プスタ〜4つのジプシー・ダンス

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プスタ〜4つのジプシー・ダンスPuszta -Four Gipsydances-)は、ベルギーの作曲家ヤン・ヴァン・デル・ローストが作曲した組曲である。

概要[編集]

《プスタ》は当初、1987年夏に開催される青少年のための音楽講座で用いるために、ピアノ弦楽器、若干の管楽器からなるの15名程度の室内アンサンブル編成向けの曲として作曲された。この時点では現在の「パートI」にあたる楽章がなく、全3楽章の構成であった。講座での演奏後、吹奏楽用のバージョンが欲しいとの要望があり、新たな楽章が追加された上で吹奏楽曲として編曲された。

タイトルの「プスタ」とはハンガリーを中心に存在する広大な平原の名称であり、ヨーロッパを中心に放浪生活を送る民族であるジプシー舞曲をテーマとするこの作品のイメージにふさわしい雰囲気をもつ名称として名付けられた。

作曲者ヴァン・デル・ローストによると、多くの国の住民が流入してくるベルギーにおいて、ジプシーの音楽は非常に身近な存在であり、それらの音楽にインスピレーションを得て作曲したという[1]チャールダーシュに代表されるジプシーの音楽は非常に変化に富んだものであり、この曲においても急激な速度や強さの変化などが特徴的である。

副題は《4つのジプシー舞曲》とも言われる。また近年では、ジプシーが差別用語にあたるという意見から《4つのロマの舞曲》とされることもある。

初演[編集]

1987年12月15日ブリュッセルにあるベルギー国営放送のホールにて。ノルベール・ノジ指揮、ベルギー・ギィデ交響吹奏楽団の演奏。

曲の構成[編集]

前述の通り、全4楽章からなる組曲である。演奏時間は約12分。

パートI[編集]

Part I Andante Moderato

作曲者によると、「ゆっくりとした導入から始まるチャールダーシュ」[1]。主題の演奏中に徐々にテンポが上昇していくのが特徴的な楽章。室内楽向けに作曲された当初は存在せず、吹奏楽向けの編曲が行われた際に新たに作曲された。

パートII[編集]

Part II Tranquilo

木管楽器を中心として、ジプシーのロマンティックな主題が奏でられる。

パートIII[編集]

Part III Allegro Molto

クラリネットカデンツァで始まる。A-B-A形式で展開する楽章で、やはりチャールダーシュの特徴が見られる。全体的にハイテンポな部分の多い曲。

パートIV[編集]

Part IV Marcato

作曲者が「リストの《ハンガリー狂詩曲》を念頭に置いたが、意識しただけで、全て創作」と語る[1]終楽章。この楽章にもチャールダーシュの特徴が見られ、全体の締めくくりにふさわしい大きな盛り上がりを見せる。

楽器編成[編集]

編成表
木管 金管
Fl. 2, Picc. Crnt. 3, Tp. 3 Cb. 1
Ob. 2, C.A. Hr. 4 Timp. 1
Fg. 2 Tbn. 3 バスドラムスネアドラムクラッシュシンバルサスペンデッドシンバルタンブリントライアングルウッドブロックグロッケンシュピール
Cl. 3, E♭, Alto, Bass, C-Alto, C-Bass Eup. 2
Sax. Alt. 2 Ten. 1 Bar. 1Tub.2

脚注[編集]

  1. ^ a b c 佼成出版社「EUROPEAN WIND CIRCLE 3 オリンピカ」(音楽CD)付属の解説書(解説:樋口幸弘)