結局無罪になったという判例(大阪高裁 平3(う)第230号)がある。

デジタル化[編集]

近年では各要素を数値化し電気的に記録するデジタルタコグラフが実用化され、日本では1998年より運輸省(当時)の型式認定対象となっている。記録紙に代わりメモリーカードなどが媒体に使われ、データ出力はパソコンや専用カードリーダーで行うため、運転者によるデータの改ざんは従来式に比べ困難といえる。ユーザーの要求に応じ記録される要素は様々で、基本的な速度・時間・距離・エンジン回転数の変化のほか、急加速・急減速検知、ドアの開閉、GPSによる位置情報、実車/空車での走行区間、ハンディターミナルの併用で荷物の積空差や重量・数量、燃料の給油・充填量、タクシーメーターと一体化した機種ではタクシーの営業収入に至るまで記録可能な機種も存在する。またETCと連動して一般道/高速道の速度やエンジン回転数の制限値の切り替えを行うもの、設定された速度やエンジン回転数、アイドリング時間を超過したり急加速・急減速を感知したりすると音声や文字で警告を発するものもある。専用のアプリケーションソフトを活用することで運転日報の作成が簡素化され、データの管理や詳細な運行状況の解析、運転者への指導が容易になったほか、通信端末を付加することで運行記録をデータセンターに集約してメモリーカードの携行・装着を不要としたり、車両・事業所間でデータの双方向通信を可能(テレマティクス)とするなど、より最適な配送ルートの検討や臨機的な配車など運行コストの一層の削減を期待する向きもある。更にイベントデータレコーダー(ドライブレコーダー)が実用化されると、デジタルタコグラフと連携させて運転記録と車内外の映像や音声を同時に記録できる機種も登場している。

主要メーカー[編集]

脚注[編集]

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