シンクロトロン

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シンクロトロンの図。中央にある直線の末端にあるビーム源から発生した粒子をまず小さい円で加速し、その後大きい円に導いてさらに加速し、輪から接線方向に伸びた装置で観測を行う。このシンクロトロンでは粒子を時計回りに加速する。

シンクロトロンとは、円形加速器の一種。粒子の加速にあわせて、磁場と加速電場周波数をコントロールする事によって、加速粒子の軌道半径を一定に保ちながら加速をおこなう。

特徴[編集]

2011年現在、もっとも高いエネルギーまで粒子を加速できるシンクロトロンは、CERN大型ハドロン衝突型加速器(LHC)であり、陽子を7TeVまで加速する事ができる。

一般にシンクロトロンのみで粒子を加速する事はなく、前段の加速器によって適当なエネルギーまで加速された粒子を入射した上で、さらに高いエネルギーへと加速するような形態で運用される。前段加速器としては、線型加速器サイクロトロン、小型のシンクロトロンなどが用いられる。

加速粒子の比電荷によって最適な設計は異なり、特に電子シンクロトロンと陽子重イオンシンクロトロンの間には大きな違いがある。よって一つの加速器で両方の用途に使用することは、加速エネルギーが大きくなるほど困難である。特にエネルギーフロンティア探索に用いられるような大規模なシンクロトロンでは、どちらか一方の専用設計とすることが通例である。

電子の場合、比較的小さな磁場でも容易に軌道を曲げる事ができるので、用いる電磁石(ベンディングマグネット)は小規模のもので間に合う一方、比較的低いエネルギーでも速度が速く、シンクロトロン放射によるエネルギー損失が大きいため常に大きな力で加速しなければ電子のエネルギーを保つ事が出来ない。一方、陽子や重イオンを加速する場合、シンクロトロン放射の影響が比較的小さく、比較的小さな加速でも粒子のエネルギーを維持できるが、粒子の軌道を曲げるためには大きな磁場を必要とし、大掛かりな超伝導電磁石などを使用する必要がある。

原理[編集]

主な用途[編集]

高エネルギー衝突実験[編集]

シンクロトロンは従来の線型加速器やサイクロトロンでは実現が困難な高エネルギーの粒子ビームを実現できる事から、素粒子実験等の高エネルギー物理学実験で広く用いられてきた。2007年現在で稼動している高エネルギー衝突実験用加速器はすべてシンクロトロンである。運転を終了したものも含め、代表的な高エネルギー実験用加速器としてはCERNのLEPおよびLHC、米国フェルミ研究所テバトロン、米国ブルックヘブン国立研究所RHIC高エネルギー加速器研究機構トリスタン/Bファクトリーなど。

ただし、電子シンクロトロンに関してはシンクロトロン放射が大きいため、より高エネルギーの加速器を設計する事が難しく、次世代の高エネルギー電子コライダーとして、大型の線型加速器を建設する事となった。

放射光[編集]

電子シンクロトロンに伴う大きなシンクロトロン放射を積極的に利用することができる。高強度で強い指向性を持つ均一な白色光を特徴とし、この光を放射光とも呼ぶ。日本国内における代表的な施設に、兵庫県にあるSPring-8、茨城県のフォトンファクトリーが挙げられる。

医療用陽子・重粒子線源[編集]

悪性腫瘍放射線療法に用いる放射線として、陽子やさらに重い重粒子を用いる方法がある。このための陽子線、重粒子線を供給するための加速器としてシンクロトロンが用いられている。日本国内で代表的な施設としては、放射線医学総合研究所HIMACなど。

粒子ビームの蓄積[編集]

シンクロトロンは加速粒子にエネルギーを供給し続けることで、一定の円軌道に沿うように周回させる事ができることから、蓄積リング、またはストレージリング (Storage Ring) とも呼ばれている。上記の放射光施設の場合で言えば加速器自体は電子ストレージリングである。

歴史[編集]

1945年にエドウィン・マクミランVladimir Vekslerによって独立に発明された。

主なシンクロトロン[編集]

装置名 設置機関および国 エネルギー (GeV) 円周 (m) 供用開始
LHC 欧州原子核研究機構スイス 7000 26659 2008
テバトロン フェルミ国立加速器研究所米国 1000 6300 1983
U-70 シンクロトロン 高エネルギー物理研究機構、ロシア 70 1967
強集束シンクロトロン(AGS) ブルックヘブン国立研究所 、米国 33 800 1960
陽子シンクロトン(PS) 欧州原子核研究機構、スイス 28 628.3 1959
KEKB 高エネルギー加速器研究機構日本 12

関連項目[編集]

参考文献[編集]