アンカラナ特別自然保護区
アンカラナ特別自然保護区 | |
---|---|
地域 | マダガスカル北部 |
最寄り | アンツィラナナ(ディエゴ・スアレス) |
座標 | 南緯13度4分22秒 東経48度54分53秒 / 南緯13.07278度 東経48.91472度座標: 南緯13度4分22秒 東経48度54分53秒 / 南緯13.07278度 東経48.91472度 |
面積 | 182 km2 |
創立日 | 1956年 |
訪問者数 | 約6000人(2005年) |
運営組織 | [Madagascar National Parks] |
マダガスカル北部のアンカラナ特別自然保護区は1956年に設立された。この保護区は小さく、部分的に植物が生えた1億5000万年前のジュラ紀中期の石灰岩で形成された台地である[1]。平均的な年間降水量は約2,000 mmあり[1]、岩盤を侵食して洞窟を形成するとともに地下河川の水源となり、カルスト地形をなしている。険しい地形と濃厚な食性がこの地域への人間の侵入を阻んできた。
保護区の南の入口はマダガスカル国道6号線沿いのアンツィラナナの108 kmほど南西で、アンビルベの北東29 kmのマハマシナに位置する。
2023年には世界遺産の「アンドレファナの乾燥林群」(ツィンギ・デ・ベマラ厳正自然保護区の拡大登録)の一部となった[2]。
地質
[編集]大地の傾斜は東に向かって緩やかに下がっているが、西側の端では南北に25 kmにわたる高さ280 mの切り立った崖である「アンカラの壁」となっている[3]。
南側では石灰岩の塊が「石灰岩柱」と呼ばれる独立した石柱に分かれている。大地の中央では地震活動と長年の降雨によって石灰岩が深い渓谷に溶け出し、ときには流れ石のリボンのように再堆積した。石灰岩の上層が完全に侵食された場所では、より固い基盤岩が侵食されて「ツィンギ」と呼ばれる水路と尾根を構成している。この地域には玄武岩の巨石が散らばっており、玄武岩も山塊を分断する峡谷の奥深くまで流れん混んでいる[3]。
探査
[編集]1960年代の初期、フランス人探検家ジャン・デュフロ(地元で結婚してジャン・ラドフィラオに改名した)が山塊の下の洞窟システムと地下河川の大規模な探検を単独および訪れた洞窟学者と共に行った[4][5][6]。山塊の総延長約100 kmにおよぶ洞窟の地図が作成された[7]。最もアクセスしやすい洞窟の一つであるアンドラフィアべの洞窟(フランス語: La Grotte d'Andrafiabe単独で約8,035 mの水平通路がある。確実に、山塊にはマダガスカルで、そしておそらくアフリカ全体で最も長い洞窟システムが含まれている[8]。
動物相
[編集]アンカラナ山塊周辺に設置された特別自然保護区の動物及び植物の目録作成は1980年代に開始された探検隊は[9]ジェイン・ウィルソン=ハワース博士の旅行記 Lemurs of the Lost World(ロストワールドのキツネザル)や[10]、科学記事で解説されている[11][12][13][14]。発見の中には予想されていなかった絶滅した大型のキツネザルの半化石や[15][16][17][18]、生き延びていたがこれまで記述されていなかった種類の盲目魚[19][20]、エビ[21]などの無脊椎動物も含まれている[22][23]。探検隊員数名が、アンカラナのクロコダイル洞窟を特集したマダガスカル入門図鑑に写真を寄稿した[24]。
1986年の探検中に、フィル・チャプマンとジャン=エリー・ランドリアマシーが保護区の鳥類のリストを作成し、32科65種、マダガスカルで繁殖する全鳥類のほぼ1/3を記録した。彼らは行動についても興味深い点を指摘した。小型の昆虫食のスズメ亜目の通常とは異なる戦略について報告している。マダガスカルサンコウチョウ、クビワニセムシクイチメドリ、コバシマダガスカルヒヨドリ、テトラカヒヨドリ、クロヒヨドリ、アルダブラタイヨウチョウ、カギハシオオハシモズ(Leptopterus madagascarinus[25])およびクロノドハシボソオオハシモズなどが一緒に群を形成している。それぞれの群の中では様々な種が獲物の昆虫をどこで探すのかで棲み分けているようだった。いくつかの種は木の幹や太い枝に集中し、いくつかは細い枝に、またある種は葉の下で探していた。このように一緒に行動することでそれぞれの種が他の種から逃げた獲物を捉えることができ、採餌効率が向上するものと考えられた。また、群全体が危険に気づく可能性が高くなるので、捕食者からの攻撃からも安全になった[13]。
アンカラナ特別自然保護区はカンムリキツネザル(Eulemur coronatus)、サンフォードキツネザル(Eulemur sanfordi)やその他の哺乳類の貴重な個体群の重要な避難場所となっている[12]。また、この地域からはキタイタチキツネザル(Lepilemur septentrionalis)、アカネズミキツネザル(Microcebus rufus)、フトオコビトキツネザル(Cheirogaleus medius)、ヒガシフォークキツネザル(Phaner furcifer)、ヒガシアバヒ(Avahi laniger)、ペリエシファカ(Propithecus perrieri)、アイアイ(Daubentonia madagascariensis)およびキタジェントルキツネザル(Hapalemur occidentalis)なども記録されている。
さらに、アンカラナではヒロバナジェントルキツネザル(Prolemur simus)、インドリ(Indri indri)、Babakotia radofilai、Mesopropithicus dolichobrachion、Palaeopropithicusおよび Pachylemur種、巨大なメガラダピス(Megaladapis madagascariensis/grandidieri)およびArchaeolemur種の半化石が発見されている[17][18]。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ a b Rossi, G. (1974). “Morphologie et Evolution d'un karst en milieu tropical. L'Ankarana (Extreme Nord de Madagascar)”. Mémoires et Documents Centre National de la Recherche Scientifique 15: 279–298.
