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フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ 1
フルクトース-1,6-ビスホスファターゼとフルクトース-2,6-ビスリン酸の複合体。PDB 3FBP.
識別子
略号 FBP1
他の略号 FBP
Entrez英語版 2203
HUGO 3606
OMIM 229700
RefSeq NM_000507
UniProt P09467
他のデータ
EC番号
(KEGG)
3.1.3.11
遺伝子座 Chr. 9 q22.3
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フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ
ウサギ肝臓のフルクトース-1,6-ビスホスファターゼの結晶構造
識別子
略号 FBPase
Pfam PF00316
Pfam clan CL0171
InterPro IPR000146
PROSITE PDOC00114
SCOP 1frp
SUPERFAMILY 1frp
利用可能な蛋白質構造:
Pfam structures
PDB RCSB PDB; PDBe; PDBj
PDBsum structure summary
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フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ
識別子
略号 FBPase_2
Pfam PF06874
Pfam clan CL0163
InterPro IPR009164
利用可能な蛋白質構造:
Pfam structures
PDB RCSB PDB; PDBe; PDBj
PDBsum structure summary
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フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ
フルクトース-1,6-ビスホスファターゼの結晶構造
識別子
略号 FBPase_3
Pfam PF01950
InterPro IPR002803
SCOP 1umg
SUPERFAMILY 1umg
利用可能な蛋白質構造:
Pfam structures
PDB RCSB PDB; PDBe; PDBj
PDBsum structure summary
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フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(Fructose 1,6-bisphosphatase、FBPアーゼ、EC 3.1.3.11)は、同化過程の糖新生カルビン回路フルクトース-1,6-ビスリン酸フルクトース-6-リン酸に変換する酵素である。FBPアーゼの触媒する反応は、解糖系におけるホスホフルクトキナーゼの逆反応である[1][2]。これらの酵素はどちらも一方向しか触媒できず、フルクトース-2,6-ビスリン酸等の代謝産物によって制御されるため、どちらか一方の活性が高くなると、もう一方の活性が低くなる。つまり、フルクトース-2,6-ビスリン酸はFBPアーゼをアロステリック阻害するが、ホスホフルクトキナーゼ-Iを活性化させる。フルクトース-1,6-ビスリン酸は多くの異なる代謝経路に関与し、ほぼ全ての生物で見られる。FBPアーゼは、触媒に金属イオン(Mg2+とMn2+)を必要とし、Li2+に強く阻害される[3]

ブタのFBPアーゼのフォールディングは、イノシトール-1-ホスファターゼと相同である。イノシトールポリリン酸-1-ホスファターゼ、イノシトール-1-ホスファターゼ、FBPアーゼは、金属イオンに結合し触媒作用に関与していることが示されているAsp-Pro-Ile/Leu-Asp-Gly/Ser-Thr/Serのモチーフ配列を共有している。このモチーフは、菌類細菌酵母のイノシトール-1-ホスファターゼでも保存されている。これらのタンパク質は、イノシトールシグナル、糖新生、硫酸塩同化、そして恐らくキノン代謝等の様々な代謝経路に関与する。

3つの異なる種類のFBPアーゼのグループ(FBPアーゼI,II,III)が真核生物及び細菌で同定されている[4]。最近まで古細菌では発見されていなかったが、イノシトールモノホスファターゼの活性も持つ4つめの新しいグループのFBPアーゼ(FBPアーゼIV)が最近になって同定された[5]

また、好熱性古細菌や超好熱性細菌Aquifex aeolicusでは、新しいグループのFBPアーゼ(FBPアーゼV)が発見された[6]。このグループのFBPアーゼは基質特異性が高く、これらの生物の真のFBPアーゼであることが示唆されている[6][7]二次構造の研究により、FBPアーゼVは、通常のホスファターゼが持つα-β-α-β-αの5層のサンドイッチ構造ではなく、新しいフォールディングであるα-β-β-αの4層構造を持っていることが明らかとなった[7]。触媒部位の側鎖と金属リガンドの配列は、他のFBPアーゼの機構として提案されていた3つの金属イオンによる触媒機構と一致することが発見された。

低GC含量のグラム陽性細菌であるフィルミクテス門の持つFBPアーゼは、他の生物の持つFBPアーゼと配列上の類似性がほとんどない。枯草菌の酵素はアデノシン一リン酸で阻害されるが、ホスホエノールピルビン酸によりこの阻害は解除され、またMn2+イオンに依存する[8][9]。この酵素を欠く変異体は、リンゴ酸グリセロールのような糖新生成長基質でも生きることができる。

関連項目

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出典

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  1. ^ Marcus F, Harrsch PB (May 1990). “Amino acid sequence of spinach chloroplast fructose-1,6-bisphosphatase”. Arch. Biochem. Biophys. 279 (1): 151-7. doi:10.1016/0003-9861(90)90475-E. PMID 2159755. 
  2. ^ Marcus F, Gontero B, Harrsch PB, Rittenhouse J (March 1986). “Amino acid sequence homology among fructose-1,6-bisphosphatases”. Biochem. Biophys. Res. Commun. 135 (2): 374-81. doi:10.1016/0006-291X(86)90005-7. PMID 3008716. 
  3. ^ York JD, Ponder JW, Majerus PW (May 1995). “Definition of a metal-dependent/Li(+)-inhibited phosphomonoesterase protein family based upon a conserved three-dimensional core structure”. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92 (11): 5149-53. doi:10.1073/pnas.92.11.5149. PMC 41866. PMID 7761465. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC41866/. 
  4. ^ Donahue JL, Bownas JL, Niehaus WG, Larson TJ (October 2000). “Purification and characterization of glpX-encoded fructose 1, 6-bisphosphatase, a new enzyme of the glycerol 3-phosphate regulon of Escherichia coli”. J. Bacteriol. 182 (19): 5624-7. PMC 111013. PMID 10986273. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC111013/. 
  5. ^ Stec B, Yang H, Johnson KA, Chen L, Roberts MF (November 2000). “MJ0109 is an enzyme that is both an inositol monophosphatase and the 'missing' archaeal fructose-1,6-bisphosphatase”. Nat. Struct. Biol. 7 (11): 1046-50. doi:10.1038/80968. PMID 11062561. 
  6. ^ a b Rashid N, Imanaka H, Kanai T, Fukui T, Atomi H, Imanaka T (August 2002). “A novel candidate for the true fructose-1,6-bisphosphatase in archaea”. J. Biol. Chem. 277 (34): 30649-55. doi:10.1074/jbc.M202868200. PMID 12065581. 
  7. ^ a b Nishimasu H, Fushinobu S, Shoun H, Wakagi T (June 2004). “The first crystal structure of the novel class of fructose-1,6-bisphosphatase present in thermophilic archaea”. Structure 12 (6): 949-59. doi:10.1016/j.str.2004.03.026. PMID 15274916. 
  8. ^ Fujita Y, Freese E (June 1979). “Purification and properties of fructose-1,6-bisphosphatase of Bacillus subtilis”. J. Biol. Chem. 254 (12): 5340-9. PMID 221467. 
  9. ^ Fujita Y, Yoshida K, Miwa Y, Yanai N, Nagakawa E, Kasahara Y (August 1998). “Identification and expression of the Bacillus subtilis fructose-1, 6-bisphosphatase gene (fbp)”. J. Bacteriol. 180 (16): 4309-13. PMC 107433. PMID 9696785. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC107433/. 

関連文献

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外部リンク

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