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『'''火曜クラブ'''』(かようクラブ、 |
『'''火曜クラブ'''』(かようクラブ、'''原題:The Thirteen Problems''' 英題:The Tuesday Club Mystery)は[[1932年]]に刊行された[[アガサ・クリスティ]]作品の短編集。題名は『'''ミス・マープルと13の謎'''』とも訳される。[[ミス・マープル]]の初登場作『火曜クラブ』を含むマープルものの短編[[推理小説]]13編が収録されている。 |
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== 概要 == |
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[[1927年]]に雑誌「スケッチ誌」に短編「火曜クラブ」を皮切りに連載されたマープルもの短編12編に、オリジナルの1篇が加筆され刊行された短編集である。マープルの初登場作品ではあるが、短編集として刊行された2年前の[[1930年]]に長編『[[牧師館の殺人]]』が刊行されたため、本作は初登場作品と見なされないことが多い。 |
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本作は後述する3つの場面より構成されるが、最後の『溺死』以外は6名の登場人物が各々が真実を知る迷宮入り事件(ないし、それに類するもの)を話し、残りのメンバーがそれを推理するが、結局全てマープルだけが解いてしまうという展開である。ただし、マープルが話す事件は誰にも解けず、『バンガロー事件』は会の最中に推理が披露されない。 |
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本作品は大きく3つの場面よりなる。 |
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; 『火曜クラブ』~『聖ペテロの指のあと』 |
; 『火曜クラブ』~『聖ペテロの指のあと』 |
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: マープルの甥レイモンド・ウェストの |
: マープルの甥レイモンド・ウェストが彼女の家を借りて主催する火曜クラブが舞台。 |
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; 『青いゼラニウム』~『バンガロー事件』 |
; 『青いゼラニウム』~『バンガロー事件』 |
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: 火曜クラブのメンバーであるサー・ヘンリーによってマープルが客として招かれたバントリー夫妻の晩餐会が舞台。 |
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: 前期、後期で推理に参加するメンバーは変わるものの基本的な構成は同じであり、まず集まった人々の内の一人が自分の知る事件の概要を話し、他のメンバーが自分なりの推理を発表する。そして最後にマープルが推理を披露、それが正しかったことが証明されるという流れになっている。 |
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: 例外としてマープルが事件を提供する側に回った『聖ペテロの指のあと』及び『クリスマスの悲劇』では誰も真相を言い当てることができずマープル自身が真相を語り、『バンガロー事件』ではある理由によって会の最中には推理を話さなかった。 |
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; 『溺死』 |
; 『溺死』 |
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: 唯一進行形の事件が扱われている。 |
: 唯一進行形の事件が扱われている。 |
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また、その形式と知名度から[[安楽椅子探偵]]作品の代表作にも挙げられる。 |
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== マープルの初登場作 == |
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上述の通りミス・マープルの初登場作品は本作に収録された『火曜クラブ』であるが、本短編集が刊行されるより早い[[1930年]]にマープル作品最初の長編『牧師館の殺人』が刊行されているため、こちらが初登場作と見なされる場合もある。 |
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== 登場人物 == |
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=== 共通の登場人物 === |
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; ミス・マープル |
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: 主人公の老嬢。参加者の話す迷宮入り事件を次々と解く。詳細は[[ミス・マープル]]を参照。 |
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; ヘンリー・クリザリング |
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: 元スコットランドヤード警視総監。作中ではもっぱらサー・ヘンリーと呼ばれている。 |
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=== 火曜ナイトクラブ === |
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; レイモンド・ウェスト |
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: マープルの甥。作家。火曜ナイトクラブの発案者。 |
