エリブリン
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
ライセンス | US FDA:リンク |
胎児危険度分類 |
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法的規制 |
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識別 | |
CAS番号 | 253128-41-5 |
ATCコード | L01XX41 (WHO) |
PubChem | CID: 17755248 |
ChemSpider | 21396142 |
UNII | LR24G6354G |
ChEMBL | CHEMBL1237028 |
化学的データ | |
化学式 | C40H59NO11 |
分子量 | 729.90 g/mol |
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エリブリン(Eribulin、開発コードE7389、ER-086526)は、エーザイと岸義人によって共同開発された抗がん剤である[1]。メシル酸塩が商品名ハラヴェン(Halaven)として承認されている。アメリカ国立癌研究所の識別番号はNSC-707389。
効能・効果
[編集]乳癌
[編集]2010年11月15日に米国食品医薬品局 (FDA)、2011年1月21日に欧州医薬品庁 (EMA) 医薬品委員会 (CHMP) から、「アントラサイクリン系およびタキサン系抗がん剤を含む少なくとも2種類の癌化学療法による前治療歴のある転移性乳癌」に対する抗がん剤として承認された[2][3][4]。2011年12月4日にはカナダ保健省から「2種類以上の癌化学療法による前治療歴のある転移性乳癌」に対しての使用が承認された[5]。日本においても2011年4月22日、「手術不能または再発乳癌」の適応で承認された[6]。
悪性軟部腫瘍
[編集]2016年1月、米国FDAは「アントラサイクリンによる前治療のある手術不能な脂肪肉腫」の治療への使用を承認した[7]。2016年2月29日には日本で「悪性軟部腫瘍」への適応が追加承認された[8]。
軟部肉腫についての第III相臨床試験の結果、全生存期間の中央値はダカルバジン群の8.4か月に対してエリブリン群は15.6か月であり、全生存期間を有意に延長することが確認された[7][9]。
研究中の癌腫
[編集]乳癌と悪性軟部腫瘍の他にも、非小細胞肺癌や、前立腺癌等様々な固形腫瘍に対するエリブリンの適応が研究されている[10]。
副作用
[編集]重大な副作用として、骨髄抑制、感染症(敗血症、肺炎等)、末梢性ニューロパチー、肝機能障害、間質性肺炎、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、多形紅斑が挙げられている[11]。この内骨髄抑制は白血球減少 (99.2%)、好中球減少 (98.5%) がほぼ必発であるほか、貧血 (23.5%)、血小板減少 (9.1%)、汎血球減少(頻度不明)等が発現する。
その他30%以上の患者に悪心、口内炎、疲労、発熱、食欲減退、脱毛症 が生じる。
QT間隔延長が発生することがある。
構造と作用機構
[編集]構造的には、エリブリンは海綿由来の天然有機化合物であるハリコンドリンBの大環状ケトン合成アナログ(構造類縁体)である[12]。ハリコンドリンBはハリコンドリア属 (Halichondria) の海綿(クロイソカイメン)から単離された、ユニークな作用機構を有する強力な細胞分裂阻害剤である[13][14]。エリブリンは微小管の動態を阻害するユニークな機構を示し[15][16]、微小管の+(プラス)端に存在する少数の高親和性部位に主に結合する[17]。
エリブリンは長期間かつ非可逆的な細胞分裂の阻害によってがん細胞にアポトーシスを引き起こすことで抗がん作用を示す[18]。
2009年に、岸義人らによりE7389(エリブリン)の新規合成経路が報告された[19]。
出典
[編集]- ^ 読売新聞 2023年1月13日 28面
- ^ 『米国FDAが新規抗がん剤「HALAVEN™」(エリブリン メシル酸塩)注射剤を転移性乳癌の適応で承認 ---海洋生物(クロイソカイメン)由来の抗腫瘍性天然物ハリコンドリンBの全合成類縁化合物が前治療歴のある転移性乳癌に対して全生存期間を統計学的有意差をもって延長---』(プレスリリース)エーザイ、2010年11月16日 。2010年11月16日閲覧。
- ^ 『FDA approves new treatment option for late-stage breast cancer』(プレスリリース)USFDA、2010年11月15日 。2010年11月15日閲覧。
- ^ 『抗がん剤「HALAVEN™」 欧州の医薬品委員会より転移性乳癌治療薬として承認勧告を受領』(プレスリリース)エーザイ、2011年1月24日 。2011年4月25日閲覧。
- ^ Notice of Decision for HALAVEN
- ^ 『抗悪性腫瘍剤「ハラヴェン」日本において、手術不能又は再発乳癌の適応で製造販売承認を取得』(プレスリリース)エーザイ、2011年4月22日 。2011年4月25日閲覧。
- ^ a b FDA approves first drug to show survival benefit in liposarcoma. Jan 2016
- ^ 『抗がん剤「ハラヴェン」日本で新たに「悪性軟部腫瘍」に関する効能・効果の承認を取得』(プレスリリース)エーザイ、2016年2月29日 。2016年4月3日閲覧。
