「アルギン酸」の版間の差分

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'''アルギン酸'''(アルギンさん)は、[[褐藻]]などに含まれる[[多糖類]]で、[[食物繊維]]の一種である。ほかに[[紅藻]]のサンゴモなどにも含まれる。また一部の[[細菌]]([[アゾトバクター]]
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など)が部分的に[[酢酸]][[エステル]]化されたアルギン酸を生成するが、これによる工業的生産はまだ成功していない。


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==構造==
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==種類==
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==利用==
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日本ではアルギン酸が[[既存添加物]]とされ、アルギン酸[[プロピレングリコール]][[エステル]]とアルギン酸ナトリウムが[[食品添加物]]に指定されている(他のアルギン酸塩についても検討中)。国際的な整合性から2006年12月26日にアルギン酸カリウム・アルギン酸カルシウム・アルギン酸アンモニウムの種類が食品添加物に指定されました。これらは食品工業で、スープ・飲料やゼリーなどの[[増粘安定剤]]、[[ゲル化剤]]として使われる。食物繊維としてダイエット食品にも使われる。また安定剤として[[化粧品]]にも用いられる。
日本ではアルギン酸が[[既存添加物]]とされ、アルギン酸[[プロピレングリコール]][[エステル]]とアルギン酸ナトリウムが[[食品添加物]]に指定されている(他のアルギン酸塩についても検討中)。国際的な整合性から2006年12月26日にアルギン酸カリウム・アルギン酸カルシウム・アルギン酸アンモニウムの3種類が食品添加物に指定されました。これらは食品工業で、スープ・飲料やゼリーなどの[[増粘安定剤]]、[[ゲル化剤]]として使われる。食物繊維としてダイエット食品にも使われる。また安定剤として[[化粧品]]にも用いられる。


医療では、アルギン酸塩が歯科材料として、アルギン酸の繊維状ゲルが手術糸に、またアルギン酸カルシウムゲルは創傷被覆材に用いられる。
医療では、アルギン酸塩が歯科材料として、アルギン酸の繊維状ゲルが手術糸に、またアルギン酸カルシウムゲルは創傷被覆材に用いられる。

2008年11月6日 (木) 04:34時点における版

アルギン酸
別名E400
分子式(C6H8O6)n
分子量10000 - 600000
CAS登録番号9005-32-7

アルギン酸(アルギンさん)は、褐藻などに含まれる多糖類で、食物繊維の一種である。ほかに紅藻のサンゴモなどにも含まれる。また一部の細菌アゾトバクター など)が部分的に酢酸エステル化されたアルギン酸を生成するが、これによる工業的生産はまだ成功していない。

純粋のアルギン酸は白ないし淡黄色で、繊維状、顆粒状または粉末状の形態をとる。に不溶性であるが、アルギン酸ナトリウムなどの可溶性(アルギンと総称される)として抽出され、食品添加物その他の目的で利用される。

構造

ß-D-マンヌロン酸 (M) とそのC-5エピマーであるα-L-グルロン酸 (G) の2種のブロック(いずれもカルボキシル基をもつ単糖)が (1-4)-結合した直線状のポリマーである。各ブロックの量比は起源により異なる。MとGが交互につながったブロックが最も柔軟性があり、中性に近い pH で溶けやすい。Gからなるブロックは固く、6残基以上からなるGブロックは2価カチオン(Ca2+など)と安定な複合体をつくって3次元ゲルを形成する。またアルギン酸は低い pH で酸性の繊維状ゲルを形成する。これらのゲルの中で、分子間の結合をつくるのは主にホモポリマーブロック(MまたはGの繰り返し構造)であり、ゲル強度を決めるのはGブロックの含有比率である。

種類

商業的に利用されるアルギンは、ジャイアントケルプなど種々の褐藻から抽出される。起源によって上記のように性質が異なる。

利用

日本ではアルギン酸が既存添加物とされ、アルギン酸プロピレングリコールエステルとアルギン酸ナトリウムが食品添加物に指定されている(他のアルギン酸塩についても検討中)。国際的な整合性から2006年12月26日にアルギン酸カリウム・アルギン酸カルシウム・アルギン酸アンモニウムの3種類が食品添加物に指定されました。これらは食品工業で、スープ・飲料やゼリーなどの増粘安定剤ゲル化剤として使われる。食物繊維としてダイエット食品にも使われる。また安定剤として化粧品にも用いられる。

医療では、アルギン酸塩が歯科材料として、アルギン酸の繊維状ゲルが手術糸に、またアルギン酸カルシウムゲルは創傷被覆材に用いられる。

アルギン酸塩は製紙・繊維工業でも使われる。

アルギン酸カルシウムは細胞酵素などの固定化・カプセル化にも使われ、発酵・化学産業で用いられる。