ドナルド・ミッチェル (著述家)

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ドナルド・ミッチェル(Donald Mitchell、1925年2月6日 - )は、音楽に関する著作をもつイギリス著述家で、特にグスタフ・マーラーベンジャミン・ブリテンについての一連の著作や、1963年の『The Language of Modern Music』によって知られている。

経歴[編集]

ミッチェルはロンドンに生まれ、ロンドンのブライトランズ・プレパラトリー・スクール (Brightlands Preparatory School) とダリッジ・カレッジに学んだ。1943年良心的兵役拒否登録を行い、第二次世界大戦中は非戦闘部隊英語版に配属されていた。戦後、ミッチェルは、ロンドンのオークフィールド校英語版で教員となり、1947年には自ら編集人となって音楽研究誌『Music Survey』を創刊した。同誌は数号を経て、1949年ハンス・ケラー英語版が編集に加わり、いわゆる「新シリーズ (New Series)」(1949年 - 1952年)として再スタートを切り、同誌の妥協のない厳しい批評水準と、好戦的なまでのブリテンやシェーンベルク賞賛の論調は、名声と悪名を同時にもたらすこととなった。ミッチェルは、1949年から1950年にかけてダラム大学に学んだ[1]。また、1950年代には、『ミュージカル・タイムズ』や『Musical Opinion』といった音楽関係の学術誌の定期的な寄稿者となっていた。1958年、ミッチェルはフェイバー・アンド・フェイバー英語版の音楽書の編集担当となり、同年にはブージー・アンド・ホークスの音楽学術誌『Tempo』の編集人となって、1962年までその任にあった。1963年から1964年にかけて、ミッチェルはブージー・アンド・ホークスの特別音楽顧問として、特に同時代の音楽を担当して、当代の作曲家たちの獲得にあたり、ピーター・マックスウェル・デイヴィスニコラス・モー英語版が、この出版社と契約するように取り計らった。1965年、ベンジャミン・ブリテンの支援を受けたミッチェルは、音楽出版社フェイバー・ミュージック英語版を創設し、初代の代表取締役 (Managing Director) となり、後には副会長(1976年)、会長(1977年)、社長(1988年1995年)を歴任した。1972年には、サセックス大学における初代の音楽担当教授となって、1976年までその任にあった。ベンジャミン・ブリテンの没後、ミッチェルはブリテン=ピアーズ財団 (Britten-Pears Foundation, BPF) の上級理事 (senior trustee) となった。1986年には同財団の執行責任者 (director) となり、また、ブリテン・エステート (Britten Estate Ltd.) の会長となった。1989年から1992年にかけては、(イギリスの著作権管理団体のひとつ)Performing Right Society(後のPRS for Musicの前身)の会長であった。

マーラーとブリテン[編集]

ミッチェルには、全4巻に及んだグスタフ・マーラーの作品についての研究と、継続して取り組まれ、これまでに5巻、1965年の分までがまとめられたベンジャミン・ブリテンの書簡集の編纂という、2つの大きなテーマがある。

マーラーについてのミッチェルの著作は、ミッチェル自身の考えに基づいて、伝記研究にはされておらず(ミッチェルは、アンリ・ルイ・ド・ラ・グランジェフランス語版英語版による全4巻の伝記を標準的なものとして引用している)、内容は浩瀚なエッセイであり、しばしば個人的な性格をもっている[2]。全4巻の著作を通して、ミッチェルはマーラー作品の分析を行なっており、おおむね第1巻では初期作品、第2巻では『少年の魔法の角笛』関係、第3巻と第4巻ではその他の作品を取り上げている。

主な著書[編集]

  • (ed., with Hans Keller): Benjamin Britten: A Commentary on His Works from a Group of Specialists (London, Rockliff, 1952). With drawings by Milein Cosman
  • (ed., with H.C. Robbins Landon): The Mozart Companion (London: Rockliff, 1956)
  • (ed., with Philip Reed and Mervyn Cooke): Letters From a Life: The Selected Letters of Benjamin Britten. 6 vols., Faber (vols 1-3), Boydell Press (vols 4-6) 1991–2012
  • Britten and Auden in the Thirties: The Year 1936 (Boydell Press, 2nd Ed., 2000)
  • Gustav Mahler, Vol. 1: The Early Years. Faber, 1958 (revised with Paul Banks and David Matthews 1978)
  • The Language of Modern Music Faber & Faber, 1963, revised 1966, 1969, ISBN 0-571-04934-6
  • Gustav Mahler, Vol. 2: The Wunderhorn Years: Chronicles and Commentaries. Faber 1975
  • Gustav Mahler, Vol. 3: Songs and Symphonies of Life and Death: Interpretations and Annotations. Faber 1985
  • Discovering Mahler. Writings on Gustav Mahler 1955-2005. Boydell Press 2007, ISBN 978-1-84383-345-1
  • The Mahler Companion. Oxford, 1999 (online at Google Books)

脚注[編集]

  1. ^ Reed (1995), p. xii.
  2. ^ Mitchell, Donald Gustav Mahler, Vol. 3: Songs and Symphonies of Life and Death: Interpretations and Annotations. Faber, 1985

参考文献[編集]

  • Philip Reed (ed.): On Mahler and Britten. Essays in Honour of Donald Mitchell on His Seventieth Birthday. Aldeburgh Studies in Music Vol. 3. Boydell Press, 1995 (online at Google Books) - 1995年までのミッチェルの経歴が記載されている。