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「ヤマブシタケ」の版間の差分

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==分布==
==分布==
日本・中国・ヨーロッパ・北アフリカ・北アメリカをはじめ、広く北半球温帯以北に分布しており、食材としても多くの国で人気がある<ref>介護の123 ヤマブシタケ(山伏茸)の効果・効能 https://kaigo123.jp/yamabushitake/</ref>。
日本・中国・ヨーロッパ・北アフリカ・北アメリカをはじめ、広く北半球温帯以北に分布しており、食材としても多くの国で人気がある<ref>{{Cite book|和書|author=今関六也 |author2=本郷次雄 |title=原色日本新菌類図鑑 |publisher=保育社 |date=1987 |series=保育社の原色図鑑 |issue=75-76 |NCID=BN01127636 |ISBN=4586300760 |id={{全国書誌番号|89046304}} |pages=108-109}}</ref>。


==類似種==
==類似種==
子実体の上半部の上面からも短い針状突起を生じるものを別種として扱い、クマガシラ（''Hericium caput-medusae'' (Fr.) Pers.）と呼ぶ研究者もあるが、ヤマブシタケの一変異形とする意見が強い。また、ヤマブシタケに酷似するが全体に橙黄色を呈するものをハナヤマブシタケ（''H. botrytoides'' S. Ito & Otani）と呼ぶが、これは日本国内で唯一回だけ採集された稀産種であり、[[タイプ]]標本の所在も不明であるために、形態・生態についての詳細は明らかにされていない。
{{要出典範囲|子実体の上半部の上面からも短い針状突起を生じるものを別種として扱い、クマガシラ（''Hericium caput-medusae'' (Fr.) Pers.）と呼ぶ研究者もあるが、ヤマブシタケの一変異形とする意見が強い。また、ヤマブシタケに酷似するが全体に橙黄色を呈するものをハナヤマブシタケ（''H. botrytoides'' S. Ito & Otani）と呼ぶが、これは日本国内で唯一回だけ採集された稀産種であり、[[タイプ]]標本の所在も不明であるために、形態・生態についての詳細は明らかにされていない|date=2022年2月}}。<!--文献（* {{Cite journal|和書|author=小畠靖 |title=日本産サンゴハリタケ属菌3種の生物学的および培養特性 |journal=奈良県森林技術センター研究報告 |issn=13459864 |publisher=奈良県森林技術センター |year=2008 |month=mar |issue=37 |pages=1-12 |naid=40016109234 |url=https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010835280}}）によれば、クマガシラは、サンゴハリタケモドキの別名であり当該種とは異なる-->


==名称==
==名称==
日本名の由来は、子実体の外観が、[[山伏]]の装束の胸の部分についている[[梵天 (曖昧さ回避)|梵天]]（丸い飾り）に似ているためといわれる。
日本名の由来は、子実体の外観が、[[山伏]]の装束の胸の部分についている[[梵天 (曖昧さ回避)|梵天]]（丸い飾り）に似ているためといわれる。


地方名としては「ウサギタケ」や「ハリセンボン」とも呼ばれる。また、鹿児島県の一部では「ジョウコタケ（上戸茸）」の名で呼ばれるが、乾燥したヤマブシタケが水分をよく吸うことに由来しているという<ref>{{Cite book|和書|author=今関六也 |author2=本郷次雄 |title=きのこ |date=1973 |publisher=保育社 |ncid=BN08313752 |series=カラー自然ガイド |isbn=978-4586400089}}</ref>。
地方名としては「ウサギタケ」や「ハリセンボン」とも呼ばれる。また、鹿児島県の一部では「ジョウコタケ（上戸茸）」の名で呼ばれるが、乾燥したヤマブシタケが水分をよく吸うことに由来しているという<ref>{{Cite book|和書|author=今関六也 |author2=本郷次雄 |title=きのこ |date=1973 |publisher=保育社 |ncid=BN08313752 |series=カラー自然ガイド 8|isbn=978-4586400089}}</ref>。


