コンテンツにスキップ

「シボグリヌム科」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Maxima m (会話 | 投稿記録)
旧分類体系を独立の{{Template:生物分類表}}に
Maxima m (会話 | 投稿記録)
文献追加
17行目: 17行目:
| 下位分類名 = 下位分類
| 下位分類名 = 下位分類
| 下位分類 = 本文参照
| 下位分類 = 本文参照
| 学名 = Siboglinidae
| 学名 = Siboglinidae {{AUY|Caullery|1914}} <ref name="Caullery" />
| 和名 = シボグリヌム科
| 和名 = シボグリヌム科
<!--
<!--
45行目: 45行目:
'''有鬚動物'''(ゆうしゅどうぶつ、Pogonophora)は、[[動物]]の一つの群であり、カタカナ表記で'''ポゴノフォラ'''ということもある。従来は独立の[[門 (分類学)|門]]の地位が与えられていたが、近年では'''シボグリヌム科''' (Siboglinidae) として[[環形動物]]門の[[多毛類]]に属する[[科 (分類学)|科]]の1つとする
'''有鬚動物'''(ゆうしゅどうぶつ、Pogonophora)は、[[動物]]の一つの群であり、カタカナ表記で'''ポゴノフォラ'''ということもある。従来は独立の[[門 (分類学)|門]]の地位が与えられていたが、近年では'''シボグリヌム科''' (Siboglinidae) として[[環形動物]]門の[[多毛類]]に属する[[科 (分類学)|科]]の1つとする
<ref name="WoRMS">[[#WoRMS_Siboglinidae|WoRMS (2011)]]</ref>
<ref name="WoRMS">[[#WoRMS_Siboglinidae|WoRMS (2011)]]</ref>
<ref name="Pleijel">[[#Pleijel_et_al|Pleijel et al. (2009)]]</ref>
<ref name="Pleijel">[[#Pleijel_et_al|Pleijel ''et al''. (2009)]]</ref>
<ref name="Hilario">[[#Hilario_et_al|Hilário ''et al.'' (2011)]]</ref>
<ref>[[カール・フォン・リンネ|リンネ]]式[[生物の分類#現在の生物分類|階層分類]]では[[門 (分類学)|門]]から[[綱 (分類学)|綱]]、[[目 (分類学)|目]]をこえて[[科 (分類学)|科]]まで3階級の降格である</ref>。自由生活の[[左右相称動物]]でありながら[[消化管]]がほぼ完全に欠如しているという、希有な構造をている。
<ref>[[カール・フォン・リンネ|リンネ]]式[[生物の分類#現在の生物分類|階層分類]]では[[門 (分類学)|門]]から[[綱 (分類学)|綱]]、[[目 (分類学)|目]]をこえて[[科 (分類学)|科]]まで3階級の降格である</ref>。自由生活の[[左右相称動物]]でありながら[[消化管]]がほぼ完全に欠如している希有な構造であるが、共生細菌より栄養ている<ref name="Hilario" />


== 形態・生態 ==
== 形態・生態 ==
58行目: 59行目:
体内には前体・中体・後体・終体ごとに区分された[[体腔]]がある。[[閉鎖血管系]]を持ち、触手の付け根には[[心臓]]と呼ばれる太い血管があり、血管は触手の中にも通っている。非常に興味深いのは、[[口]]も[[肛門]]も、消化管一切が存在しないことである。多細胞動物、特に左右相称動物は、出入り口のはっきりした消化管を持つものであり、中には肛門が退化した例がありはする([[腕足動物]]など))し、寄生性のものでは栄養を体表から吸収するためにもっと徹底的に消化管が退化した例([[条虫]]類など))、あるいは幼生期の栄養だけで生活するために成体に消化管がない例([[カイアシ類]]の[[モンストリラ目]]など)などもあるが、普通に自由生活でありながらこのように消化管を一切持たない例は他にはない<ref>なお、近年では[[腹毛動物]]の[[オビムシ]]類などに消化管が断片的になった例が知られている。これは化学合成による独立栄養を営む細菌類と[[共生]]しているものである</ref>。
体内には前体・中体・後体・終体ごとに区分された[[体腔]]がある。[[閉鎖血管系]]を持ち、触手の付け根には[[心臓]]と呼ばれる太い血管があり、血管は触手の中にも通っている。非常に興味深いのは、[[口]]も[[肛門]]も、消化管一切が存在しないことである。多細胞動物、特に左右相称動物は、出入り口のはっきりした消化管を持つものであり、中には肛門が退化した例がありはする([[腕足動物]]など))し、寄生性のものでは栄養を体表から吸収するためにもっと徹底的に消化管が退化した例([[条虫]]類など))、あるいは幼生期の栄養だけで生活するために成体に消化管がない例([[カイアシ類]]の[[モンストリラ目]]など)などもあるが、普通に自由生活でありながらこのように消化管を一切持たない例は他にはない<ref>なお、近年では[[腹毛動物]]の[[オビムシ]]類などに消化管が断片的になった例が知られている。これは化学合成による独立栄養を営む細菌類と[[共生]]しているものである</ref>。


