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アーミデール級哨戒艇

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アーミデール級哨戒艇[1][2]
「アルバニー」
艦級概観
艦種 哨戒艇
前級 フリーマントル級哨戒艇
次級 計画中
主要諸元
排水量 基準: 300トン
全長 56.8m
水線長 52.1m
全幅 9.5m
深さ 5m
吃水 2.7m
機関 MTU 16V4000 (2,320 kW) 2基
バウスラスター (160kW) 1基
スクリュープロペラ 2軸
速力 25ノット以下
航続距離 3,000海里(12ノット)
乗員 29
武装 M242 25mm機関砲 1門
M2HB 12.7mm機銃 2挺
搭載艇 7.24m複合艇 2隻
レーダー ブリッジマスター E
電子戦 プリズム3 ESM装置

アーミデール級哨戒艇(Armidale class patrol boat)は、オーストラリア哨戒艇。14隻がオースタルによって建造された。

開発

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オーストラリア海軍は、保有する15隻のフリーマントル級哨戒艇の老朽化に伴い、1999年より更新計画SEA 1444を立案していた[3]。これに対してディフェンス・マリタイム・サービスズ(DMS、後のDMSマリタイム)が設計し、建造をオースタルが担う分担で応札した[4]。2003年12月17日には、DMSの案が採用され5億3300万ドルで12隻の建造が決定、2004年10月には2隻が追加された[5]

建造はオースタルが所有するフリーマントルのヘンダーソン造船所で行われた[6]

設計

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艇体

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艇体は総アルミニウム製であり、南緯50度以南での活動は考慮されていない[6]。高速艇の商船規格に軍艦構造を組み合わせたハイブリッドであり、環境汚染と安全規格については民間船のものに準じている[7]

シーステート5まで対応し、シーステート4(波高2.5m)で全ての任務をこなして25ノットでの24時間巡航が、シーステート5(4m)で主要な捜索任務をこなすことが求められている。3,000海里の航続力を用いて1,000海里離れた洋上で42日間の任務に従事可能とされている[7]

耐航性は、フリーマントル級よりも大型で半滑走型のV字型艇体とスタビライザーにより、能動的に海面の変化に対応することが可能となっている[7]

人員

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標準的な乗組員の構成は、船長を含む士官7人、下士官4人、伍長・兵18人の29人である。船室は、船長室1、士官用2人部屋3、下士官用2人部屋2、伍長・兵は2人部屋1に4人部屋4となっている。加えて、簡易寝台20台を運用可能である[1]

オーストラリア海軍では、21人で運用している[2]

装備

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主砲としてタイフーンRWS上にM242 25mm機関砲を装備している他、ブリッジ後方両舷にM2HB 12.7mm機銃各1挺を有する[1]

搭載艇はゾディアック複合艇ZH 733を2隻後部甲板上に搭載している[7]

光学機器に加え、スペリー・マリーンのE/F/IバンドレーダーブリッジマスターEとBAEシステムズ・オーストラリアのESM装置PRISM IIIを備え、通信機器はCEAテクノロジーズ製のものを採用している[8]

運用

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アーミデール級は、アーデント(Ardent)、アセイル(Assail)、アタック(Attack)、アウェア(Aware)の4個哨戒艇隊に振り分けられ、4隻が6組のクルーによって運用されている[9]。アウェア隊のみ半個艇隊規模であり、クルーも3組となっている[10]。配置は、ケアンズにアーデント隊が配備され[11]、他の3隊はダーウィンに配備されている[9]

海上での捜索救難活動、不法入国阻止や排他的経済水域での密漁取り締まり等の治安維持、国境警備などに用いられている[12]

問題点

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硫化水素一酸化炭素が内部に漏出する点が指摘されており、2006年には4人の負傷者が出ているとされる[13]。また、燃料やエンジンのトラブルに加えて、トイレの排水不良等の居住空間についての問題も指摘されている[13]