英語圏では[[ライオン]]の[[鬣]]キノコ（[[w:Lion's Mane Mushroom|Lion's Mane Mushroom]]）、アゴヒゲハリタケ（Bearded Tooth Mushroom あるいは Bearded Tooth Fungus）、ハリネズミタケ（Hedgehog Mushroom）、アゴヒゲハリネズミタケ（Bearded Hedgehog Mushroom）、 ポンポンタケ（pom pom mushroom）などさまざまな名前を持つ。
英語圏では[[ライオン]]の[[鬣]]キノコ（[[w:Lion's Mane Mushroom|Lion's Mane Mushroom]]）、アゴヒゲハリタケ（Bearded Tooth Mushroom あるいは Bearded Tooth Fungus）、ハリネズミタケ（Hedgehog Mushroom）、アゴヒゲハリネズミタケ（Bearded Hedgehog Mushroom）、 ポンポンタケ（pom pom mushroom）などさまざまな名前を持つ。
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== 利用 ==
== 利用 ==
天然のほか[[原木栽培]]或いは[[菌床栽培]]による生産品が流通し、生鮮品あるいは乾燥品が入手できるようになった。栽培に用いる培地の違いや種菌の系統により、生産された子実体の含有成分には差異が生じる<ref>{{Cite journal|和書|author=辻井弘忠 |author2=末成美奈子 |author3=増野和彦 |title=栽培に用いる系統および培地組成がヤマブシタケ(Hericium erinaceum)子実体収量と子実体熱水抽出エキスの細胞毒性活性に及ぼす影響 |date=2003-03 |publisher=信州大学農学部 |journal=信州大学農学部AFC報告 |volume=0 |number=1 |naid=120001087176 |pages=73-79 |ref=harv}}</ref>。
天然のほか[[原木栽培]]或いは[[菌床栽培]]による生産品が流通し、生鮮品あるいは乾燥品が入手できるようになった。栽培に用いる培地の違いや種菌の系統により、生産された子実体の含有成分には差異が生じる<ref>{{Cite journal|和書|author=辻井弘忠 |author2=末成美奈子 |author3=増野和彦 |title=栽培に用いる系統および培地組成がヤマブシタケ(''Hericium erinaceum'')子実体収量と子実体熱水抽出エキスの細胞毒性活性に及ぼす影響 |date=2003-03 |publisher=信州大学農学部 |journal=信州大学農学部AFC報告 |volume=1 |naid=120001087176 |pages=73-79 |url=https://hdl.handle.net/10091/1742|ref=harv}}</ref>。
神経成長因子の生産を促進させる効果を持つ物質、ヘリセノン（hericenone）類、エリナシン（erinacine）類を含有していることから、抗認知症効果や抗腫瘍活性が期待されている。
神経成長因子の生産を促進させる効果を持つ物質、ヘリセノン(hericenone)類縁体<ref>{{Cite journal|和書|author=上田恵子, 辻森めぐみ, 小谷真也, 千葉亜希子, 増野和彦, 久保昌一, 長井薫, 関谷敦, 河岸洋和 |title=P-15 ヤマブシタケ(''Hericium erinaceum'')から得られた小胞体ストレスによる細胞死阻害物質(ポスター発表の部) |journal=天然有機化合物討論会講演要旨集 |publisher=天然有機化合物討論会実行委員会 |year=2008 |volume=50 |pages=309-314 |naid=110007066744 |doi=10.24496/tennenyuki.50.0_309 |url=https://doi.org/10.24496/tennenyuki.50.0_309}}</ref>、エリナシン(erinacine)類を含有していることから、抗認知症効果や抗腫瘍活性が期待されている。
[[image:Hericium erinaceum01.jpg|250px|thumb|right|菌床栽培品]]
[[image:Hericium erinaceum01.jpg|250px|thumb|right|菌床栽培品]]


=== 食用として ===
=== 食用として ===
若い子実体は食用に供することができる。食感は海鮮類に似ているが、特別な香りや味はないため、スープなどの汁物として味を含ませて用いることが多い。中国では四大山海（他は[[フカヒレ]]、[[ナマコ]]の[[いりこ]]、[[熊]]の掌)の珍味の一つとされ、宮廷料理用の食材として珍重されたという。
若い子実体は食用に供することができる。食感は海鮮類に似ているが、特別な香りや味はないため、スープなどの汁物として味を含ませて用いることが多い。中国では四大山海（他は[[フカヒレ]]、[[ナマコ]]の[[いりこ]]、[[熊]]の掌)の珍味の一つとされ、宮廷料理用の食材として珍重されたという。
非常に油を吸いやすいため、油炒めの際は注意が必要。


