「軌道離心率」の版間の差分
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[[軌道力学]]上、標準的な条件下で[[天体]]の軌道は必ず[[円錐曲線]]の形になる。'''軌道離心率'''(きどうりしんりつ、Orbital eccentricity)は、その絶対的な形を決める重要な[[媒介変数|パラメータ]]である。軌道離心率は、この形がどれだけ円から離れているかを表わす値であると言う事ができる。 |
[[軌道力学]]上、標準的な条件下で[[天体]]の軌道は必ず[[円錐曲線]]の形になる。'''軌道離心率'''(きどうりしんりつ、Orbital eccentricity)は、その絶対的な形を決める重要な[[媒介変数|パラメータ]]である。軌道離心率は、この形がどれだけ円から離れているかを表わす値であると言う事ができる。 |
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簡単な証明によって、楕円ではsin<sup>−1</sup>eが、円から[[離心率]]eの楕円への投影角を与えることが示される。これにより、[[水星]]の軌道の離心率0.2056より、円からこの軌道への投影角11.86°が簡単に計算できる。コーヒーカップなど真上から見たら円のものを傾けて見ると楕円に見えるが、この傾けた大きさが投影角である。 |
簡単な証明によって、楕円ではsin<sup>−1</sup>eが、円から[[離心率]]eの楕円への投影角を与えることが示される。これにより、[[水星]]の軌道の離心率0.2056より、円からこの軌道への投影角11.86°が簡単に計算できる。コーヒーカップなど真上から見たら円のものを傾けて見ると楕円に見えるが、この傾けた大きさが投影角である。 |
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==計算== |
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離心率は、離心率ベクトルの絶対値として表わされる。 |
離心率は、離心率ベクトルの絶対値として表わされる。 |
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==例== |
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例えば、現在の[[地球]]の軌道離心率は0.0167である。[[惑星]]間[[重力]]の相互作用により、長年の間に、地球の軌道離心率はほぼ0から約0.05までの間を振れている。 |
例えば、現在の[[地球]]の軌道離心率は0.0167である。[[惑星]]間[[重力]]の相互作用により、長年の間に、地球の軌道離心率はほぼ0から約0.05までの間を振れている。 |
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太陽系の[[小惑星]]のほとんどは0から0.35の間に軌道離心率を持ち、その平均は0.17である。比較的大きい値を持つものは、[[木星]]の重力や過去の衝突の影響である。 |
太陽系の[[小惑星]]のほとんどは0から0.35の間に軌道離心率を持ち、その平均は0.17である。比較的大きい値を持つものは、[[木星]]の重力や過去の衝突の影響である。 |
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[[彗星]]の軌道離心率はほぼ1に近い。[[周期彗星]]は非常に長細い楕円軌道で、その軌道離心率は1よりわずかに小さい。[[ハレー彗星]]の軌道離心率は0.967である。[[非周期彗星]]は放物線に近い軌道を描き、やはりその軌道離心率は1に近い。例えば[[ヘール・ボップ彗星]]、[[マックノート彗星 (C/2006 P1)|マックノート彗星]]の軌道離心率はそれぞれ0.995086、1.000030である。 |
[[彗星]]の軌道離心率はほぼ1に近い。[[周期彗星]]は非常に長細い楕円軌道で、その軌道離心率は1よりわずかに小さい。[[ハレー彗星]]の軌道離心率は0.967である。[[非周期彗星]]は放物線に近い軌道を描き、やはりその軌道離心率は1に近い。例えば[[ヘール・ボップ彗星]]、[[マックノート彗星 (C/2006 P1)|マックノート彗星]]の軌道離心率はそれぞれ0.995086、1.000030である。ヘール・ボップ彗星の値は1より小さいため実は楕円軌道で、紀元4380年には再び現れる。一方マックノート彗星は双曲線軌道で、太陽系から無限に遠く離れてゆく。 |
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[[海王星]]の最も大きな衛星である[[トリトン (衛星)|トリトン]]は、太陽系の中で最も小さな軌道離心率を持ち、その軌道はほぼ円である。 |
[[海王星]]の最も大きな衛星である[[トリトン (衛星)|トリトン]]は、太陽系の中で最も小さな軌道離心率を持ち、その軌道はほぼ円である。 |
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==関連項目== |
== 関連項目 == |
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*[[離心率]] |
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*[[ミランコビッチ・サイクル]] |
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2010年8月29日 (日) 04:46時点における版
軌道力学上、標準的な条件下で天体の軌道は必ず円錐曲線の形になる。軌道離心率(きどうりしんりつ、Orbital eccentricity)は、その絶対的な形を決める重要なパラメータである。軌道離心率は、この形がどれだけ円から離れているかを表わす値であると言う事ができる。
標準的な条件下で、軌道離心率の値により、円、楕円、放物線、双曲線が定義できる。
- 円:
- 楕円:
- 放物線:
- 双曲線:
となる。
簡単な証明によって、楕円ではsin−1eが、円から離心率eの楕円への投影角を与えることが示される。これにより、水星の軌道の離心率0.2056より、円からこの軌道への投影角11.86°が簡単に計算できる。コーヒーカップなど真上から見たら円のものを傾けて見ると楕円に見えるが、この傾けた大きさが投影角である。
計算
離心率は、離心率ベクトルの絶対値として表わされる。
ここでは離心率ベクトルである。
楕円軌道では、近点・遠点間の距離としても現せる。
ここでは遠点、は近点である。
例
例えば、現在の地球の軌道離心率は0.0167である。惑星間重力の相互作用により、長年の間に、地球の軌道離心率はほぼ0から約0.05までの間を振れている。
別の例では、水星の軌道離心率は0.2056と、太陽系の他の惑星と比べてかなり大きい値を持つ。2006年の基準の変更により惑星から準惑星へ格下げとなった冥王星の軌道離心率はさらに大きく0.248である。月は0.0549という有名な値を取る。
太陽系の小惑星のほとんどは0から0.35の間に軌道離心率を持ち、その平均は0.17である。比較的大きい値を持つものは、木星の重力や過去の衝突の影響である。
彗星の軌道離心率はほぼ1に近い。周期彗星は非常に長細い楕円軌道で、その軌道離心率は1よりわずかに小さい。ハレー彗星の軌道離心率は0.967である。非周期彗星は放物線に近い軌道を描き、やはりその軌道離心率は1に近い。例えばヘール・ボップ彗星、マックノート彗星の軌道離心率はそれぞれ0.995086、1.000030である。ヘール・ボップ彗星の値は1より小さいため実は楕円軌道で、紀元4380年には再び現れる。一方マックノート彗星は双曲線軌道で、太陽系から無限に遠く離れてゆく。
海王星の最も大きな衛星であるトリトンは、太陽系の中で最も小さな軌道離心率を持ち、その軌道はほぼ円である。