電子線ホログラフィ
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電子線ホログラフィ(でんしせんホログラフィ)とは、電子線の干渉を利用したホログラフィ。
概要
[編集]電子は光の10万分の1という短い波長をもっているのでその位相情報を活用すれば高分解能の画像が得られる[1]。電子顕微鏡に備えられ、電子線の干渉を利用して高分解能の試料の画像を得る[2]。そもそもホログラフィ自体が1947年にハンガリーの物理学者であるガーボル・デーネシュによって電子顕微鏡を改良する過程で発明されたという経緯がある[3]。レーザーが1960年に発明され、光波ホログラフィは実用化に向けて大きく進展したが、電子線ホログラフィの実用化には良質な位相の揃った電界放射型電子銃が開発されるまで待たねばならず、1978年に電子波の干渉縞を3000本以上作ることができて電子線の干渉性が従来の電子顕微鏡よりも一桁向上した高い干渉性を持った電界放射型電子顕微鏡が外村彰達によって開発されたことにより、実用段階に到達した[4][5][6]。
原理
[編集]電界放射型電子銃から放出された電子線の経路を分割して片方のみ試料に透過させると試料の存在によって電子線の位相が変化して検出器上で試料のない真空領域を透過した電子線が形成する干渉像から試料の構造を観察する[1]。
用途
[編集]- 磁性体の磁区観察
- 材料開発
- 非破壊検査
脚注
[編集]- ^ a b 外村彰, 「電子線ホログラフィーによる磁束量子ダイナミックスの観察」『応用物理』 1994年 63巻 3号 p.222-231, doi:10.11470/oubutsu1932.63.222。
- ^ 渡辺宏, 外村彰, 電子線ホログラフィー」『日本結晶学会誌』 1969年 11巻 1号 p.23-25_2, doi:10.5940/jcrsj.11.23。
- ^ Gabor, Dennis. "A new microscopic principle." Nature 161.4098 (1948): 777-778, doi:10.1038/161777a0.
- ^ 外村彰, 松田強, 遠藤潤二, 「電子線ホログラフィー」『電子顕微鏡』 1979-1980年 14巻 1号 p.47-52, doi:10.11410/kenbikyo1950.14.47。
- ^ 外村彰, 「電子線ホログラフィーによる磁区観察」『応用物理』 1983年 52巻 4号 p.290-297, doi:10.11470/oubutsu1932.52.290。
- ^ 遠藤潤二, 「電子線ホログラフイとその材料研究への応用 : 高感度干渉顕微法を中心として」『日本金属学会会報』 1988年 27巻 7号 p.548-557, doi:10.2320/materia1962.27.548。
参考文献
[編集]- 外村彰, 渡辺宏, 「電子線ホログラフィー」『日本物理学会誌』 1968年 23巻 9号 p.683-684, doi:10.11316/butsuri1946.23.683。
- 外村彰, 松田強, 遠藤潤二, 「電子線ホログラフィーの最近の進歩」『応用物理』 1979年 48巻 11号 p.1094-1100, doi:10.11470/oubutsu1932.48.1094。
- 外村彰, 「電子線ホログラフィーによる磁束量子ダイナミックスの観察」『応用物理』 1994年 63巻 3号 p.222-231, doi:10.11470/oubutsu1932.63.222。
- 平山司, 「電子線ホログラフィ」『電子顕微鏡』 2000年 35巻 1号 p.55-56, doi:10.11410/kenbikyo1950.35.55。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 村上恭和, 「電子線ホログラフィーを用いた界面領域の磁性の研究」『日本金属学会誌』 2015年 79巻 5号 p.233-242, doi:10.2320/jinstmet.J2015001。
- 笠間丈史, 「電子線ホログラフィによるナノスケール磁化の直接観察」『まてりあ』 2016年 55巻 7号 p.329-335, doi:10.2320/materia.55.329。
- 品田博之, 谷垣俊明, 明石哲也, 「7. 電子線ホログラフィ」『映像情報メディア学会誌』 2018年 72巻 1号 p.59-62, doi:10.3169/itej.72.59。