=== 薬用として ===
=== 薬用として ===
乾燥したものは生薬としても利用され、“猴頭”の名で呼ばれる。αグルカン、βグルカンなどの[[多糖類]]が含まれている<ref>{{Cite journal|和書|author=大櫛祐一 |author2=坂本正弘 |author3=東順一 |title=ヤマブジタケ子実体に含まれる β-Glucan の抽出とその構造 |date=2008-10-20 |publisher=日本応用糖質科学会 |journal=Journal of applied glycoscience |volume=55 |number=4 |naid=10024971657 |pages=231-234 |doi=10.5458/jag.55.231|ref=harv}}</ref>。
乾燥したものは生薬としても利用され、“猴頭”の名で呼ばれる。αグルカン、βグルカンなどの[[多糖類]]が含まれている<ref>{{Cite journal|和書|author=大櫛祐一 |author2=坂本正弘 |author3=東順一 |title=ヤマブジタケ子実体に含まれる β-Glucan の抽出とその構造 |url=https://doi.org/10.5458/jag.55.231 |date=2008-10-20 |publisher=日本応用糖質科学会 |journal=Journal of applied glycoscience |volume=55 |number=4 |naid=10024971657 |pages=231-234 |doi=10.5458/jag.55.231|ref=harv}}</ref>。


;有効であるとする研究
;有効であるとする研究
臨床上で有効であるとする研究結果は、いくつか公表されてはいるが、有効成分の特定・作用機序の解明・他の医薬品との相互作用・人体に対する安全性などに関する研究はいまだ不十分である。また、子実体からの成分の抽出の際に、マイクロ波による加熱を行うと、有効とされる成分が破壊されてしまう可能性があり<ref>{{Cite journal|和書|author=大櫛祐一 |author2=坂本正弘 |author3=東順一 |title=ヤマブシタケ子実体に含まれる多糖類の抽出におけるマイクロ波加熱の影響 |date=2009-07-20 |publisher=日本応用糖質科学会 |journal=Journal of applied glycoscience |volume=56 |number=3 |naid=10025409223 |pages=153-157 |ref=harv}}</ref>、成分の抽出方法の有効性も十分に検討がされる必要がある。
臨床上で有効であるとする研究結果は、いくつか公表されてはいるが、有効成分の特定・作用機序の解明・他の医薬品との相互作用・人体に対する安全性などに関する研究はいまだ不十分である。また、子実体からの成分の抽出の際に、マイクロ波による加熱を行うと、有効とされる成分が破壊されてしまう可能性があり<ref>{{Cite journal|和書|author=大櫛祐一 |author2=坂本正弘 |author3=東順一 |title=ヤマブシタケ子実体に含まれる多糖類の抽出におけるマイクロ波加熱の影響 |date=2009-07-20 |publisher=日本応用糖質科学会 |journal=Journal of applied glycoscience |volume=56 |number=3 |pages=153-157 |naid=10025409223 |doi=10.5458/jag.56.153 |url=https://doi.org/10.5458/jag.56.153 |ref=harv}}</ref>、成分の抽出方法の有効性も十分に検討がされる必要がある。