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; ペンダー博士 |
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: 教区の老牧師。 |
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; ジョイス・ランプリエール |
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: 女流画家。 |
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; ペサリック |
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: 弁護士。 |
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=== バントリー夫妻の晩餐会 === |
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; アーサー・バントリー |
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: 退役軍人(大佐)。サー・ヘンリーの友人。妻と共に『[[書斎の死体]]』の登場人物でもある。 |
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; ドリー・バントリー |
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: アーサーの妻。ミセス・バントリー。 |
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; ロイド |
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: 医者。 |
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; ジェーン・ヘリア |
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: 人気女優。 |
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: サー・ヘンリーの話。夫妻とコンパニオンの3人が夕食後に苦しみだし、妻はそのまま帰らぬ人に。当初、食中毒事件と思われていたが妻の体内からは砒素が検出される。 |
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: ペンダー博士の話。不吉な噂を付き纏う屋敷を買った男。招待された従兄が、いわく付きのアスタルテの祠で皆を前に刺殺される。 |
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: レイモンドの話。レイモンドはコーンウォールの海岸に金塊を積んだ沈没船が眠っていると聞きそこに向かうが・・・。 |
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: ジョイスの話。コーンウォールにいたジョイスは白い敷石の舗道に点々とした赤い血が付いていることに気づく。 |
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: ペサリックの話。金庫で厳重に預かっていた遺言状が白紙に。動機がある者は機会が無く、機会がある者は動機が無い。 |
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: マープルの話。マープルの姪に夫殺しの噂が。マープルは姪の名誉を守るため、真相を調べる。 |
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: バントリー大佐の話。大佐の友人の妻は心霊術師に死を予言されていた。そして満月の夜、予言通りに死んだ彼女の部屋の壁紙のゼラニウムは一輪だけ青く変わっていた。 |
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: ロイド医師の話。海外保養地で資産家とその話し相手という2人の老嬢を見かける。そして海水浴中に片方が溺死するが、死んだのは話し相手の方だった。 |
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: サー・ヘンリーの話。ローゼン博士はある犯罪組織を潰したが、それによって報復を受け殺された。4人の容疑者のうち犯人は誰なのか? |
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: マープルの話。水治療院を訪れたマープルは、そこで出会った夫が妻を殺すと予見する。そして、予想通りに妻が殺されるが夫にはアリバイがあった。 |
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: ミセス・バントリーの話。ある資産家で食中毒が起こり、女の子が一人死亡する。原因は、食卓に紛れ込んだ[[ジギタリス]]の葉だとわかったが・・・。 |
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: ジェーンの話。彼女が地方巡業していた頃、手紙を貰ったという青年が現われて・・・。 |
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: 唯一進行形の話。ある身重の娘が溺死体で発見され自殺と思われたが、マープルはヘンリーの下に赴き、これは殺人事件であると述べる。 |
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== 映像化 == |
== 映像化 == |
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『[[アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル]]』において『金塊事件』、『青いゼラニウム』、『動機対機会』がそれぞれ第14話『金塊事件』、第15話『青いゼラニウム』、第27話『動機と機会』としてアニメ化された。 |
