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「クロタチカマス」の版間の差分

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'''クロタチカマス''' (黒太刀魳、黒太刀梭子魚、黒太刀梭魚、黒太刀魣、[[学名]]: {{snamei|Gempylus serpens}})は、[[クロタチカマス科]]クロタチカマス属の[[魚類]]。'''クロタチカマス属'''は単型。世界中の[[熱帯]]および[[亜熱帯]]海域に分布する<ref name="fishbase">{{FishBase|genus=Gempylus |species=serpens |month=January |year=2024}}</ref>。[[大西洋]]と[[インド太平洋]]では[[椎骨]]数と背鰭棘数に違いがある<ref name="nakamura and parin">{{cite book |author1=Nakamura, I. |author2=Parin, N.V. |name-list-style=amp |title=FAO Species Catalogue Vol. 15: Snake Mackerels and Cutlassfishes of the World |publisher=Food and Agricultural Organization of the United Nations |year=1993 |place=Rome |isbn=92-5-103124-X}}</ref>。和名の「黒太刀」は、体色が黒っぽく、[[タチウオ]](太刀魚)に似ていることに由来する。
== 概要 ==

南日本、世界中の温・熱帯域に分布する体長1m以上に成長する魚食性の魚で、一般に[[大陸斜面]]の中層に生息している。昼間は深海に棲み、夜間になると捕食のために海面近くまで浮上してくる。体は著しく延長し、強く側扁しており、吻端はとがり、両顎には、鋭い歯がある。なお、クロタチカマスの名の由来となった「黒太刀」とは、体色が黒っぽく、[[タチウオ]](太刀魚)に似ていることである。
== 形態 ==
体は細長く、側扁する。頭部は長く尖り、口は大きく下顎が突き出ている。顎には鋭い歯がある。上顎の前部の歯は鋭く、[[牙]]になっている。胸鰭は12 - 15条から成る。腹鰭は小さく、胸鰭の下にあり、1 棘3 - 4軟条から成る。背鰭は二基あり、第一背鰭は非常に長く棘条から成り、すぐ後ろの第二背鰭は 1棘11 - 14軟条から成る。臀鰭は第二背鰭の反対側にあり、2[[魚類用語#遊離棘|遊離棘]]とそれに続く1棘10 - 12軟条から成る。背鰭と臀鰭の後には6 -7基の[[魚類用語#小離鰭|小離鰭]]がある。[[側線]]は2本あり、上側の側線は第一背鰭後方まで、下側は尾柄まで伸びる。[[鱗]]はほとんど無い。体色は光沢のある茶色で、鰭は色が暗い。体長1 mまで成長する<ref name="peterson et al">{{cite book|title=A Field Guide to Pacific Coast Fishes: North America |author=Peterson, R.T. |author2=Eschmeyer, W.N. |author3=Herald, E.S. |name-list-style=amp |publisher=Houghton Mifflin Harcourt |year=1999 |isbn=0-618-00212-X}}</ref><ref name="mceachran and fechhelm">{{cite book |title=Fishes of the Gulf of Mexico: Scorpaeniformes to Tetraodontiformes |author1=McEachran, J.D. |author2=Fechhelm, J.D. |name-list-style=amp |publisher=University of Texas Press |year=2005 |isbn=0-292-70634-0}}</ref>。

