女性韻
女性韻(feminine rhyme)は、詩行の終わりに2つかそれ以上の音節を押韻したもので、通常、最後の音節はアクセントの弱い音節になる。二重韻(double rhyme)とも呼ばれる。
英語詩
[編集]女性韻は英語詩においては、比較的稀で、通常は特殊効果として用いられる。しかし、ヒューディブラス的という詩形では、その喜劇的要素を表現するのに女性韻は重用され、また、リメリック詩でもユーモアを表すために風変わりな女性韻を使うことが多い。アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトの詩のほとんどは女性韻を用いている。
ウィリアム・シェイクスピアの『ソネット集』の中でもユニークな第20番は、女性韻のみを使って書かれている。
- A woman’s face with nature’s own hand painted,
- Hast thou, the master mistress of my passion;
- A woman’s gentle heart, but not acquainted
- With shifting change, as is false women’s fashion...
- But since she prick’d thee out for women’s pleasure,
- Mine be thy love and thy love’s use their treasure.
- Gilding the object whereupon it gazeth
- Much steals men's eyes and women's souls amazeth
フランス語詩
[編集]フランス語詩における女性韻は、最後の音節が無音の「e」で構成されているものを言う。脚韻を成す語がたとえ男性名詞や形容詞男性形であっても、韻としては女性韻として扱われる。例を挙げると、
- Souvent, pour s'amuser, les hommes d'équipage
- Prennent des albatros, vastes oiseaux des mers,
- Qui suivent, indolents compagnons de voyages,
- Le navire glissant sur les gouffres amers.
- (ボードレール、『信天翁』)
この詩行において、1行目と3行目に見られる脚韻が女性韻であるが、équipages(乗組員)、voyages(旅)はいずれも男性名詞複数形である。これにより、文法上の性と脚韻の性は必ずしも一致しないということがわかる。更に述べると、上の詩行の2行目と4行目は男性韻を構成しているが、mers(海)は女性名詞複数形である。このように最後の音節が無音のeで構成されない女性名詞は男性韻を構成することとなるのも、上で述べた通りである。
古典的な詩法に従って作られたフランス語詩では、男性韻と女性韻は交互に用いることが原則とされていた。脚韻の配置としては、上で例として挙げたように、男性韻と女性韻を交互に配置する交韻(仏:rimes croisées)や男性韻と女性韻を2行ずつ配する平韻(仏:rimes plates)または連続韻(仏:rimes suivies)、同一の脚韻を持つ2行が平韻の2行を挟むように配される抱擁韻(仏:rimes embrassées)がある。
- 平韻の例
- Prenez garde, Seigneur. Vos invincibles mains
- Ont de monstres sans nombre affranchi les humains.
- Mais tout n'est pas détruit ; et vous en laissez vivre
- Un... Votre fils, Seigneur, me défend de poursuivre.
- 抱擁韻の例
- Quels secrets dans son cœur brûle ma jeune amie,
- Ame par les doux masque aspirant une fleur?
- De quels vains aliments sa naïve chaleur
- Fait ce rayonnement d'une femme endormie?
- (ヴァレリー、『眠る女』)