狼犬
狼犬(おおかみいぬ、ろうけん)とはイヌとオオカミの交雑犬、若しくはその交配を元に作出した犬の品種のことである。英語ではウルフ・ハイブリッド(英:Wolf Hybrid)、ウルフドッグ(英:Wolf dog)などと呼ばれる。
概要
狼犬は大型犬種のひとつ。シベリアン・ハスキーやアラスカン・マラミュート、ジャーマン・シェパード・ドッグなどの犬種と家畜化されたオオカミとを交配したものをこう呼ぶ。オオカミの血が75 %以上のものをハイコンテンツあるいはハイパーセントと呼び、外見がオオカミにより近いために好まれる傾向にある。同様に、オオカミの血が薄まるにつれてミッドコンテンツ、ローコンテンツなどと呼ぶ。
特徴
身体的特徴は掛け合わされた犬種によってやや異なる。体高66 cmから81 cm。体重45 Kgから70 Kg。姿形が似たハスキーなどと比べると痩せて見えるが、体毛の密集度が高いために寒冷には強い。耳は立ち耳で顔は細長く、聴力と嗅覚は他犬種と比べても特に優れる。
性格面では身体面よりも個体差が大きいとされる。家畜を襲うオオカミのイメージから凶暴な犬種と見られがちであるが、飼い主がリーダーとして主導権を握っていれば無闇に人畜を襲うことはない。野生味が強いために警戒心は強い反面、自然環境で生存しようとする本能から、仲間と認めた者とは極めて良好な信頼関係が築かれる。その結びつきの強さは、イエイヌとして長い歴史をもつ他犬種よりはるかに強いとされる。
飼育
高度な社会性をもち、リーダーと認めた者には従順であるが、人間の家畜または愛玩動物として特化改良されてきた他犬種と比べると、馴致は困難な部類に入る。知能は非常に高いが独立性が強く、ブリーダーやトレーナーとして熟練した者でなければ、完全にしつけることは容易ではない。
飼育に必要な面積は1頭当たり30 m2以上、理想的な運動量は1日2 - 3時間以上とされる。また、跳躍力が非常に高く、個体によっては2 - 3 m程度の柵を軽々と飛び越えるものもある。飼育に当たっては充分な敷地面積と設備があること、飼育者自身が飼育に時間を割けることが最低条件となる。
以上のような理由から、日本国内での飼育頭数は非常に少ない。また、交配が行われているカナダやアメリカでは、飼育環境の不備による脱走や、飼い主が扱いかねて放逐するケースが少なくないことから、このような犬種を交配・飼育すること自体に対する批判もある。
日本では、2015年(平成27年)に4頭が管理者の女性を噛んで死亡に至らせたと考えられる事件も発生している[1]。
オオカミとしての性質からウィンター・ウルフ・シンドロームなどの攻撃性を表す傾向があるため、飼育には非常に気を付けなければならない。
主な犬種
なお、便宜上は犬種という呼称を使用するが、日本で犬種認定や犬籍登録を行うジャパンケネルクラブで純血犬種として認められるのはFCI公認犬種である「サーロス・ウルフホンド」及び「チェコスロバキアン・ウルフドッグ」であり、日本で一般的に見られるウルフドッグはアラスカやカナダから輸入された交雑種であるため、正式には犬種としては認められない。
脚注
- ^ “ウルフドッグ、飼っても大丈夫? 女性襲われ死亡:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞(archive.isによるアーカイブ) (2015年11月17日). 2019年2月17日閲覧。
関連項目
- カニド・ハイブリッド
- ノーザン・イヌイット・ドッグ - オオカミに似せて作出された犬種。
- 凍える牙 - 乃南アサの直木賞受賞作の小説。ウルフドッグが登場する。
- ジェヴォーダンの獣 - 18世紀フランスで数十人の人間を襲った「野獣」の正体として狼犬という説がある。
- 白い牙 - ジャック・ロンドンの小説。狼犬が主人公。
- ウルルの森の物語 - ウルル役(撮影時は生後40日)として撮影につかわれた。
- バルト (映画) - スピルバーグ製作総指揮のアニメ。狼犬が主人公。