奈良県の柿生産者による総理大臣官邸表敬訪問
奈良県の柿生産者による総理大臣官邸表敬訪問(ならけんのかきせいさんしゃによるそうりだいじんかんていひょうけいほうもん)では、奈良県五條市の特産物である柿を内閣総理大臣に贈呈するために、奈良県の柿生産者が内閣総理大臣官邸を訪れる行事について述べる。
概要
[編集]2013年度から毎年、奈良県農産物生産・流通部会果樹部会が中心となって総理大臣官邸の表敬訪問が行われている。これは五條市を中心とした「奈良の柿」の積極的なPR戦略の一環であり、「奈良の柿レディ」と呼ばれる女性から首相へと柿の贈呈が行われる[1]。また、表敬訪問が始まった安倍政権以来、柿を受け取った首相は柿にまつわる俳句を読むのが慣例となっている(後述)[2]。
背景
[編集]奈良県五條市の吉野地域は柿、梅、梨などの果樹栽培が非常に盛んな地域であるが[3]、特に旧西吉野町を中心として広大な柿の果樹園が広がり、全国有数の柿生産地となっている[4]。実際に生産量全国2位である奈良県の柿生産量のうち95%が五條市で生産され、市町村単位では全国1位の生産量を誇る[3]。品種は甘柿では「富有」、渋柿では「平核無」と「刀根早生」の生産が盛んである[5]。
こうした状況から、五條市では「日本一の柿のまち」としてPRを行なっており[4]、奈良県と一体となって、特に優れた地場産品をリーディング品目と位置付けて「奈良県プレミアムセレクト」として認証する制度を設けたり、柿博物館を運営したりと、積極的な宣伝活動を行なっているが、その一環として2013年度から奈良県農産物生産・流通部会果樹部会によって総理大臣官邸の表敬訪問が行われているのである[1]。
また2012年から2020年まで総理大臣を務めた安倍晋三は7年間連続で首相官邸表敬訪問を受け、退任後も衆議院会館議員事務所で表敬訪問を受けた。こうした経緯から、2022年に銃撃され死亡した際には五條市役所内で追悼植樹が行われた。植樹された柿は安倍が好んだ渋柿「平核無」であった[6]。
総理大臣の「一句」
[編集]表敬訪問を受けた際、首相は正岡子規が奈良旅行の際に詠んだとされる俳句、「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」に擬えて俳句を詠むのが慣例となっている[7]。
首相 | 俳句 | 備考 | 出典 | |
---|---|---|---|---|
2013(平成25)年度 | 安倍晋三 | |||
2014(平成26)年度 | 「柿くえば 景気良くなる 奈良のまち」 | [8] | ||
2015(平成27)年度 | 「柿くえば さらに良くなる 奈良のまち」 | [9] | ||
2016(平成28)年度 | 「柿くえば ふところ豊か 奈良のまち」 | 農産物の輸出拡大支援を反映したもの | [10] | |
2017(平成29)年度 | 「柿くえば 心豊かに 奈良のまち」 | [11] | ||
2018(平成30)年度 | 「柿くえば 笑顔広がる 奈良のまち」 | [12] | ||
2019(令和元)年度 | 「柿くえば 令和輝く 奈良のまち」 | 改元し年号が令和になったことにちなむ | [13][14] | |
2020(令和2)年度 | 菅義偉 | 「柿くえば ふるさと思う 奈良のまち」 | 秋田県出身で地方重視の姿勢を掲げていることを反映したもの | [2][15] |
2021(令和3)年度 | 岸田文雄 | 「柿くえば コロナ打ち勝つ 奈良のまち」 | 新型コロナウイルス感染症の収束を祈念したもの | [16][17] |
2022(令和4)年度 | 「柿くえば 観光復活 奈良のまち」 | 俳句を披露したのち、全国的な観光業支援について触れた | [18] | |
2023(令和5)年度 | 「柿くえば よりよい明日へ 奈良のまち」 | 同年10月23日の臨時国会にて行われた所信表明演説の一節から | [19][20] | |
2024(令和6)年度 | 石破茂 | 「奈良の柿 郷にも浦にも 茂る秋」 | 正岡子規の「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」に擬えて俳句を読む慣例を初めて覆した | [21] |
-
2013年10月22日
-
2020年10月15日
-
2022年10月14日
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b “SNS活用や生産者団体との連携で 「日本一の柿のまち」を広くアピール”. アカデミア (135). (2020) .
- ^ a b “菅総理が初の食レポ 奈良の柿食べ俳句も披露”. テレ朝news. 2021年11月28日閲覧。
- ^ a b “管内の産地について/奈良県公式ホームページ”. www.pref.nara.jp. 2021年11月28日閲覧。
- ^ a b “日本一の柿のまち~五條市~|五條市”. www.city.gojo.lg.jp. 2021年11月28日閲覧。
- ^ “五條市で作られている柿の代表的な品種|五條市”. www.city.gojo.lg.jp. 2021年11月28日閲覧。
- ^ “No.246故安倍晋三元首相追悼植樹式|五條市”. www.city.gojo.lg.jp. 2023年10月19日閲覧。
- ^ 日本放送協会. “「柿食えば コロナ打ち勝つ~」首相 奈良の柿贈られ一句披露”. NHKニュース. 2021年11月28日閲覧。
- ^ “【平成26年11月】|五條市”. www.city.gojo.lg.jp. 2021年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月28日閲覧。
- ^ “【平成27年10月】|五條市”. www.city.gojo.lg.jp. 2022年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月28日閲覧。
- ^ “No.130 総理官邸表敬訪問|五條市”. www.city.gojo.lg.jp. 2021年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月28日閲覧。
- ^ “No.160 総理官邸表敬訪問|五條市”. www.city.gojo.lg.jp. 2021年11月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月28日閲覧。
- ^ “広報五條 平成30年11月号No.841 | nara ebooks”. www.nara-ebooks.jp. 2021年11月28日閲覧。
- ^ “No.204 首相官邸表敬訪問|五條市”. www.city.gojo.lg.jp. 2021年11月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月28日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2019年11月14日). “「柿食えば 令和輝く 奈良の町」 安倍首相が奈良の柿で一句”. 産経ニュース. 2022年10月21日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2020年10月15日). “菅首相の俳句、安倍氏と比べて「どう?」 「柿食えば ふるさと想う 奈良のまち」”. 産経ニュース. 2022年10月21日閲覧。
- ^ “「柿食えば コロナ打ち勝つ 奈良のまち」 柿贈呈で首相が一句:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2021年11月25日). 2022年10月21日閲覧。
- ^ (日本語) 岸田総理が初の食リポ 高市政調会長が思わず「上手」(2021年11月25日) 2022年10月21日閲覧。
- ^ “「ジューシーでとろっと甘い」奈良の柿、首相が一句「柿食えば…」:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2022年10月14日). 2022年10月21日閲覧。
- ^ “「柿食えば……」首相、奈良の柿を試食し恒例の1句 所信表明を引用(朝日新聞デジタル)”. Yahoo!ニュース. 2023年11月2日閲覧。
- ^ “令和5年10月23日 第二百十二回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説 | 総理の演説・記者会見など”. 首相官邸ホームページ. 2023年11月2日閲覧。
- ^ “「奈良の柿 郷にも浦にも 茂る秋」 柿の贈呈受けた石破総理が一句披露”. TBS NEW SDIG (2024年11月14日). 2024年11月14日閲覧。