齋藤朔郎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
斎藤朔郎から転送)

齋藤 朔郎(さいとう きたろう、1900年明治33年〉1月31日 - 1964年昭和39年〉8月9日)は、日本の裁判官弁護士最高裁判所判事大阪府出身。

経歴[編集]

1923年(大正12年)12月東京帝国大学法学部在学中に高等文官試験行政科・司法科の双方に合格し、翌1924年(大正13年)に東京帝国大学を卒業[1]

戦前、大阪地方裁判所民事部に勤務した後に、司法省民事局に出向して会社更生法の基礎を作成[1]1941年(昭和16年)8月に司法大臣官房人事課長となり、1945年(昭和20年)5月に満州国にて最高法院次長、司法部次長を務めた。敗戦によりシベリア抑留となる[1]

帰国後は一旦は弁護士になるが、1949年(昭和24年)4月に再び裁判官となり、東京高裁刑事部に勤務した[1]違法収集証拠排除法則を示し、適正手続きを重視する姿勢を貫き、「斎藤さんのところは、よく無罪判決が出る」と噂された[1]

大阪高等裁判所部総括を経て、1956年(昭和31年)12月、参議院法制局長に就任[1]

1962年(昭和37年)5月29日に最高裁判事に任命(第一小法廷に所属)。松川事件第二次上告審では無罪判決支持に立ち、有罪説の下飯坂潤夫と激しく論争した[2]

在任中の1964年(昭和39年)8月9日に東京国立第一病院で胃穿孔正腹膜炎で64歳で死去[3]

著作[編集]

著書[編集]

  • 『事実認定論』有斐閣、1954年5月。 NCID BN07230569全国書誌番号:54006039 
    • 『事実認定論』(オンデマンド版)有斐閣、2001年11月。 NCID BA69816664 
  • 『会議の秩序維持について』全国都道府県議会議長会事務局〈議会職員執務資料シリーズ No.44〉、1960年12月。全国書誌番号:21388071 
  • 『刑事訴訟論集』有斐閣、1965年7月。 NCID BN06956751全国書誌番号:65010899 
  • 『裁判官随想』有斐閣、1966年7月。 NCID BN06272712全国書誌番号:66006266 

論文[編集]

  • 「刑事訴訟の控訴審の性格について」『法曹時報』第3巻第4号、法曹会、1951年4月、47-59頁、NAID 40003496127 
  • 「裁判所侮辱制裁法案の公聴会の公述意見について」『法曹時報』第3巻第8号、法曹会、1951年8月、50-57頁、NAID 40003495982 
  • 「公訴事実の同一性について」『法曹時報』第4巻第9号、法曹会、1952年9月、26-47頁、NAID 40003496099 
  • 「非常上告に関する判例は逆行すべきか」『ジュリスト』第35号、有斐閣、1953年6月、26-30頁、NAID 40001762420 
  • 「法服論議」『ジュリスト』第42号、有斐閣、1953年9月、24-26頁、NAID 40001762477 
  • 「裁判と裁判官の中立性」『法律時報』第26巻第2号、日本評論社、1954年2月、124-132頁、NAID 40003513935 
  • 「不利益変更禁止の存廃について」『ジュリスト』第55号、有斐閣、1954年4月、2-5頁、NAID 40001762451 
  • 「証拠収集手続の違法と証拠能力の関係」『法曹時報』第6巻第9号、法曹会、1954年9月、1076-1104頁、NAID 40003496049 
  • 「裁判官の良心」『ジュリスト』第68号、有斐閣、1954年10月、14-18頁、NAID 40001761830 
  • 「対質と「面通し」」『判例時報』第44号、判例時報社、1955年2月、1125-1126頁、NAID 40003195608 
  • 「民刑訴訟における証拠調の限度」『法曹時報』第7巻第4号、法曹会、1955年4月、413-437頁、NAID 40003493440 
  • 「悪法再論議」『ジュリスト』第85号、有斐閣、1955年7月、NAID 40001745664 
  • 「自由心証の運用について」『法曹時報』第7巻第8号、法曹会、1955年8月、909-932頁、NAID 40003493449 
  • 「法と国家権力」『法哲学年報』第1955号、日本法哲学会、1956年2月、1-22頁、NAID 130003426852 
  • 「裁判の抱束力」『ジュリスト』第99号、有斐閣、1956年2月、NAID 40001745769 
  • 「蓋然性の濫用」『法曹時報』第8巻第6号、法曹会、1956年6月、764-786頁、NAID 40003493481 
  • 「東独の刑事訴訟法」『ジュリスト』第114号、有斐閣、1956年9月、NAID 40001745952 
  • 「事案の真相の究明」『法曹時報』第10巻第2号、法曹会、1958年2月、145-171頁、NAID 40003493547 
  • 「法原則の作用について」『ジュリスト』第217号、有斐閣、1961年1月、NAID 40001747040 

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 野村二郎 1986, p. 102.
  2. ^ 野村二郎 1986, p. 104.
  3. ^ 野村二郎 1986, p. 105.

参考文献[編集]

外部リンク[編集]