緊縮財政政策
緊縮財政政策もしくは緊縮財政(英:austerity measures, fiscal consolidation, fiscal austerity)とは、政府支出の削減や増税といった手段で政府の財政を均衡させる試みのことである[1][2]。
概要
緊縮財政政策の類義語として収縮的財政政策(contractionary fiscal policy)があげられる。緊縮財政においては公的支出が縮小され、具体的には公務員の人員削減や給与カット、社会保障水準の引き下げ、インフラストラクチャー投資の削減などが行われる。
研究や教育への政府支出の削減の結果として、研究プロジェクトの規模縮小や学費の値上げが起こる可能性もあるが、教育費には配慮して値上げされない場合もある。緊縮財政の施行は総需要を引き下げる効果があるので、好景気下で行われるのが望ましい。不況下の緊縮財政政策は経済成長率を悪化させ逆効果となる可能性が高い[3]。
世界金融危機
世界金融危機ののちに財政赤字に陥った各国で緊縮財政が採用され、特にヨーロッパのユーロ圏に深刻なマイナスの影響を与えた。欧州委員会(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)は支援の条件として緊縮財政を要求した[注釈 1]。2011年にはユーロ圏労働人口の10%が失業し、若者(15歳から24歳)の失業率は20%と上昇した。財政赤字が深刻だった国家の失業率は、アイルランド全体が15%・若者が30%、ギリシャ全体が14%・若者37%、のちにはスペイン全体が20%・若者44%となった。不況が続く各国では、緊縮財政を要求する国際機関に対する非難が高まった[4]。
IMFは、緊縮財政によって景気回復をすると予想したが、実際には雇用減少・消費低迷・信用下落を招いた。2012年にはIMFは緊縮財政が誤りであると認める結果となった[5]。
出典・脚注
注釈
- ^ この3機関はトロイカとも呼ばれた。
出典
関連文献
- デヴィッド・スタックラー; サンジェイ・バス 著、橘明美, 臼井美子 訳『経済政策で人は死ぬか?―公衆衛生学から見た不況対策(Kindle版)』草思社、2020年。(原書 Stuckler, David; Basu, Sanjay (2013), The Body Economic. Why Austerity Kills)
- アダム・トゥーズ 著、江口泰子, 月沢李歌子 訳『暴落 - 金融危機は世界をどう変えたのか(上・下)』みすず書房、2020年。(原書 Tooze, Adam (2018), CRASHED: How a Decade of Financial Crises Changed the World, London: Allen Lane and New York: Viking)