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クー (フィンランド神話)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

クーフィンランド語: Kuu[1])はフィンランド語を意味する言葉。フィンランド神話では月の女神である[2]

カレワラ』によると、大気の娘イルマタル原初の海を漂う中、小鴨がイルマタル自身のの上にを生むことを許した。卵は落ち、その欠片が天地と成った。白身は月と成り、黄身太陽と成った[3]宇宙卵型神話英語版)。

また『カレワラ』の後半(第47-49章)[4]では、ポホヨラの女主人ロウヒによる月と太陽の幽閉と、ワイナミョイネンイルマリネンによる解放の物語(日月解放神話)が描かれている。この部分は、カレリアイングリアに断片的な形で散在していた伝承を『カレワラ』の編者リョンロートが補足脚色したものと考えられている[5]。また原カレワラや古カレワラでは描写がやや異なっている[6]

またミカエル・アグリコラの記録した伝承(1551年)に、「カヴェフィンランド語版 (Kave[7]) が月を食べた」というものがあるという[8][9]。このカヴェは森の獣を指すと考えられており[8]、世界の神話でよく見られる鳥獣が日月を呑み込むモチーフの一類話と考えられる[8]。一方でクリストフリッド・ガナンデル英語版の辞典(1789年)では、「カヴェ(婦人[8])が月を解放した」という伝承が語られているという[8][10]

関連項目

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脚注

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  1. ^ en:wikt:kuu#Finnishも参照。
  2. ^ Sheila Savill, Pears Encyclopaedia of Myths and Legends - Western and Northern Europe, Central and Southern Africa, BCA, 1977, p. 90
  3. ^ 『カレワラ』第1章177-244行目。リョンロット & 小泉訳 (1976a) では12-15頁。
  4. ^ リョンロット & 小泉訳 (1976b) では328-367頁。
  5. ^ リョンロット & 小泉訳 1976b, p. 445(各章の内容と解説 第49章)
  6. ^ リョンロット & 小泉訳 1976b, p. 442(各章の内容と解説 第47章)
  7. ^ en:wikt:kave#Finnishも参照。
  8. ^ a b c d e リョンロット & 小泉訳 (1976b), pp. 446–447(各章の内容と解説 第49章)。小泉訳では「カベ」の表記が使用されている。
  9. ^ fi:Dauidin Psalttari (oldid=21520848). Kapeet myös heiltä kuun söivät,
  10. ^ Ganander (Project Gutenberg): "KAWEH, KAWOH". 3:o Kapeet beskyllas orätt, så af Biskop Agricola, som Dr. Juslenius och flere deras anhängare, hafva upfrått månan; utan tvärt om hjelpte och frälste de månan från Kuumet; ty Runan säger: Kawet päästi päiwän paistamaan, Päästi kuun kuumottamahan.; "KUUMET". Kuumet ennen kuun kehitti / Kawet kuun kehästä päästi / (Kawet i.e. lintu, Eläwä Jumalan luoma, Eläin), / Riihen rautaisen sisästä / (Oli jo peittänyt kuun rautaseen riiheen),

参考文献

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  • リョンロット 編、小泉保 訳『フィンランド叙事詩 カレワラ (上)』岩波書店岩波文庫〉、1976年8月16日。全国書誌番号:75028306 
  • リョンロット 編、小泉保 訳『フィンランド叙事詩 カレワラ (下)』岩波書店岩波文庫〉、1976年10月18日。全国書誌番号:75028307 
  • Christfrid Ganander. Mythologia Fennica (in スウェーデン語) - プロジェクト・グーテンベルク

外部リンク

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