== 生態 ==
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[[大陸斜面]]の中層に生息している。成魚は垂直移動を行い、日中は[[深海]]で過ごし、夜になると餌を求めて浅場に移動する。幼魚は日中表層で過ごし、夜深海に移動する<ref name="burton">{{cite book |title=International Wildlife Encyclopedia |author=Burton, R. |publisher=Marshall Cavendish |year=2002 |isbn=0-7614-7266-5}}</ref>。[[イカ]]、[[甲殻類]]、[[ハダカイワシ]]、[[トビウオ]]、[[サンマ]]、[[サバ]]などの硬骨魚を捕食する<ref name="mceachran and fechhelm"/>。[[マグロ]]や[[カジキ]]によって捕食される。全長25 cmの[[オニボウズギス]]に全長80 cmの本種が捕食された記録がある<ref name="peterson et al" />。[[卵生]]で、雌は300,000 - 1,000,000個の卵を産む<ref name="mceachran and fechhelm"/>。産卵は一年中行われる。雄は体長43 cm、雌は体長50 cmで[[性成熟]]する<ref name="mceachran and fechhelm"/>。成熟し深海に移動すると、目の[[錐体細胞]]が失われ、[[桿体細胞]]が優先される<ref>{{cite book|title=Sensory Processing in Aquatic Environments |author1=Collin, S.P. |author2=Marshall, N.J. |name-list-style=amp |publisher=Springer |year=2003 |isbn=0-387-95527-5}}</ref>。


== 食材・調理法 ==
== 食材・調理法 ==
日本では、ほとんど食べられていないが、[[神奈川県]][[小田原市]]では、'''ナガスミヤキ'''とか、'''ナガッポ'''、'''ナガズミ'''と呼ばれ、珍重され食用とされている。中秋から初冬にかけては、このクロタチカマス等を狙った専門の夜釣り、スミヤキ漁が行われている。塩焼きの他、[[なめろう]]などで食される。皮と身の間や一部身の中に骨があるため食べにくいが、背側から身を開き、身から皮に向って身をほぐして食べると比較的食べやすくなる。この食文化は、一説には、相模国早川荘を所有した[[土肥遠平|小早川遠平]]が食して、奨励したのが始まりとされる。
マグロを対象とした延縄漁業で混獲されており、商業的にはあまり重要ではない。冷凍またはすり身に加工されて販売される<ref name="fishbase"/><ref name="nakamura and parin"/>。日本では、ほとんど食べられていないが、[[神奈川県]][[小田原市]]では、'''ナガスミヤキ'''とか、'''ナガッポ'''、'''ナガズミ'''と呼ばれ、珍重され食用とされている。中秋から初冬にかけては、このクロタチカマス等を狙った専門の夜釣り、スミヤキ漁が行われている。塩焼きの他、[[なめろう]]などで食される。皮と身の間や一部身の中に骨があるため食べにくいが、背側から身を開き、身から皮に向って身をほぐして食べると比較的食べやすくなる。この食文化は、一説には、相模国早川荘を所有した[[土肥遠平|小早川遠平]]が食して、奨励したのが始まりとされる。


近年、焼いたクロタチカマスに小田原市産の[[レモン]]を絞って食する「片浦食い」が広がっている。
近年、焼いたクロタチカマスに小田原市産の[[レモン]]を絞って食する「片浦食い」が広がっている。

== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[小田原市]]
* [[海水魚]]
* [[深海魚]]
* [[クロシビカマス]](スミヤキ)
* [[クロシビカマス]](スミヤキ)


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2024年1月25日 (木) 12:59時点における版

クロタチカマス
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : サバ亜目 Scombroidei
: クロタチカマス科 Gempylidae
: クロタチカマス属 Gempylus
: クロタチカマス G. serpens
学名
Gempylus serpens
Cuvier1829
和名
クロタチカマス (黒太刀梭子魚)
英名
Snake mackerel

クロタチカマス (黒太刀魳、黒太刀梭子魚、黒太刀梭魚、黒太刀魣、学名: Gempylus serpens)は、クロタチカマス科クロタチカマス属の魚類クロタチカマス属は単型。世界中の熱帯および亜熱帯海域に分布する[2]大西洋インド太平洋では椎骨数と背鰭棘数に違いがある[3]。和名の「黒太刀」は、体色が黒っぽく、タチウオ(太刀魚)に似ていることに由来する。