- ^ “Andrefana Dry Forests” (英語). UNESCO World Heritage Centre. 2023年12月18日閲覧。
- ^ a b Reader's Digest (1980). Natural Wonders of the World. p. 48. ISBN 0-89577-087-3
- ^ Duflos, J. (1966). “Bilan des explorations biospeleologique pour l'annee 1965”. Revue de Géographie (Université de Madagascar) 9: 225–252.
- ^ Duflos, J. (1968). “Bilan des explorations speleologique pour l'annee 1966”. Revue de Géographie (Université de Madagascar) 12: 121–129.
- ^ Peyre, J-C.; Arthaud, G.; Radofilao, J. (1982). Expédition Spéléologique, Madagascar 1982. Club Alpin Francais / Federation Francaise de Spéléologie. pp. 55pp.
- ^ Wilson, Jane, ed (1987). “The Crocodile Caves of Ankarana : Expedition to Northern Madagascar, 1986”. Cave Science 14 (3): 107–119.
- ^ “World Cave List”. 2022年5月29日閲覧。
- ^ Wilson, Jane M. (1987). “The Crocodile Caves of Ankarana, Madagascar”. Oryx 21 (1): 43–47. doi:10.1017/S0030605300020470.
- ^ Wilson, Jane (2014). Lemurs of the Lost World: exploring the forests and Crocodile Caves of Madagascar. Impact, London. pp. 216. ISBN 9781874687481
- ^ Wilson, Jane M (1988). “Ankarana - a rediscovered nature reserve in northern Madagascar”. Oryx 22 (3): 163–171. doi:10.1017/S0030605300027794.
- ^ a b Wilson, J.M. (1989). “Ecology and Conservation of the Crowned Lemur at Ankarana, N. Madagascar with notes on Sanford's Lemur, Other Sympatrics and Subfossil Lemurs”. Folia Primatologica 52 (1–2): 1–26. doi:10.1159/000156379. PMID 2807091.
- ^ a b Fowler, S.V. (1989). “A survey and management proposals for a tropical deciduous forest reserve at Ankarana in northern Madagascar”. Biological Conservation 47 (4): 297–313. doi:10.1016/0006-3207(89)90072-4.
- ^ Stewart, Paul D. (1988). “Ankarana damaged”. Oryx 22 (4): 240–241. doi:10.1017/S0030605300022390.
- ^ Simons, E.L. (1990). “Discovery of new giant subfossil lemurs in the Ankarana Mountains of Northern Madagascar”. Journal of Human Evolution 19 (3): 311–319. doi:10.1016/0047-2484(90)90072-J.
- ^ Simons, E.L. (1992). “A new giant subfossil lemur, Babakotia, and the evolution of sloth lemurs”. Folia Primatologica 58 (4): 197–203. doi:10.1159/000156629.
- ^ a b Godfrey, L.R.; Wilson, Jane M.; Simons, E.L.; Stewart, Paul D.; Vuillaume-Randriamanantena, M. (1996). “Ankarana: window to Madagascar's past”. Lemur News 2: 16–17.
- ^ a b Wilson, Jane M.; Godfrey, L.R.; Simons, E.L.; Stewart, Paul D.; Vuillaume-Randriamanantena, M. (1995). “Past and Present Lemur Fauna at Ankarana, N. Madagascar”. Primate Conservation 16: 47–52.
- ^ Banister, K.E. (1994). “Glossogobius ankaranensis, a new species of blind cave goby from Madagascar”. Journal of Ichthyology & Aquatic Biology 1 (3): 25–28.
- ^ Wilson, Jane M. (1996). “Conservation and ecology of a new blind fish, Glossogobius ankaranensis from the Ankarana Caves, Madagascar”. Oryx 30 (3): 218–221. doi:10.1017/S0030605300021669.
- ^ Gurney, A.R. (1984). “Freshwater shrimp genera Caridina and Parisia (Decopoda: Caridea: Atydae) of Madagascar with descriptions of new species”. Journal of Natural History 18: 567–590. doi:10.1080/00222938400770481.
- ^ Jane M. Wilson (1982). “A review of world Troglopedetini (Insecta, Collembola, Paronellidae), including an identification table and descriptions of new species”. Cave Science 9 (3): 210–226.
- ^ José G. Palacios-Vargas & Jane Wilson (1990). “Troglobius coprophagus, a new genus and species of cave collembolan from Madagascar with notes on its ecology”. International Journal of Speleology 19 (1–4): 67–73. doi:10.5038/1827-806X.19.1.6. オリジナルの2011-07-23時点におけるアーカイブ。 2011年7月24日閲覧。.
- ^ Bradt, Hilary, ed (1988). Madagascar. Aston Publications, Bourne End, UK. pp. 96. ISBN 0-946627-28-2
- ^ 山岸哲 (2005). “マダガスカル産アカオオハシモズの社会”. 動物心理学研究 55 (1): 18 .