アルギン酸ナトリウム

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アルギン酸ナトリウム
識別情報
CAS登録番号 9005-38-3
E番号 E401 (増粘剤、安定剤、乳化剤)
特性
化学式 (NaC6H7O6)n
外観 白色~薄い黄色の粉末
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

アルギン酸ナトリウム(アルギンさんナトリウム、: Sodium alginate)は、海藻(褐藻)に含まれる多糖類の一種で、食物繊維のひとつ。海藻に含まれるアルギン酸を抽出、精製した後、ナトリウムで中和して得られる。

起源[編集]

商業的に利用されるアルギン酸類は、全て海藻(褐藻類)からの抽出によって製造されている。

1833年、英国のE. C. C. Stanfordが褐藻類に含まれる粘質物の中に、アルカリに可溶かつ酸性で沈殿する物質を見出し、Alginic Acid(アルギン酸)と命名した[1]

1930年、L. H. Cretcherらはアルギン酸の構造をD-マンヌロン酸の重合体であるとし[2][3]、その後1958年にD. W. DrummondらがL-グルロン酸を含む共重合体であることを明らかにした[4]。アルギン酸ナトリウムは、これら重合体のナトリウム塩である。

褐藻類は世界中で3,000種類以上あると言われるが、その中でアルギン酸の工業的生産に利用しうる原料海藻は、大型で生長力の旺盛な数種類に限られる。多くの場合、天然に産する海藻を収穫して利用しているが、中国では養殖したコンブを原料にアルギン酸を製造している。

構造[編集]

2種類のウロン酸(β-D-マンヌロン酸(以下Mと略す)とα-L-グルロン酸(以下Gと略す))がピラノース型で1,4-グリコシド結合し直鎖状に重合した構造を持っている。MとGの構成比は一様でなく、原料海藻の種類や部位によって異なる。またアルギン酸の分子鎖の中で、MとGはブロック構造を形成して存在する。すなわちMのみで構成されるブロック(Mブロック)、Gのみのブロック(Gブロック)、MとGが混ざり合ったブロック(MGブロック)の3種類のブロックが、互いに連結して鎖状高分子を形成している[5]

アルギン酸ナトリウムの重合度も一定ではない。海藻に含まれる状態では非常に大きな分子であり、数万ユニットのウロン酸が重合していると考えられるが、海藻中から抽出され、加工される中で分解が進み、重合度も低くなる。一般に流通しているアルギン酸ナトリウムの重合度は数千~2万(分子量にして100万~400万)程度である。食物繊維素材として加工されたアルギン酸ナトリウムには、重合度200~300(分子量として約4~5万)という超低分子の物も流通している。

性質[編集]

マグネシウムイオンやカルシウムイオンを添加するとゲル化する性質がある。

食品添加物として増粘多糖類およびゲル化剤、医薬品として胃粘膜保護用剤、歯科印象剤、染料の捺染用の糊、紙のコーティング剤など、広い用途で利用されている。

ラットに対する動物実験で、アルギン酸ナトリウムには、水溶性食物繊維の粘性による血糖上昇抑制効果、および二糖類分解酵素の阻害効果による血糖上昇抑制効果が認められたとする研究がある[6]

塩化カルシウムとの反応[編集]

塩化カルシウム水溶液にアルギン酸ナトリウム水溶液を一滴ずつ入れると、アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムが反応し、アルギン酸ナトリウム水溶液の表面にアルギン酸カルシウム膜が形成される。そのため、アルギン酸ナトリウム水溶液が球状になり、二つの液は混ざらない。いわゆる人造イクラである。なお、小中学生等の自由研究向けに市販される化学実験のキットでは、塩化カルシウムより安全性の高い乳酸カルシウムが用いられる。

また、アルギン酸ナトリウム水溶液を滴下する代わりにレードルを使って大量に入れることで、手でつかむことのできる水「Ooho!: Edible water bottle)」を作ることが可能である。

臨床応用[編集]

脚注[編集]

  1. ^ “NOTES AND NEWS”. Science ns-2 (29): 253–254. (1883-08-24). doi:10.1126/science.ns-2.29.253. ISSN 0036-8075. http://doi.org/10.1126/science.ns-2.29.253. 
  2. ^ Nelson, William L.; Cretcher, Leonard H. (1930-09). “THE PREPARATION OF CERTAIN GAMMA-LACTONES”. Journal of the American Chemical Society 52 (9): 3702–3704. doi:10.1021/ja01372a042. ISSN 0002-7863. http://doi.org/10.1021/ja01372a042. 
  3. ^ Nelson, William L.; Cretcher, Leonard H. (1929-06). “THE ALGINIC ACID FROM MACROCYSTIS PYRIFERA1,2”. Journal of the American Chemical Society 51 (6): 1914–1922. doi:10.1021/ja01381a045. ISSN 0002-7863. http://doi.org/10.1021/ja01381a045. 
  4. ^ Drummond, D. W.; Hirst, E. L.; Percival, Elizabeth (1962). “232. The constitution of alginic acid”. Journal of the Chemical Society (Resumed): 1208. doi:10.1039/jr9620001208. ISSN 0368-1769. http://doi.org/10.1039/jr9620001208. 
  5. ^ Haug, Arne; Larsen, Bjørn; Smidsrød, Olav; Haug, Arne; Hagen, G. (1967). “Alkaline Degradation of Alginate.”. Acta Chemica Scandinavica 21: 2859–2870. doi:10.3891/acta.chem.scand.21-2859. ISSN 0904-213X. http://doi.org/10.3891/acta.chem.scand.21-2859. 
  6. ^ Vibrio alginolyticus SUN53によるアルギン酸小分子分解物のラット小腸粘膜二糖類水解酵素に対する阻害作用、中村禎子ほか、日本食物繊維学会誌 Vol.12 (2008) No.1 P 9-15

関連項目[編集]