『[[アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル]]』において『金塊事件』、『青いゼラニウム』、『動機対機会』がそれぞれ第14話『金塊事件』、第15話『青いゼラニウム』、第27話『動機と機会』としてアニメ化された。 |
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[[Category:ミス・マープルシリーズ|かようくらふ]] |
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2008年11月14日 (金) 09:44時点における版
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『火曜クラブ』(かようクラブ、原題:The Thirteen Problems 英題:The Tuesday Club Mystery)は1932年に刊行されたアガサ・クリスティ作品の短編集。題名は『ミス・マープルと13の謎』とも訳される。ミス・マープルの初登場作『火曜クラブ』を含むマープルものの短編推理小説13編が収録されている。
概要
1927年に雑誌「スケッチ誌」に短編「火曜クラブ」を皮切りに連載されたマープルもの短編12編に、オリジナルの1篇が加筆され刊行された短編集である。マープルの初登場作品ではあるが、短編集として刊行された2年前の1930年に長編『牧師館の殺人』が刊行されたため、本作は初登場作品と見なされないことが多い。
本作は後述する3つの場面より構成されるが、最後の『溺死』以外は6名の登場人物が各々が真実を知る迷宮入り事件(ないし、それに類するもの)を話し、残りのメンバーがそれを推理するが、結局全てマープルだけが解いてしまうという展開である。ただし、マープルが話す事件は誰にも解けず、『バンガロー事件』は会の最中に推理が披露されない。
- 『火曜クラブ』~『聖ペテロの指のあと』
- マープルの甥レイモンド・ウェストが彼女の家を借りて主催する火曜クラブが舞台。
- 『青いゼラニウム』~『バンガロー事件』
- 火曜クラブのメンバーであるサー・ヘンリーによってマープルが客として招かれたバントリー夫妻の晩餐会が舞台。
- 『溺死』
- 唯一進行形の事件が扱われている。
また、その形式と知名度から安楽椅子探偵作品の代表作にも挙げられる。
登場人物
共通の登場人物
- ミス・マープル
- 主人公の老嬢。参加者の話す迷宮入り事件を次々と解く。詳細はミス・マープルを参照。
- ヘンリー・クリザリング
- 元スコットランドヤード警視総監。作中ではもっぱらサー・ヘンリーと呼ばれている。
火曜ナイトクラブ
- レイモンド・ウェスト
- マープルの甥。作家。火曜ナイトクラブの発案者。
- ペンダー博士
- 教区の老牧師。
- ジョイス・ランプリエール
- 女流画家。
- ペサリック
- 弁護士。
バントリー夫妻の晩餐会
- アーサー・バントリー
- 退役軍人(大佐)。サー・ヘンリーの友人。妻と共に『書斎の死体』の登場人物でもある。
- ドリー・バントリー
- アーサーの妻。ミセス・バントリー。
- ロイド
- 医者。
- ジェーン・ヘリア
- 人気女優。
収録作品
- 火曜クラブ(火曜ナイトクラブ) - The Tuesday Night Club
- サー・ヘンリーの話。夫妻とコンパニオンの3人が夕食後に苦しみだし、妻はそのまま帰らぬ人に。当初、食中毒事件と思われていたが妻の体内からは砒素が検出される。
- アスタルテの祠(アスターテの祠) - The Idol House of Astarte
- ペンダー博士の話。不吉な噂を付き纏う屋敷を買った男。招待された従兄が、いわく付きのアスタルテの祠で皆を前に刺殺される。
- 金塊事件(金塊) - Ingots of Gold
- レイモンドの話。レイモンドはコーンウォールの海岸に金塊を積んだ沈没船が眠っていると聞きそこに向かうが・・・。
- 舗道の血痕(血に染まった敷石) - The Bloodstained Pavement
- ジョイスの話。コーンウォールにいたジョイスは白い敷石の舗道に点々とした赤い血が付いていることに気づく。
- 動機対機会 - Motive v Opportunity
- ペサリックの話。金庫で厳重に預かっていた遺言状が白紙に。動機がある者は機会が無く、機会がある者は動機が無い。
- 聖ペテロの指のあと(聖ペテロの指の跡) - The Thumb Mark of St Peter
- マープルの話。マープルの姪に夫殺しの噂が。マープルは姪の名誉を守るため、真相を調べる。
- 青いゼラニウム(青いジェラニウム) - The Blue Geranium
- バントリー大佐の話。大佐の友人の妻は心霊術師に死を予言されていた。そして満月の夜、予言通りに死んだ彼女の部屋の壁紙のゼラニウムは一輪だけ青く変わっていた。
- 二人の老嬢(お相手役) - The Companion
- ロイド医師の話。海外保養地で資産家とその話し相手という2人の老嬢を見かける。そして海水浴中に片方が溺死するが、死んだのは話し相手の方だった。
- 四人の容疑者 - The Four Suspects
- サー・ヘンリーの話。ローゼン博士はある犯罪組織を潰したが、それによって報復を受け殺された。4人の容疑者のうち犯人は誰なのか?
- クリスマスの悲劇 - A Christmas Tragedy
- マープルの話。水治療院を訪れたマープルは、そこで出会った夫が妻を殺すと予見する。そして、予想通りに妻が殺されるが夫にはアリバイがあった。
- 毒草(死の草) - The Herb of Death
- ミセス・バントリーの話。ある資産家で食中毒が起こり、女の子が一人死亡する。原因は、食卓に紛れ込んだジギタリスの葉だとわかったが・・・。
- バンガロー事件 - The Affair at the Bungalow
- ジェーンの話。彼女が地方巡業していた頃、手紙を貰ったという青年が現われて・・・。
- 溺死 - Death by Drowning
- 唯一進行形の話。ある身重の娘が溺死体で発見され自殺と思われたが、マープルはヘンリーの下に赴き、これは殺人事件であると述べる。
映像化
『アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル』において『金塊事件』、『青いゼラニウム』、『動機対機会』がそれぞれ第14話『金塊事件』、第15話『青いゼラニウム』、第27話『動機と機会』としてアニメ化された。