「被害者非難」の版間の差分

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== 歴史 ==
== 歴史 ==
1971年に、心理学者の[[:en:William Ryan (psychologist)|William Ryan]]が『 blaming the victim 』を出版し、被害者非難についての啓蒙を行った<ref>{{Cite book|isbn = 9780394417264|title = Blaming the Victim|last1 = Ryan|first1 = William|year = 1971|url-access = registration|url = https://archive.org/details/blamingvictim00ryan_0}}</ref>。
1971年に、心理学者の[[:en:William Ryan (psychologist)|William Ryan]]が『 blaming the victim 』を出版し、被害者非難についての啓蒙を行った<ref>{{Cite book|isbn = 9780394417264|title = Blaming the Victim|last1 = Ryan|first1 = William|year = 1971|url-access = registration|url = https://archive.org/details/blamingvictim00ryan_0}}</ref>。

;理想的な被害者
1980年代、ノルウェー人犯罪学者 Nils Christie は理想的な被害者の認識を広めた。帰宅途中に引ったくりにあった老婆は理想的な被害者である。対して、酒場で知り合いに刺された男性は理想的ではない被害者で、事情を知らない人間からは酒場も相手も避けれたし、自己防衛も出来たはずであるとして非難される<ref>{{Cite web |url=http://dx.doi.org/10.1007/978-1-349-08305-3_2 |title=The Ideal Victim |access-date=2022-05-21 |last=Christie |first=Nils |date=1986 |publisher=Palgrave Macmillan UK |pages=17–30}}</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2022年5月21日 (土) 02:25時点における版

被害者非難(ひがいしゃひなん、英語: victim blaming)は、犯罪または不正行為によって生じた被害に関して、その責任の一部または全部を被害者に負わせることである[1]犠牲者非難(ぎせいしゃひなん)とも呼ばれる[2]

当然のことながら、こういった行為は名誉毀損罪侮辱罪などの法的問題となる[3]

被害者学の研究では、被害者に責任があるとする認識を軽減させようと努めている[4]

原因

公正世界仮説
被害者側が悪いことを行ったから、罰が当たったという推測によって、自分は秩序のある世界に生きている安全な存在であるという信念維持、誤解を自己暗示させる行為である(被害者に非難を行っている時点で誤解であることが理解できていないのである)。
被害者が自分と属性が似通っている時や原因が特定できない時に、自分は安全であるという暗示を行うために、被害者の人格を攻撃したり、非難が行われる傾向がある[5]
公正世界仮説を信奉している人間は、被害の埋め合わせが行われていない場合、被害者が長期的な苦悩を強いられたり、被害の回復が望めないような場合ほど、被害者への攻撃と周りを巻き込み被害を大きくする傾向がみられる[5]。それによって、被害者はより苦悩し悪循環に陥る。
根本的な帰属の誤り
状況を見ずに、個人の気質などを重視する帰属バイアス。結果や状況などの事実を無視して、人種差別や女性差別などのステレオタイプに置き換えられる。被害者と加害者が知り合いである場合には、強盗の被害者よりも強姦の被害者のほうが非難されやすいという傾向がある[6]
言い訳、自己正当化
加害者側の否認行動の結果
いじめ
弱いものいじめ
尋問や報道の結果
被害者側への尋問や報道によるセカンドレイプ[7]

歴史

1971年に、心理学者のWilliam Ryanが『 blaming the victim 』を出版し、被害者非難についての啓蒙を行った[8]

理想的な被害者

1980年代、ノルウェー人犯罪学者 Nils Christie は理想的な被害者の認識を広めた。帰宅途中に引ったくりにあった老婆は理想的な被害者である。対して、酒場で知り合いに刺された男性は理想的ではない被害者で、事情を知らない人間からは酒場も相手も避けれたし、自己防衛も出来たはずであるとして非難される[9]

脚注

  1. ^ Victim Blaming”. Canadian Resource Centre for Victims of Crime (2009年). 2018年8月31日閲覧。
  2. ^ Mami (2017年3月4日). “セクハラを受けて自分を責めた話”. 幻冬舎plus. 2019年1月26日閲覧。
  3. ^ ネットではなぜ激しい争いが起こるか(心理学総合案内こころの散歩道)”. www.n-seiryo.ac.jp. 新潟青陵大学、著:碓井真史. 2022年5月21日閲覧。
  4. ^ Fox, K. A.; Cook, C. L. (2011). “Is Knowledge Power? The Effects of a Victimology Course on Victim Blaming”. Journal of Interpersonal Violence 26: 3407–3427. doi:10.1177/0886260511403752. 
  5. ^ a b Murayama, Aya (2015年). “Derogating victims and dehumanizing perpetrators: Functions of two types of beliefs in a just world(被害者非難と加害者の非人間化)” (英語). The Japanese journal of psychology. pp. 1–9. doi:10.4992/jjpsy.86.13069. 2022年5月21日閲覧。
  6. ^ Bieneck, S.; Krahe, B. (2010). “Blaming the Victim and Exonerating the Perpetrator in Cases of Rape and Robbery: Is There a Double Standard?”. Journal of Interpersonal Violence 26: 1785–1797. doi:10.1177/0886260510372945. 
  7. ^ Kabas, Marisa. “What is 'second rape' and what can we do about it?” (英語). Splinter. 2022年5月21日閲覧。
  8. ^ Ryan, William (1971). Blaming the Victim. ISBN 9780394417264. https://archive.org/details/blamingvictim00ryan_0 
  9. ^ Christie, Nils (1986年). “The Ideal Victim”. Palgrave Macmillan UK. pp. 17–30. 2022年5月21日閲覧。

関連文献

関連項目