形態

体は細長く、側扁する。頭部は長く尖り、口は大きく下顎が突き出ている。顎には鋭い歯がある。上顎の前部の歯は鋭く、になっている。胸鰭は12 - 15条から成る。腹鰭は小さく、胸鰭の下にあり、1 棘3 - 4軟条から成る。背鰭は二基あり、第一背鰭は非常に長く棘条から成り、すぐ後ろの第二背鰭は 1棘11 - 14軟条から成る。臀鰭は第二背鰭の反対側にあり、2遊離棘とそれに続く1棘10 - 12軟条から成る。背鰭と臀鰭の後には6 -7基の小離鰭がある。側線は2本あり、上側の側線は第一背鰭後方まで、下側は尾柄まで伸びる。はほとんど無い。体色は光沢のある茶色で、鰭は色が暗い。体長1 mまで成長する[4][5]

生態

上顎には鋭い牙がある。

大陸斜面の中層に生息している。成魚は垂直移動を行い、日中は深海で過ごし、夜になると餌を求めて浅場に移動する。幼魚は日中表層で過ごし、夜深海に移動する[6]イカ甲殻類ハダカイワシトビウオサンマサバなどの硬骨魚を捕食する[5]マグロカジキによって捕食される。全長25 cmのオニボウズギスに全長80 cmの本種が捕食された記録がある[4]卵生で、雌は300,000 - 1,000,000個の卵を産む[5]。産卵は一年中行われる。雄は体長43 cm、雌は体長50 cmで性成熟する[5]。成熟し深海に移動すると、目の錐体細胞が失われ、桿体細胞が優先される[7]

食材・調理法

マグロを対象とした延縄漁業で混獲されており、商業的にはあまり重要ではない。冷凍またはすり身に加工されて販売される[2][3]。日本では、ほとんど食べられていないが、神奈川県小田原市では、ナガスミヤキとか、ナガッポナガズミと呼ばれ、珍重され食用とされている。中秋から初冬にかけては、このクロタチカマス等を狙った専門の夜釣り、スミヤキ漁が行われている。塩焼きの他、なめろうなどで食される。皮と身の間や一部身の中に骨があるため食べにくいが、背側から身を開き、身から皮に向って身をほぐして食べると比較的食べやすくなる。この食文化は、一説には、相模国早川荘を所有した小早川遠平が食して、奨励したのが始まりとされる。

近年、焼いたクロタチカマスに小田原市産のレモンを絞って食する「片浦食い」が広がっている。

脚注

  1. ^ Collette, B.; Smith-Vaniz, W.F.; Williams, J.T.; Pina Amargos, F.; Curtis, M.; Grijalba Bendeck, L. (2015). Gempylus serpens. IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T16509126A16510882. doi:10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T16509126A16510882.en. https://www.iucnredlist.org/species/16509126/16510882 2024年1月25日閲覧。. 
  2. ^ a b Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2024). "Gempylus serpens" in FishBase. January 2024 version.
  3. ^ a b Nakamura, I. & Parin, N.V. (1993). FAO Species Catalogue Vol. 15: Snake Mackerels and Cutlassfishes of the World. Rome: Food and Agricultural Organization of the United Nations. ISBN 92-5-103124-X 
  4. ^ a b Peterson, R.T.; Eschmeyer, W.N. & Herald, E.S. (1999). A Field Guide to Pacific Coast Fishes: North America. Houghton Mifflin Harcourt. ISBN 0-618-00212-X 
  5. ^ a b c d McEachran, J.D. & Fechhelm, J.D. (2005). Fishes of the Gulf of Mexico: Scorpaeniformes to Tetraodontiformes. University of Texas Press. ISBN 0-292-70634-0 
  6. ^ Burton, R. (2002). International Wildlife Encyclopedia. Marshall Cavendish. ISBN 0-7614-7266-5 
  7. ^ Collin, S.P. & Marshall, N.J. (2003). Sensory Processing in Aquatic Environments. Springer. ISBN 0-387-95527-5 

外部リンク

関連項目