:* ヤマブシタケに含まれるD-スレイトール（D-threitol）、D-アラビニトール（D-arabinitol）、[[パルミチン酸]]などの[[酸化防止剤|抗酸化物質]]は、血液中の脂質量を調整するとともに、血糖値を低減させる効果がある可能性がある<ref>[http://www.ingentaconnect.com/content/jws/jsfa/2005/00000085/00000004/art00017 Hypoglycemic effect of extract of Hericium erinaceus]</ref> 。
:* ヤマブシタケに含まれるD-スレイトール（D-threitol）、D-アラビニトール（D-arabinitol）、[[パルミチン酸]]などの[[酸化防止剤|抗酸化物質]]は、血液中の脂質量を調整するとともに、血糖値を低減させる効果がある可能性がある<ref>[http://www.ingentaconnect.com/content/jws/jsfa/2005/00000085/00000004/art00017 Hypoglycemic effect of extract of Hericium erinaceus]</ref> 。
:*女性の更年期障害の症状を改善する効果があるが、成分は未解明である<ref>{{Cite journal|last=Nagano|first=Mayumi|last2=Shimizu|first2=Kuniyoshi|last3=Kondo|first3=Ryuichiro|last4=Hayashi|first4=Chickako|last5=Sato|first5=Daigo|last6=Kitagawa|first6=Katsuyuki|last7=Ohnuki|first7=Koichiro|date=2010|title=Reduction of depression and anxiety by 4 weeks Hericium erinaceus intake|url=http://joi.jlc.jst.go.jp/JST.JSTAGE/biomedres/31.231?from=CrossRef|journal=Biomedical Research|volume=31|issue=4|pages=231–237|language=en|doi=10.2220/biomedres.31.231|issn=1880-313X}}
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Nagano M, Shimizu K, Kondo R, Hayashi C, Sato D, Kitagawa K, Ohnuki K. Reduction of depression and anxiety by 4 weeks Hericium erinaceus intake. Biomed Res. 2010 Aug;31(4):231-7. {{doi| 10.2220/biomedres.31.231}}. {{PMID| 20834180}}.</ref>。
:*マウスによる動物実験で抗腫瘍効果<ref>{{Cite journal|和書|author=鈴木美季子 |author2=柴沼真友美 |author3=香取輝美 |author4=清水通隆 |author5=木村修一 |title=EL4 腫瘍細胞に対するヤマブシタケ・マイタケの増殖抑制効果について |date=2010 |publisher=日本補完代替医療学会 |journal=日本補完代替医療学会誌 |volume=7 |number=1 |naid=130000252238 |doi=10.1625/jcam.7.11 |pages=11-16 |ref=harv}}</ref>。
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* {{Cite journal|和書|author=高畠幸司 |author2=五十嵐圭日子 |author3=鮫島正浩 |title=ヤマブシタケ菌床栽培における廃菌床のリサイクル利用 |date=2008-11-25 |publisher=日本木材学会 |journal=木材学会誌 |volume=54 |number=6 |naid=10029787409 |pages=327-332 |doi=10.2488/jwrs.54.327 |ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|author=高畠幸司 |author2=五十嵐圭日子 |author3=鮫島正浩 |title=ヤマブシタケ菌床栽培における廃菌床のリサイクル利用 |date=2008-11-25 |publisher=日本木材学会 |journal=木材学会誌 |volume=54 |number=6 |naid=10029787409 |pages=327-332 |doi=10.2488/jwrs.54.327 |ref=harv}}
l. 54 (2008) , No. 6 p.327-332
* {{Cite journal|和書|author=河岸洋和 |title=キノコ由来の細胞機能調節物質 |date=1994-12-01 |publisher=社団法人日本農芸化学会 |journal=日本農藝化學會誌 |volume=68 |number=12 |naid=110002794646 |doi=10.1271/nogeikagaku1924.68.1671 |pages=1671-1677 |ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|author=河岸洋和 |title=キノコ由来の細胞機能調節物質 |date=1994-12-01 |publisher=社団法人日本農芸化学会 |journal=日本農藝化學會誌 |volume=68 |number=12 |naid=110002794646 |doi=10.1271/nogeikagaku1924.68.1671 |pages=1671-1677 |ref=harv}}
* [http://americanmushrooms.com/edibles2.htm AmericanMushrooms.com: Best Edible Wild Mushrooms]
* [http://americanmushrooms.com/edibles2.htm AmericanMushrooms.com: Best Edible Wild Mushrooms]

2022年2月17日 (木) 21:11時点における版

ヤマブシタケ
分類
界 : 菌界 Fungi
門 : 担子菌門 Basidiomycota
亜門 : 菌蕈亜門 Hymenomycotina
綱 : 真正担子菌綱 Homobasidiomycetes
科 : サンゴハリタケ科
属 : サンゴハリタケ属
種 : ヤマブシタケ H. erinaceus
学名
Hericium erinaceum (Bull.) Persoon
和名
ヤマブシタケ
英名
lion's mane mushroom

