和分差分学
数学の一部門としての差分法(さぶんほう、英: difference calculus, calculus of finite difference)あるいは和分差分学(わぶんさぶんがく、英: discrete calculus)は、(微分法および積分法を柱とする)微分積分学の離散版にあたる。微分積分学が(極限の概念を定式化し得る)連続的な空間上の函数(特に実数直線上で定義された函数)に興味が持たれるのに対して、和分差分学では離散的な空間、特に整数全体の成す集合 ℤ 上で定義された函数(すなわち数列)に注目する。差分法は級数の計算にも応用される。
差分および和分
[編集]よく知られた連続的な微分法は
で定義される微分作用素 D に基づくのに対し、離散的な差分法は
で定義される差分作用素 Δ に基づく。
逆演算は、連続的な微分積分学における不定積分に対応するものとして、離散的な不定和分 ∑f(x) が差分作用素に対して
を満足するものとして定義される。ただし、δ は連続的な微分積分学における D に対する d と同様の意味で(ここでは)Δ に対する符牒である。また C は整数 x に対して定数となるような任意の函数 (C(x + 1) = C(x)) とする。
定積分に相当する定和分は、上の限界を固定しない通常の和 F(x) を用いれば
なる関係にある。
性質
[編集]固有函数
[編集]微分作用素の作用の下で不変な函数が e を底とする指数函数であったことに対応する事実として、差分作用素の作用の下では2 を底とする指数函数が不変である。これを確かめるのは容易い。[1]
階乗冪函数
[編集]下降階乗に関しては単純な規則が存在する。任意の整数 m に対して
と書くことにすれば、和分差分学における振る舞いを
のように表すことができる[2]。ここに Hn は n-番目の調和数である。この意味で、調和数は自然対数の離散版となるものということになる[1]。 なることも用いた。
積の差分法則と部分和分
[編集]連続的な微分積分学における積の微分法則に対応する、差分に関する積の法則が
なる形で成り立つ。シフト作用素 E を Ef(x) := f(x + 1) で定めれば、短く
と書くこともできる。これを逆に用いて、連続的な部分積分に対応する部分和分の式
が得られる。
注
[編集]参考文献
[編集]- A. O. Gelfond: Differenzenrechnung. Dt. Verlag d. Wiss., Berlin, 1958
- Ronald Graham u. a.: Concrete Mathematics. Addison-Wesley, Upper Saddle River 2008, ISBN 0-201-55802-5
- N. E. Nörlund: Vorlesungen über Differenzenrechnung. Springer-Verlag, Berlin, 1924; Reprint Chelsea, New York, 1954
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 結城浩『ミルカさんの隣で』〈Web版「数学ガール」〉2005年 。 (PDF)
- 結城浩『離散系バージョンの関数探し』〈Web版「数学ガール」〉2005年 。 (PDF)
- Brian Hamrick: Discrete Calculus (PDF, 70 KB)[リンク切れ]