栄養補給については謎が多いが、触手がそのための器官であると考えられてい。触手は1本から2本、また4本、さらに200本持つものまであり、その配置も馬蹄形、円形、螺旋形等のものがある。その触手の内側にはさらに細い小枝(しょうし)と呼ばれる突起が2列並んでおり、それぞれの突起には血管が入り込んでいる。また、触手の内側の面には繊毛が並んでいる。そこで、多数の触手を持つものでは、それらが並ぶことで作られる管の内側が消化管内部のような構造を作り、そこへ[[デトリタス]]などの微粒子を取り込み、消化して触手から吸収するものと言わる。だし、触手が単一のものでは、それを真っすぐ前に伸ばしているらしいのでこのような方法が可能かどうか疑問視されている
触手が栄養補給のための器官であると考えられてい。触手は1本から2本、また4本、さらに200本持つものまであり、その配置も馬蹄形、円形、螺旋形等のものがある。その触手の内側にはさらに細い小枝(しょうし)と呼ばれる突起が2列並んでおり、それぞれの突起には血管が入り込んでいる。また、触手の内側の面には繊毛が並んでいる。そこで、多数の触手を持つものでは、それらが並ぶことで作られる管の内側が消化管内部のような構造を作り、そこへ[[デトリタス]]などの微粒子を取り込み、消化して触手から吸収するものと考えられた。



[[Image:Lamellibrachia luymesi model.png|right|thumb|250px|ハオリムシ''Lamellibrachia''の栄養モデル]]
[[Image:Lamellibrachia luymesi model.png|right|thumb|250px|ハオリムシ''Lamellibrachia''の栄養モデル]]
68行目: 68行目:


== 発見と分類の歴史 ==
== 発見と分類の歴史 ==
この動物の発見はかなり遅く、ヒゲムシについては[[オランダ]]の海洋探検船Siboga号が1900年にインドネシア海底で採取した標本を元に1914年に[[:en:Maurice Caullery|Maurice Caullery]]が分類の所属不明のままに''Siboglinum''を記載したのが最初である
この動物の発見はかなり遅く、ヒゲムシについては[[オランダ]]の海洋探検船Siboga号が1900年にインドネシア海底で採取した標本を元に1914年に[[:en:Maurice Caullery|Maurice Caullery]]が上位分類群への所属不明のままに''Siboglinum''[[記載]]新科Siboglinidaeを立てたのが最初である
<ref>{{Cite journal | author = Caullery M. | title = Sur les Siboglinidae, type nouveau d'invertébrés recueillis par l'expédition du Siboga | journal = Bull. Soc. Zool. Fr. | volume = 39 | year = 1914 | pages = 350–353 }} cited in [[#Pleijel|Pleijel ''et al.'' (2009)]]</ref>。
<ref name="Caullery">{{Cite journal | author = Caullery M. | title = Sur les Siboglinidae, type nouveau d'invertébrés recueillis par l'expédition du Siboga | journal = Bull. Soc. Zool. Fr. | volume = 39 | year = 1914 | pages = 350–353 }} cited in [[#Pleijel|Pleijel ''et al.'' (2009)]]</ref>。
また、1932年にはオホーツク海で採集された標本をロシアの多毛類研究者Uschakovが[[ケヤリムシ]]類の新属新種として記載した
また、1932年にはオホーツク海で採集された標本をロシアの多毛類研究者Uschakovが[[ケヤリムシ]]類の新属新種として記載した
<ref>{{Cite journal | author = Uschakov P. | title = Eine neue Form aus der Familie Sabellidae (Polychaeta) | journal = Zool. Anz. | volume = 104 | year = 1933 | pages = 205–208 }} cited in Pleijel ''et al.'' (2009)</ref>。
<ref>{{Cite journal | author = Uschakov P. | title = Eine neue Form aus der Familie Sabellidae (Polychaeta) | journal = Zool. Anz. | volume = 104 | year = 1933 | pages = 205–208 }} cited in Pleijel ''et al.'' (2009)</ref>。
83行目: 83行目:
有名になった。非常に大型で群棲するので目立つものであったが、その姿が異様であったから、しばらくは所属不明、名称不詳のまま[[チューブワーム]]と見たままの名で呼ばれた。
有名になった。非常に大型で群棲するので目立つものであったが、その姿が異様であったから、しばらくは所属不明、名称不詳のまま[[チューブワーム]]と見たままの名で呼ばれた。


深海底のクジラの死体周辺に生息する一群も知られるようになった
深海底のクジラの死体周辺に生息する一群も知られるようになった
<ref name="Osedax">{{Cite journal | title = Osedax: Bone-Eating Marine Worms with Dwarf Males | author = Rouse G.W., Goffredi S.K., Vrijenhoek R.C. | year = 2004 | journal = Science | volume = 305 pages = 668-671 }}</ref>。


== 系統 ==
== 系統 ==
100行目: 101行目:


== 分類 ==
== 分類 ==
Hilárioら (2011) は4つの[[単系統群]]を認める。
*Siboglinidae
**Frenulata
**''Osedax''
**''Sclerolinum''
**Vestimentifera

[[#WoRMS_Soboglinidae|WoRMS (2011)]] では33属を記す。
[[#WoRMS_Soboglinidae|WoRMS (2011)]] では33属を記す。
*''Alaysia''
*''Alaysia''
149行目: 157行目:


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
*{{Cite journal | author = Hilário A., Capa M., Dahlgren T.G., Halanych K.M., Little C.T.S.,Thornhill D.J., Verna C., Glover A.G. | year = 2011 | title = New Perspectives on the Ecology and Evolution of Siboglinid Tubeworms | journal = PLoS ONE | volume = 6 | issue = 2 | pages = e16309 | doi = 10.1371/journal.pone.0016309 | url = http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0016309 | ref = Hilario_et_al }}
* {{Cite journal | author = Pleijel F., Dahlgren T. G., Rouse G. W. | title = Progress in systematics: from Siboglinidae to Pogonophora and Vestimentifera and back to Siboglinidae | journal = C. R. Biologies | volume = 332 | year = 2009 | pages = 140–148 | doi = 10.1016/j.crvi.2008.10.007 | ref = Pleijel_et_al }}
* {{Cite journal | author = Pleijel F., Dahlgren T. G., Rouse G. W. | title = Progress in systematics: from Siboglinidae to Pogonophora and Vestimentifera and back to Siboglinidae | journal = C. R. Biologies | volume = 332 | year = 2009 | pages = 140–148 | doi = 10.1016/j.crvi.2008.10.007 | ref = Pleijel_et_al }}
*<cite id="WoRMS_Siboglinidae">{{Cite web | author = WoRMS | year = 2011 | title = Siboglinidae. | work = Read, G.; Fauchald, K. (Ed) (2011). World Polychaeta database | World Register of Marine Species | url = http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=129096 | accessdate = 2011-06-18}}</cite>
*<cite id="WoRMS_Siboglinidae">{{Cite web | author = WoRMS | year = 2011 | title = Siboglinidae. | work = Read, G.; Fauchald, K. (Ed) (2011). World Polychaeta database | World Register of Marine Species | url = http://www.marinespecies.org/aphia.php?p=taxdetails&id=129096 | accessdate = 2011-06-18}}</cite>