ヤマブシタケ（山伏茸、学名：Hericium erinaceus）は、サンゴハリタケ科サンゴハリタケ属に属する食用キノコの一種である。

形態

子実体はかさや柄を形成せず、ゆがんだ球塊状をなし、径も高さも8-25㎝程度になる。子実体の上半部は内部に大小の空隙を有する塊状、下半部は太く長い針状突起の集合体であり、全体がほぼ白色であるが次第にクリーム色を呈し、老熟すれば淡黄褐色を帯びるにいたる。個々の針状突起は長さ0.5~6㎝、基部における太さ1~7㎜程度、柔らかくもろい肉質で折れやすい。

胞子紋は白色を呈し、胞子は類球形で無色かつ薄壁、ほとんど平滑、内部にしばしば1個の油滴を含み、ヨウ素溶液で淡灰色～暗青灰色に染まる（アミロイド性）。担子器はこん棒状をなし、4個の胞子を生じる。担子器の間には、しばしばグレオシスチジア（粘嚢状体：顕微鏡下で輝いて見える、油滴状の内容物を含んだ薄壁菌糸）が混在している。菌糸の隔壁部にはしばしばかすがい連結を有する。

生態

夏の終わりから秋にかけ、クヌギ・クルミ・シイ・ミズナラなどの広葉樹の倒木や立ち枯れ木などの材上に生える。時に、生きた樹木の枝枯れ部などから発生することもある。材の白色腐朽を起こす木材腐朽菌の一種である。

分布

日本・中国・ヨーロッパ・北アフリカ・北アメリカをはじめ、広く北半球温帯以北に分布しており、食材としても多くの国で人気がある[1]。

類似種

子実体の上半部の上面からも短い針状突起を生じるものを別種として扱い、クマガシラ（Hericium caput-medusae (Fr.) Pers.）と呼ぶ研究者もあるが、ヤマブシタケの一変異形とする意見が強い。また、ヤマブシタケに酷似するが全体に橙黄色を呈するものをハナヤマブシタケ（H. botrytoides S. Ito & Otani）と呼ぶが、これは日本国内で唯一回だけ採集された稀産種であり、タイプ標本の所在も不明であるために、形態・生態についての詳細は明らかにされていない[要出典]。

名称

日本名の由来は、子実体の外観が、山伏の装束の胸の部分についている梵天（丸い飾り）に似ているためといわれる。

地方名としては「ウサギタケ」や「ハリセンボン」とも呼ばれる。また、鹿児島県の一部では「ジョウコタケ（上戸茸）」の名で呼ばれるが、乾燥したヤマブシタケが水分をよく吸うことに由来しているという[2]。

英語圏ではライオンの鬣キノコ（Lion's Mane Mushroom）、アゴヒゲハリタケ（Bearded Tooth Mushroom あるいは Bearded Tooth Fungus）、ハリネズミタケ（Hedgehog Mushroom）、アゴヒゲハリネズミタケ（Bearded Hedgehog Mushroom）、 ポンポンタケ（pom pom mushroom）などさまざまな名前を持つ。

中国では猴头菇（サルの頭キノコ）と呼ばれている。ベトナムではnấm đầu khỉと呼ばれる。

利用

天然のほか原木栽培或いは菌床栽培による生産品が流通し、生鮮品あるいは乾燥品が入手できるようになった。栽培に用いる培地の違いや種菌の系統により、生産された子実体の含有成分には差異が生じる[3]。 神経成長因子の生産を促進させる効果を持つ物質、ヘリセノン(hericenone)類縁体[4]、エリナシン(erinacine)類を含有していることから、抗認知症効果や抗腫瘍活性が期待されている。

菌床栽培品

食用として

若い子実体は食用に供することができる。食感は海鮮類に似ているが、特別な香りや味はないため、スープなどの汁物として味を含ませて用いることが多い。中国では四大山海（他はフカヒレ、ナマコのいりこ、熊の掌)の珍味の一つとされ、宮廷料理用の食材として珍重されたという。

