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[[遺伝病]]である[[ハートナップ病]](トリプトファンが腸から吸収されない病気)の患者はペラグラを発症する。また、[[トウモロコシ]]を主食とする地域でよくみられるが、トウモロコシのナイアシンは[[アルカリ]]で処理すること ([[ニシュタマリゼーション]]) によって吸収されるようになる([[メキシコ]]の[[トルティーヤ]]は良い例である)。ペラグラは季節性で、日差しが強くなるうえに食事の内容が主にトウモロコシ製品に偏る春から夏にかけて起こりやすい。
[[遺伝病]]である[[ハートナップ病]](トリプトファンが腸から吸収されない病気)の患者はペラグラを発症する。また、[[トウモロコシ]]を主食とする地域でよくみられるが、トウモロコシのナイアシンは[[アルカリ]]で処理すること ([[ニシュタマリゼーション]]) によって吸収されるようになる([[メキシコ]]の[[トルティーヤ]]は良い例である)。ペラグラは季節性で、日差しが強くなるうえに食事の内容が主にトウモロコシ製品に偏る春から夏にかけて起こりやすい。


遺伝、トウモロコシ以外の原因として栄養摂取障害があり、極端な偏食によって発症した例が報告されている<ref>葭矢信弘、庄司昭伸、北島淳一 ほか、「[https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch1959/27/4/27_4_702/_article/-char/ja/ ペラグラの4例]」 皮膚 Vol.27 (1985) No.4 P.702-708, {{DOI|10.11340/skinresearch1959.27.702}}
遺伝、トウモロコシ以外の原因として栄養摂取障害があり、極端な偏食によって発症した例が報告されている<ref>葭矢信弘、庄司昭伸、北島淳一 ほか、「[https://doi.org/10.11340/skinresearch1959.27.702 ペラグラの4例]」 皮膚 Vol.27 (1985) No.4 P.702-708, {{DOI|10.11340/skinresearch1959.27.702}}
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; 栄養摂取障害を生じる例、
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* 化学療法<ref name="jocd.33.477">一ノ宮愛、西本勝太郎、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/jocd/33/4/33_477/_article/-char/ja ペラグラの1例] 日本臨床皮膚科医会雑誌 33巻 (2016) 4号 p.477-482, {{doi|10.3812/jocd.33.477}}</ref>
* 化学療法<ref name="jocd.33.477">一ノ宮愛、西本勝太郎、[https://doi.org/10.3812/jocd.33.477 ペラグラの1例] 日本臨床皮膚科医会雑誌 33巻 (2016) 4号 p.477-482, {{doi|10.3812/jocd.33.477}}</ref>


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* [[アルコール使用障害]]患者<ref>水上勝義、牧野裕、入谷修司 ほか、「アルコール性ペラグラ脳症の3剖検例」 精神医学 (1990) 32 5号, p.503-509, {{doi|10.11477/mf.1405902838}}</ref>
* [[アルコール使用障害]]患者<ref>水上勝義、牧野裕、入谷修司 ほか、「アルコール性ペラグラ脳症の3剖検例」 精神医学 (1990) 32 5号, p.503-509, {{doi|10.11477/mf.1405902838}}</ref>
* 偏食、[[拒食症]]患者<ref>河村園美、「拒食症患者に発症したペラグラの1例」 皮膚臨床 39, 483-486, 1997, {{naid|50005110448}}</ref><ref name=jocd.33.477 />
* 偏食、[[拒食症]]患者<ref>河村園美、「拒食症患者に発症したペラグラの1例」 皮膚臨床 39, 483-486, 1997, {{naid|50005110448}}</ref><ref name=jocd.33.477 />
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== 歴史 ==
== 歴史 ==
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1735年に[[スペイン]]で記録されたのが初出である。<ref name=":0" />。20世紀初頭、アメリカ合衆国では致死率50%を超えていたペラグラで毎年10万人が死亡していた。誰もが細菌感染だと信じ込み、菌を検出したと主張する科学者も現れたが、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の医学者[[ジョゼフ・ゴールドバーガー]]([[:w:Joseph Goldberger|Joseph Goldberger]])には信じなかった。彼は患者の血・分泌物・排せつ物を直接自分の体に入れたが、発症しなかった。ゴールドバーグは栄養素が原因だと疑い、1926年に研究によって肉や牛乳に含まれる何らかの栄養が不足することが原因であると突き止められた<ref name=":0" />。そのおかげで、1937年になって[[コンラッド・エルヴェージェム]]([[:w:Conrad Elvehjem|Conrad Elvehjem]])によりその物質が必須栄養素「ナイアシン」と判明させた。ナイアシンを補うにようになってからペラグラによる死者はなくなった<ref name=":0" />。


== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [http://merckmanual.jp/mmhe2j/sec12/ch154/ch154h.html ナイアシン] メルクマニュアル医学百科
* [http://merckmanual.jp/mmhe2j/sec12/ch154/ch154h.html ナイアシン] メルクマニュアル医学百科
* 柴田克己、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/82/10/82_KJ00005070338/_article/-char/ja ペラグラ患者のナイアシン栄養状態 : 尿中のナイアシン異化代謝産物量は低下するが,血液中のNAD含量は低下しない] ビタミン 82巻 (2008) 10号 p.556-558, {{doi|10.20632/vso.82.10_556}}
* 柴田克己、[https://doi.org/10.20632/vso.82.10_556 ペラグラ患者のナイアシン栄養状態 : 尿中のナイアシン異化代謝産物量は低下するが,血液中のNAD含量は低下しない] ビタミン 82巻 (2008) 10号 p.556-558, {{doi|10.20632/vso.82.10_556}}


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2018年12月3日 (月) 03:33時点における版

ペラグラ
皮膚炎症を起こした患者
概要
診療科 内分泌学
分類および外部参照情報
ICD-10 E52
ICD-9-CM 265.2
DiseasesDB 9730
MedlinePlus 000342
eMedicine ped/1755
Patient UK ペラグラ

ペラグライタリア語: Pellagra)は、代謝内分泌疾患の一つで、ナイアシン欠乏症(栄養失調)である[1]。Pellagraはイタリア語で「皮膚の痛み」を意味する。栄養不良(亜鉛ビタミンB2B6)のある者は、ペラグラを発症するリスクが高くなる。ニコチン酸アミド及びビタミンB群の投与により治療する[2]

概要

ナイアシンは必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンから体内で生合成されるので、トリプトファンが欠乏することでもナイアシンが欠乏し、結果ペラグラを発症する。

臨床的には、血中トリプトファン濃度の低下を生じていても血中ニコチン酸濃度の低下を生じない事もある[3]

原因

遺伝病であるハートナップ病(トリプトファンが腸から吸収されない病気)の患者はペラグラを発症する。また、トウモロコシを主食とする地域でよくみられるが、トウモロコシのナイアシンはアルカリで処理すること (ニシュタマリゼーション) によって吸収されるようになる(メキシコトルティーヤは良い例である)。ペラグラは季節性で、日差しが強くなるうえに食事の内容が主にトウモロコシ製品に偏る春から夏にかけて起こりやすい。

遺伝、トウモロコシ以外の原因として栄養摂取障害があり、極端な偏食によって発症した例が報告されている[4]

栄養摂取障害を生じる例、
  • 化学療法[3]

症状

光線過敏による皮膚炎を発症したペラグラ患者

ペラグラは、ナイアシン不足に加えて日光に当たることによって発症する。まず光線過敏症が生じ、顔に左右対称の赤い発疹が出る。その後、消化管全体が侵されて吐き気、嘔吐、便秘、下痢などの症状が現れ、舌と口に口内炎が生じる。また、喉や食道にも炎症が起こる。

症状が進行すると、疲労、不眠、無感情を経て、脳の機能不全(脳症)による錯乱、見当識の喪失、幻覚健忘などが起こり、最悪の場合死に至る。

歴史

1735年にスペインで記録されたのが初出である。[1]。20世紀初頭、アメリカ合衆国では致死率50%を超えていたペラグラで毎年10万人が死亡していた。誰もが細菌感染だと信じ込み、菌を検出したと主張する科学者も現れたが、アメリカの医学者ジョゼフ・ゴールドバーガー(Joseph Goldberger)には信じなかった。彼は患者の血・分泌物・排せつ物を直接自分の体に入れたが、発症しなかった。ゴールドバーグは栄養素が原因だと疑い、1926年に研究によって肉や牛乳に含まれる何らかの栄養が不足することが原因であると突き止められた[1]。そのおかげで、1937年になってコンラッド・エルヴェージェムConrad Elvehjem)によりその物質が必須栄養素「ナイアシン」と判明させた。ナイアシンを補うにようになってからペラグラによる死者はなくなった[1]

脚注

  1. ^ a b c d 【萬物相】「自ら納得するまで」やり続けることの重要さ」『』。2018年10月4日閲覧。
  2. ^ a b 永石彰子、田邊洋、上野正克 ほか、胃切除後に生じた非アルコール性ペラグラの1例 臨床神経学 48巻 (2008) 3号 p.202-204, doi:10.5692/clinicalneurol.48.202
  3. ^ a b c 一ノ宮愛、西本勝太郎、ペラグラの1例 日本臨床皮膚科医会雑誌 33巻 (2016) 4号 p.477-482, doi:10.3812/jocd.33.477
  4. ^ 葭矢信弘、庄司昭伸、北島淳一 ほか、「ペラグラの4例」 皮膚 Vol.27 (1985) No.4 P.702-708, doi:10.11340/skinresearch1959.27.702
  5. ^ 水上勝義、牧野裕、入谷修司 ほか、「アルコール性ペラグラ脳症の3剖検例」 精神医学 (1990) 32 5号, p.503-509, doi:10.11477/mf.1405902838
  6. ^ 河村園美、「拒食症患者に発症したペラグラの1例」 皮膚臨床 39, 483-486, 1997, NAID 50005110448

外部リンク