ブラック部活
ブラック部活(ブラックぶかつ)もしくはブラック部活動(ブラックぶかつどう)[1]とは、日本の教育(学校教育、主に小・中学校および高校)において、いわゆる「帰宅部」を一切認めず、生徒や保護者の同意を得ないまま部活動への入部を強制し、または生徒の人格を否定する暴言や、体調を崩すほどの長時間拘束をする部活動のことを指す俗語で、いわゆるブラック校則の一つに含まれる。
鍛冶舎巧は「引き出しの少ない指導者は生徒を型にはめたがる。個性を尊重し奔放にやらせると自分が対応できなくなるから」と述べ、競技経験のない部活の顧問を任される教員が多く、結果的に事故・事件に発展しているケースもある。
例としては、高校球児の頭髪が挙げられ、周囲の固定観念が根強い。九州地方のチームが甲子園に立った時、監督が選手の頭髪を自由化すると、丸刈りを経験したOB(男子卒業生)やファンから「球児らしくない」「自分も丸刈りにしたのに、後の世代が丸刈りでないのは不公平だ」といった苦情が殺到したという。しかし、丸刈りの強制は明確な体罰(教育指導上の暴力)と定義されている[2]。
スタンフォード大学(米国)アメリカンフットボール部コーチの河田剛は「日本人はケガをおしてやり続けることが素晴らしいと思っている」と言及している[3]。
問題点
- 入部の強制
文部科学省が告示する学習指導要領では本来「部活動は学校教育活動の一環として、スポーツや文化、学問等に興味と関心をもつ同好の生徒が教職員の指導の下に、主に放課後などにおいて自発的・自主的に活動するもの」[4]と定義されているが、ほとんどの中学・高校がこの指針には従っておらず、生徒(主に1・2年生)と保護者の同意を得ないまま入部を強制しており、いわゆる「帰宅部」を一切認めていない(受験を控える3年生では、1学期末で入部を免除される場合がある)。文化系・運動系を問わず、いずれかの部に属しなければならないことが半ば不文律となっている。なかには男子生徒に対して、運動系部活動への強制入部が義務付けられている学校さえもある。
それにより、「部活動以外の民間のスポーツクラブや習い事に所属したい」と考えている生徒がスケジュールの都合上、諦めなければならないケースが増大する。これは民業圧迫と解釈できる。
- 過酷な練習
NHKのテレビ番組『クローズアップ現代+』で、練習中に理不尽なパワーハラスメント行為を行う部活動の問題が取り上げられた。
「生徒の人格を否定する暴言や、体調を崩すほどの長時間拘束」といった内容で、こうした部活動を「ブラック部活」と呼び、吹奏楽部の指導者が生徒を罵倒したり椅子を蹴ったりする音声が流され、その実態が放送された[5]。
関連項目
- ブラック校則
- ブラック企業
- ブラックバイト
- いじめ
- 体育会系
- 根性論
- 体罰
- 指導死
- 部活動における事件・事故一覧
- 全国柔道事故被害者の会 - 柔道事故被害者のサポートを目的とした団体。
参考文献
- 岸本肇「部活動改革の立脚点」『研究論叢』第24号、神戸大学教育学会、2018年、39-47頁、doi:10.24546/81010516、ISSN 0919-7664、NAID 120006522688。
- 戸川点「教職科目における部活動と体罰の扱いについて」『拓殖大学教職課程年報』第1号、拓殖大学教職課程運営委員会、2018年10月、77-87頁、ISSN 2434-4249、NAID 120006603865。
脚注
- ^ 内田良. ブラック部活動: 子どもと先生の苦しみに向き合う. Tōyōkan Shuppansha, 2017. ISBN 978-4491033334
- ^ 2018年6月7日付「中日新聞朝刊」27面
- ^ 2018年6月9日付「中日新聞朝刊」29面
- ^ 高等学校学習指導要領解説 特別活動編,46 (PDF) 文部科学省 2008年7月
- ^ 「死ね!バカ!」これが指導? ~広がる“ブラック部活”~ NHKクローズアップ現代+ 2016年8月1日放送分