薬用として

乾燥したものは生薬としても利用され、“猴頭”の名で呼ばれる。αグルカン、βグルカンなどの多糖類が含まれている[5]。

有効であるとする研究

臨床上で有効であるとする研究結果は、いくつか公表されてはいるが、有効成分の特定・作用機序の解明・他の医薬品との相互作用・人体に対する安全性などに関する研究はいまだ不十分である。また、子実体からの成分の抽出の際に、マイクロ波による加熱を行うと、有効とされる成分が破壊されてしまう可能性があり[6]、成分の抽出方法の有効性も十分に検討がされる必要がある。

  • ヤマブシタケに含まれるD-スレイトール（D-threitol）、D-アラビニトール（D-arabinitol）、パルミチン酸などの抗酸化物質は、血液中の脂質量を調整するとともに、血糖値を低減させる効果がある可能性がある[7] 。
  • 女性の更年期障害の症状を改善する効果があるが、成分は未解明である[8]。
  • マウスによる動物実験で抗腫瘍効果[9]。
  • アルツハイマー型の抗認知症効果[8]。

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、ヤマブシタケに関連するカテゴリがあります。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ 今関六也、本郷次雄『原色日本新菌類図鑑』75-76号、保育社〈保育社の原色図鑑〉、1987年、108-109頁。ISBN 4586300760。 NCID BN01127636。全国書誌番号:89046304。 
  2. ^ 今関六也、本郷次雄『きのこ』保育社〈カラー自然ガイド 8〉、1973年。ISBN 978-4586400089。 NCID BN08313752。 
  3. ^ 辻井弘忠、末成美奈子、増野和彦「栽培に用いる系統および培地組成がヤマブシタケ(Hericium erinaceum)子実体収量と子実体熱水抽出エキスの細胞毒性活性に及ぼす影響」『信州大学農学部AFC報告』第1巻、信州大学農学部、2003年3月、73-79頁、NAID 120001087176。 
  4. ^ 上田恵子, 辻森めぐみ, 小谷真也, 千葉亜希子, 増野和彦, 久保昌一, 長井薫, 関谷敦, 河岸洋和「P-15 ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)から得られた小胞体ストレスによる細胞死阻害物質(ポスター発表の部)」『天然有機化合物討論会講演要旨集』第50巻、天然有機化合物討論会実行委員会、2008年、309-314頁、doi:10.24496/tennenyuki.50.0_309、NAID 110007066744。 
  5. ^ 大櫛祐一、坂本正弘、東順一「ヤマブジタケ子実体に含まれる β-Glucan の抽出とその構造」『Journal of applied glycoscience』第55巻第4号、日本応用糖質科学会、2008年10月20日、231-234頁、doi:10.5458/jag.55.231、NAID 10024971657。 
  6. ^ 大櫛祐一、坂本正弘、東順一「ヤマブシタケ子実体に含まれる多糖類の抽出におけるマイクロ波加熱の影響」『Journal of applied glycoscience』第56巻第3号、日本応用糖質科学会、2009年7月20日、153-157頁、doi:10.5458/jag.56.153、NAID 10025409223。 
  7. ^ Hypoglycemic effect of extract of Hericium erinaceus
  8. ^ a b Nagano, Mayumi; Shimizu, Kuniyoshi; Kondo, Ryuichiro; Hayashi, Chickako; Sato, Daigo; Kitagawa, Katsuyuki; Ohnuki, Koichiro (2010). “Reduction of depression and anxiety by 4 weeks Hericium erinaceus intake” (英語). Biomedical Research 31 (4): 231–237. doi:10.2220/biomedres.31.231. ISSN 1880-313X. https://doi.org/10.2220/biomedres.31.231. 
  9. ^ 鈴木美季子、柴沼真友美、香取輝美、清水通隆、木村修一「EL4 腫瘍細胞に対するヤマブシタケ・マイタケの増殖抑制効果について」『日本補完代替医療学会誌』第7巻第1号、日本補完代替医療学会、2010年、11-16頁、doi:10.1625/jcam.7.11、NAID 130000252238。 

外部リンク

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