ダイヤルパルス
ダイヤルパルスは、アナログ電話回線において、接と断により端末設備(電話機)から電話交換機へ送出する選択信号の名称である。トーンダイヤルに対比して用いられる場合は、ダイヤルパルスに対応した回線種別を指すことが多い。
信号方式には10パルス毎秒方式(10 pps)と20パルス毎秒方式(20 pps)がある。
ダイヤルパルス式電話機は、代表的には後述する回転ダイヤル式電話機であるが、押しボタン式電話機の中にもダイヤルパルスを発出できるもの(アウトパルス方式)がある。
用語
- パルス
- 回線の接(メーク)と断(ブレーク)により送出される信号。
- パルス列
- パルスを複数個連続して送る信号。ブレークの回数が数字を意味し(但し0は10回)、続くポーズによって数字1個の送信が終わる。
- メーク率
- 1回のパルスを構成するメークとブレークを合わせた時間のうち、メークの占める時間の割合(=(メーク時間)÷(メーク時間+ブレーク時間))。
- ミニマムポーズ
- 隣接するパルス列を識別する為に規定された最小の休止時間(=数字と数字の間の区切り時間)。
条件
ダイヤルパルスの種類 | ダイヤルパルス速度 | メーク率 | ミニマムポーズ |
---|---|---|---|
10パルス毎秒方式 | 10±1.0/s | 30%以上42%以下 | 600ms以上 |
20パルス毎秒方式 | 20±1.6/s | 30%以上36%以下 | 450ms以上 |
回転ダイヤル式電話機
回転ダイヤル式電話機とは、ダイヤル操作(電話番号の送出操作)する機構に回転式円盤を用いた旧式の電話機のこと。
ダイヤル操作は、奥に数字が書かれた回転ダイヤルの穴に指を入れ、指止めまで右回りに回す。指を離すと回転ダイヤルが戻り、このときに電話番号1桁分のパルス列をアナログ電話回線に送出する。これを電話番号の桁数分繰り返して、自動電話交換機に電話番号を伝える。
日本では、1985年の端末機器自由化により減少し、2002年に製造中止となった。
備考
ダイヤルパルスはフッキング操作でも発生させることができる。しかし人間の手によるフッキング操作では繰り返し数に限界がある。そこで大きな数字には回転ダイヤルを用いるとするならば、日本国内ではたとえば以下の操作で117の時報サービスに電話をかけることができる。
- 短いフッキング操作を1回・・・「1」を送出
- 短いフッキング操作をもう1回・・・さらに「1」を送出
- 回転ダイヤルで「7」をダイヤル・・・「7」を送出
- ・・・117番(時報サービス)へ接続される
1926年(大正15年)1月、自動交換機の導入に合わせて、回転ダイヤル式電話機の使用がはじまった。それまでの手動交換では受話器を上げると交換台の加入者ランプが点灯する仕組みだった。加入者は受話器を上げたあと、フックスイッチを手で上下させて、交換台にある加入者ランプを点滅させることで交換手の注意を引き、電話に出た交換手に接続先の電話番号を告げていた。
自動交換になったエリアでは「112番」が火災報知用の電話番号として選定されていたが、手動交換時代の長年のフッキング操作の手癖が抜けずに、局番が「2」で始まる神田方面へダイヤルすると、以下のように消防機関の火災報知電話112番に誤接続される例が多発した。
- 短いフッキング操作を1回・・・「1」を送出
- 短いフッキング操作をもう1回・・・さらに「1」を送出
- 回転ダイヤルで神田方面の局番「2」をダイヤル・・・「2」を送出
- ・・・112番(消防機関)へ接続される
そのため、1927年(昭和2年)10月、末尾の2番を局番として用いていなかった「9」に変えた。以後、日本では消防機関への緊急通報用の電話番号は「119番」である。
関連項目
参考文献
- 電話サービスのインタフェース NTT東日本 (PDF)
- 電話機のあゆみ NTT東日本 (PDF)
- 鈴木利雄, 川治健一, 関口理希 ほか、日本の家庭を隅々までつないだ黒電話 601A型のダイヤルの開発に携わって 『科学・技術研究』 2016年 5巻 1号 p.123-1128, doi:10.11425/sst.5.123