2011年6月19日 (日) 16:03時点における版

シボグリヌム科
Riftia pachyptila
Lamellibrachia luymesi
分類(WoRMS (2010)[1]
: 動物界 Animalia
: 環形動物Annelida
: 多毛綱 Polychaeta
亜綱 : Canalipalpata
: ケヤリムシSabellida
: シボグリヌム科 Siboglinidae
学名
Siboglinidae Caullery1914 [2]
シノニム

Pogonophora(門)
Vestimentifera(門)

和名
シボグリヌム科
下位分類

本文参照

有鬚動物
門の階級に置く従来の分類
分類
: 動物界 Animalia
: 有鬚動物 Pogonophora
学名
Pogonophora Johansson, 1939[3]
和名
有鬚動物

有鬚動物(ゆうしゅどうぶつ、Pogonophora)は、動物の一つの群であり、カタカナ表記でポゴノフォラということもある。従来は独立のの地位が与えられていたが、近年ではシボグリヌム科 (Siboglinidae) として環形動物門の多毛類に属するの1つとする [1] [4] [5] [6]。自由生活の左右相称動物でありながら消化管がほぼ完全に欠如している希有な構造であるが、共生細菌より栄養を得ている[5]

形態・生態

海産の細長い動物で、大半が深海の底に棲息する。大きくはヒゲムシ類とハオリムシ類に分かれ、その違いは頭部の触手の形などである。

ヒゲムシは、すべてがキチン質の円筒形の棲管を作り、その中に住んでおり、体の前半を少し出す程度である。棲管は大半が泥に埋まっている。棲管は虫体の3倍ほどの長さがあるが、大きさはさまざまで、小さいものは太さ0.2mm、長さ20cm程のものから、大きいものでは太さ1.5mm、長さ150cmに達するものまである。外見的にはの毛の束のように見える。

虫体は細長く、前体・中体・後体・終体の4つの部分からなる。前体は偏平で先がとがっており、その腹面からは種によって1から200程の触手が出る。中体は表面のクチクラに手綱と呼ばれる隆起がV字にある。後体は非常に細長く、腹面には腹溝と呼ばれる溝が続き、関節のように剛毛が並んでおり、生殖腺もここにある。終体は短く、20節ほどの体節に分かれ、節ごとに剛毛が配置するなど、多毛類の体そのものである。

体内には前体・中体・後体・終体ごとに区分された体腔がある。閉鎖血管系を持ち、触手の付け根には心臓と呼ばれる太い血管があり、血管は触手の中にも通っている。非常に興味深いのは、肛門も、消化管一切が存在しないことである。多細胞動物、特に左右相称動物は、出入り口のはっきりした消化管を持つものであり、中には肛門が退化した例がありはする(腕足動物など))し、寄生性のものでは栄養を体表から吸収するためにもっと徹底的に消化管が退化した例(条虫類など))、あるいは幼生期の栄養だけで生活するために成体に消化管がない例(カイアシ類モンストリラ目など)などもあるが、普通に自由生活でありながらこのように消化管を一切持たない例は他にはない[7]

触手が栄養補給のための器官であると考えられていた。触手は1本から2本、また4本、さらに200本持つものまであり、その配置も馬蹄形、円形、螺旋形等のものがある。その触手の内側にはさらに細い小枝(しょうし)と呼ばれる突起が2列並んでおり、それぞれの突起には血管が入り込んでいる。また、触手の内側の面には繊毛が並んでいる。そこで、多数の触手を持つものでは、それらが並ぶことで作られる管の内側が消化管内部のような構造を作り、そこへデトリタスなどの微粒子を取り込み、消化して触手から吸収するものと考えられた。