同艦型

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名称 # 就役 除籍 最終所属
ACPB 83 アーミデール
HMAS Armidale
2005年6月24日 2023年3月30日 Attack
ACPB 84 ララキア
HMAS Larrakia
2006年2月10日 2023年11月28日
ACPB 85 バサースト
HMAS Bathurst
2006年2月10日 就役中
ACPB 86 アルバニー
HMAS Albany
2006年7月15日
ACPB 87 ピリー
HMAS Pirie
2006年7月29日 2021年3月26日 Assail
ACPB 88 メイトランド
HMAS Maitland
2006年9月29日 2022年4月28日
ACPB 89 アララト
HMAS Ararat
2006年11月10日 2022年7月2日
ACPB 90 ブルーム
HMAS Broome
2007年2月10日 就役中
ACPB 91 バンダバーグ
HMAS Bundaberg
2007年3月3日 2014年12月18日 Ardent
ACPB 92 ウロンゴン
HMAS Wollongong
2007年6月23日 20222年12月8日
ACPB 93 チルダース
HMAS Childers
2007年7月7日 就役中
ACPB 94 ローンセストン
HMAS Launceston
2007年9月22日 2023年6月1日
ACPB 95 メアリーバラ
HMAS Maryborough
2007年12月8日 2023年9月28日 Aware
ACPB 96 グレネルグ
HMAS Glenelg
2008年2月22日 2022年10月6日

登場作品

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シー・パトロール英語版
第2シーズン(Sea Patrol II: The Coup)以降の舞台として架空艇「ACPB-82 ハマースレイ(Hammersley)」が登場。
撮影には「ブルーム」が使用されており、撮影期間86日のうち42日間に及んだ。他の期間の撮影はスタジオやゴールドコーストで行われたが、一部は「ローンセストン」で行われている[14]。2010年には、オーストラリア海軍がYouTubeで「ララキア」の活動を公開したが、そのタイトルは「The real Sea Patrol 」としている[15]

脚注

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  1. ^ a b c AUSTAL PATROL 56”. オースタル. 2012年12月3日閲覧。
  2. ^ a b HMAS Armidale (II)”. オーストラリア海軍. 2012年12月3日閲覧。
  3. ^ The Armidale Class Patrol Boat Project: Project Management”. オーストラリア国防省. 2012年12月11日閲覧。
  4. ^ Joint Austal and Defence Maritime Services Bid for RAN Replacement Patrol Boat Project” (2001年10月23日). 2012年12月5日閲覧。
  5. ^ SEA 1444 - Armidale Class Patrol Boat”. オーストラリア国防省 (2010年11月). 2012年12月5日閲覧。
  6. ^ a b HMAS Armidale Commissioned”. オースタル (2005年6月24日). 2012年12月3日閲覧。
  7. ^ a b c d SEA 1444 - Armidale Class Patrol Boat TECHNICAL SUMMARY”. オーストラリア国防省 (2004年10月26日). 2012年12月5日閲覧。
  8. ^ Armidale Class Patrol Boat, Australia”. naval-technology.com. 2012年12月11日閲覧。
  9. ^ a b Patrol Boat (PB)”. オーストラリア海軍. 2012年12月3日閲覧。
  10. ^ Aware Division”. オーストラリア海軍. 2012年12月3日閲覧。
  11. ^ Ardent Division”. オーストラリア海軍. 2012年12月3日閲覧。
  12. ^ Attack Division”. オーストラリア海軍. 2012年12月11日閲覧。
  13. ^ a b Michael McKenna (2010年1月2日). “Gas risk remains for navy boats”. オーストラリアン. 2012年12月11日閲覧。
  14. ^ Michael Idato (2008年3月31日). “All ship shape”. The Sydney Morning Herald. 2012年12月11日閲覧。
  15. ^ The real Sea Patrol”. オーストラリア海軍 (2010年6月20日). 2012年12月11日閲覧。

外部リンク

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