銅アンモニアレーヨン

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銅アンモニアレーヨン生地

銅アンモニアレーヨン(どうアンモニアレーヨン、cuprammonium rayon)は、再生繊維の一種。キュプラ(cupro)や銅シルクとも呼ばれる。吸放湿性に優れ、一般的なレーヨン (ビスコースレーヨン) に比べ、耐久力や耐摩耗性などに優れている一方、天然素材であるため、土に埋めると短期で自然分解される。旭化成が有する登録商標ベンベルグ」と通称される。

歴史

1897年にドイツの化学者マックス・フレンメリーとヨハン・ウルバンドイツ語版が、白熱電球フィラメント用として発明。二人はハインスベルグ近郊に工場を建て本格的な生産に乗り出すが、本来のフィラメント用の用途としては売れずに失敗。結局、特許はドイツのJ・P・ベンベルクドイツ語版社が取得し、服地として広く使われるようになった。

日本では日本窒素肥料(現在の旭化成及びチッソJNC)が、ベンベルク社と提携して1931年昭和6年)に生産を開始。このため日本では銅アンモニアレーヨンの呼び名として、ベンベルグが広く知れ渡ることになった[1]

銅やアンモニアの処理に難点があり、各国は次々と製造から撤退したが、旭化成は銅などの再利用技術を確立し、世界唯一のベンベルグ製造メーカーとなっている。

製法

銅アンモニアレーヨンの生産には銅アンモニア溶液 (シュバイツァー溶液) を用いる。これは硫酸銅水溶液に水酸化ナトリウムを加えて沈殿させた水酸化銅(II)アンモニア水を加えて溶解させたものである。この溶液は銅アンモニア錯体により濃い青色を呈し、セルロース溶解させることができる。セルロースを溶解させた銅アンモニア溶液を酸性の水中に押し出すとセルロースが再生し、繊維を生じる。各反応は次のとおりである。

  • Cu(OH)2 + 4NH3 → [Cu(NH3)4](OH)2
  • 2(C6H10O5)n + n[Cu(NH3)4](OH)2 → {(C6H9O5)2[Cu(NH3)4]}n + 2nH2O
  • {(C6H9O5)2[Cu(NH3)4]}n + 3nH2SO4 → 2(C6H10O5)n + nCuSO4 + 2n(NH4)2SO4

原料

セルロース源としては次のものが用いられる。

  • コットンリンター
  • 高純度木材パルプ

通常はコットンリンターが用いられる。コットンリンターとは、綿花種子周辺に存在しているごく短い繊維のことである。

脚注

  1. ^ 世界へ羽ばたくオンリーワン素材へと成長させた たゆみない進化の歴史 - 旭化成 > ベンベルグ > ベンベルグの世界 > ヒストリー(更新日不明)2018年3月13日閲覧