ハオリムシLamellibrachiaの栄養モデル

ハオリムシの場合、体制は基本的には同じであるが、先端部分は大きく異なる。ヒゲムシの前体に当たる部分はハオリムシでは殻蓋部とハオリ部である。体の先端からは殻蓋部があり、その先端は広がっている。その基部の周囲にはがある。それに続く部分はハオリ部と呼ばれる。それ以降は細長い胴体が続き、これを栄養体と呼んでいる。胴部の最後には多毛類のような後体部がある。大きさは長さが30-100cm、太さが10-30mmとヒゲムシ類に比べてはるかに大きな動物である。胴部には硫黄酸化細菌が共生し、これが作る栄養をハオリムシは利用しているものと考えられている。細菌が使う硫化水素血液中のヘモグロビンと結合して運ばれることが知られている。

発生

詳しいことは分かっていないが、両群とも若干の知見が得られている。それによると、原口原腸は一旦形成されるが、幼生の成長にしたがって消失する。幼生の形はトロコフォアかそれに近い形と判断されている。

発見と分類の歴史

この動物の発見はかなり遅く、ヒゲムシについてはオランダの海洋探検船Siboga号が1900年頃にインドネシア海底で採取した標本を元に1914年にMaurice Caulleryが上位分類群への所属不明のままにSiboglinum属を記載し新科Siboglinidaeを立てたのが最初である [2]。 また、1932年にはオホーツク海で採集された標本をロシアの多毛類研究者Uschakovがケヤリムシ類の新属新種として記載した [8]。 しかし、同じものを研究したスウェーデンの多毛類研究者Johanssonはその内部構造を調べてホウキムシに近い新Pogonophoraとした [9]。 分類上の位置についてはその後もさまざまな論議があったが、1944年にBeklemishevらが独立のとする説を出し [10]、 以後ほぼこれが認められてきた。

ハオリムシの発見はさらに遅れて、カリフォルニア沖の深海で発見されたものが1969年にはじめて記載され[11]、 ガラパゴス沖の深海の熱水鉱床で多数生息することが知られて [12] 有名になった。非常に大型で群棲するので目立つものであったが、その姿が異様であったから、しばらくは所属不明、名称不詳のままチューブワームと見たままの名で呼ばれた。

深海底のクジラの死体周辺に生息する一群も知られるようになった [13]

系統

この類の系統上の位置についての考えは、非常に大きく変化し続けた。その理由は

  • 消化管が欠如し、特異な触手があるなど特殊な体制であること
  • 深海で固着生活をしており、また細長く切れやすいため、長らく完全な個体が手にはいらなかったこと

などが挙げられよう。当初は多毛類、あるいは触手動物と言われたが、その後新口動物、ことに半索動物に近い独立門との見方[10]が強くなった。その当時は終体部が見つかっていなかったため、体が大きく三つに分かれ、それぞれに体腔がある三体腔性の構造であると考えられていたためである [4]

ところが、1964年以降に終体部が見つかってみると、ほぼ完全に多毛類の体であった [14]。 三体腔性との判断も崩れた。これを契機に系統論議が再燃し、むしろ環形動物に近いものであるとか、いやいっそ多毛類の中に含まれるべきものとの説も出るようになった。分子系統学の結果が多毛類の下位クレードであることを支持するものであった[4]ことから、現在では独立のではなく多毛類に属するであるとする見解になっている[4] [15] [16]

分類

Hilárioら (2011) は4つの単系統群を認める。

  • Siboglinidae
    • Frenulata
    • Osedax
    • Sclerolinum
    • Vestimentifera

WoRMS (2011) では33属を記す。

  • Alaysia
  • Arcovestia
  • Birsteinia
  • Bobmarleyana
  • Choanophorus
  • Crassibrachia
  • Cyclobrachia
  • Diplobrachia
  • Escarpia
  • Galathealinum
  • Heptabrachia
  • Krampolinum
  • Lamellibrachia ハオリムシ
  • Lamellisabella
  • Nereilinum
  • Oasisia
  • Oligobrachia
  • Osedax ホネクイハナムシ
  • Paraescarpia
  • Polarsternium
  • Polybrachia
  • Ridgeia
  • Riftia
  • Sclerolinum
  • Seepiophila
  • Siboglinoides
  • Siboglinum
  • Siphonobrachia
  • Spirobrachia
  • Tevnia
  • Unibrachium
  • Volvobrachia
  • Zenkevitchiana