- ^ “抗がん剤「ハラヴェン」が軟部肉腫を対象とした臨床第III相試験において全生存期間を指標とする主要評価項目を達成”. エーザイ (2015年2月25日). 2015年3月2日閲覧。
- ^ ClinicalTrials.gov. “Search of- eribulin - List Results”. 2010年11月16日閲覧。
- ^ “ハラヴェン静注1mg 添付文書” (2016年2月). 2016年4月3日閲覧。
- ^ Towle MJ, Salvato KA, Budrow J, Wels BF, Kuznetsov G, Aalfs KK, Welsh S, Zheng W, Seletsk BM, Palme MH, Habgood GJ, Singer LA, Dipietro LV, Wang Y, Chen JJ, Quincy DA, Davis A, Yoshimatsu K, Kishi Y, Yu MJ, Littlefield BA (February 2001), “In vitro and in vivo anticancer activities of synthetic macrocyclic ketone analogues of halichondrin B”, Cancer Res. 61 (3): 1013–21, PMID 11221827
- ^ Hirata Y, Uemura D (1986), “Halichondrins - antitumor polyether macrolides from a marine sponge”, Pure Appl. Chem. 58 (5): 701–710, doi:10.1351/pac198658050701
- ^ Bai RL, Paull KD, Herald CL, Malspeis L, Pettit GR, Hamel E (August 1991), “Halichondrin B and homohalichondrin B, marine natural products binding in the vinca domain of tubulin. Discovery of tubulin-based mechanism of action by analysis of differential cytotoxicity data”, J. Biol. Chem. 266 (24): 15882–9, PMID 1874739
- ^ Jordan MA, Kamath K, Manna T, Okouneva T, Miller HP, Davis C, Littlefield BA, Wilson L (July 2005), “The primary antimitotic mechanism of action of the synthetic halichondrin E7389 is suppression of microtubule growth”, Mol. Cancer Ther. 4 (7): 1086–95, doi:10.1158/1535-7163.MCT-04-0345, PMID 16020666
- ^ Okouneva T, Azarenko O, Wilson L, Littlefield BA, Jordan MA (July 2008), “Inhibition of centromere dynamics by eribulin (E7389) during mitotic metaphase”, Mol. Cancer Ther. 7 (7): 2003–11, doi:10.1158/1535-7163.MCT-08-0095, PMC 2562299, PMID 18645010
- ^ Smith JA, Wilson L, Azarenko O, Zhu X, Lewis BM, Littlefield BA, Jordan MA (February 2010), “Eribulin binds at microtubule ends to a single site on tubulin to suppress dynamic instability”, Biochemistry 49 (6): 1331-7, doi:10.1021/bi901810u, PMC 2846717, PMID 20030375
- ^ Kuznetsov G, Towle MJ, Cheng H, Kawamura T, TenDyke K, Liu D, Kishi Y, Yu MJ, Littlefield BA (August 2004), “Induction of morphological and biochemical apoptosis following prolonged mitotic blockage by halichondrin B macrocyclic ketone analog E7389”, Cancer Res. 64 (16): 5760–6, doi:10.1158/0008-5472.CAN-04-1169, PMID 15313917
- ^ Kim DS, Dong CG, Kim JT, Guo H, Huang J, Tiseni PS, Kishi Y (November 2009), “New syntheses of E7389 C14-C35 and halichondrin C14-C38 building blocks: double-inversion approach”, J. Am. Chem. Soc. 131 (43): 15636–41, doi:10.1021/ja9058475, PMID 19807076