旧来の分類

独立の門とする旧来の分類では、2つの群をそれぞれ独立の綱とし、それぞれに2目を設ける。

  • Phylum Pogonophora 有鬚動物門
    • Class Perviata ヒゲムシ綱
      • 無鞘腎目:触手は数少なく、遊離する。2科7属58種
      • 有鞘腎目:触手は数多く、時に融合する。4科11属40種
    • Class Obturata ハオリムシ綱

脚注

  1. ^ a b WoRMS (2011)
  2. ^ a b Caullery M. (1914). “Sur les Siboglinidae, type nouveau d'invertébrés recueillis par l'expédition du Siboga”. Bull. Soc. Zool. Fr. 39: 350–353.  cited in Pleijel et al. (2009)
  3. ^ Johansson K.E. (1939). “Lamellisabella zachsi Uschakov, ein Vertreter einer neuen Tierklasse Pogonophora”. Zool. Bidr. Upps. 18: 253–268.  cited in Pleijel et al. (2009)
  4. ^ a b c d Pleijel et al. (2009)
  5. ^ a b Hilário et al. (2011)
  6. ^ リンネ階層分類ではからをこえてまで3階級の降格である
  7. ^ なお、近年では腹毛動物オビムシ類などに消化管が断片的になった例が知られている。これは化学合成による独立栄養を営む細菌類と共生しているものである
  8. ^ Uschakov P. (1933). “Eine neue Form aus der Familie Sabellidae (Polychaeta)”. Zool. Anz. 104: 205–208.  cited in Pleijel et al. (2009)
  9. ^ Johansson K.E. (1937). “Über Lamellisabella zachsi und ihre systematische Stellung”. Zool. Anz. 117: 23–26. 
    Johansson K.E. (1939). “Lamellisabella zachsi Uschakov, ein Vertreter einer neuen Tierklasse Pogonophora”. Zool. Bidr. Upps. 18: 253–268. 
    both cited in Pleijel et al. (2009)
  10. ^ a b Beklemishev V.N. (1944). Osnovy sravintel'noi anatomii bespozvonochnykh (Principles of the Comparative Anatomy of Invertebrates). Moscow: Akademia Nauk  cited in Pleijel et al. (2009)
  11. ^ Webb M. (1969). “Lamellibrachia barhami, gen. nov., sp. nov. (Pogonophora), from the northeast Pacific”. Bull. Mar. Sci. 19: 18–47.  cited in Pleijel et al. (2009)
  12. ^ Jones M.L. (1981). “Riftia pachyptila, new genus, new species, the vestimentifera worm from the Galapagos Rift geothermal vents (Pogonophora)”. Proc. Biol. Soc. Wash. 93: 1295–1313.  cited in Pleijel et al. (2009)
  13. ^ Rouse G.W., Goffredi S.K., Vrijenhoek R.C. (2004). “Osedax: Bone-Eating Marine Worms with Dwarf Males”. Science 305 pages = 668-671. 
  14. ^ Webb M. (1964). “Evolutionary paths within the phylum Pogonophora”. Sarsia 16: 59–64. 
    Webb M. (1964). “Additional notes on Sclerolinum brattstromi (Pogonophora) and the establishment of a new family, Sclerolinidae”. Sarsia 16: 47–58. 
    Webb M. (1964). “A new bitentaculate pogonophoran from Hardangerfjorden, Norway”. Sarsia 15: 49–55. 
    Webb M. (1964). “The posterior extremity of Siboglinum fiordicum (Pogonophora)”. Sarsia 15: 33–36. 
    all cited in Pleijel et al. (2009)
  15. ^ WoRMS (2010年). “Pogonophora”. World Register of Marine Species. 2011年6月18日閲覧。
  16. ^ Shapiro, L.. “Pogonophora: Comprehensive Description”. Encyclopedia of Life. 2011年6月18日閲覧。

参考文献

外部リンク

Template:Link FA