つけペン
つけペン(付けペン)は、ペン先(ペンの先端)にインクをつけながら筆記・描画に用いるペン。インク自体の表面張力および粘性によって少量のインクをペン先の一部に保持し、そこから毛管現象を利用して微量のインクを紙などの筆記・描画面に導く構造を持つものが多い。
概説
18世紀に金属製のペン先が実用化されるまで筆記や描画には羽根ペンや葦ペンなど、先端を削ってインクを直接付けて使用するつけペンが使用された[1]。しかし、万年筆やボールペンなどのように内部にインク格納部を持ち、頻繁にペン先にインクをつける必要のないペンが普及したため、今日ではレトロニムとして「つけペン」と特記するようになった。
今日では頻繁にペン先にインクをつけなければならないわずらわしさから一般の筆記用に用いられることはほとんどなく、様々なペン先の特性によって描線の効果を期待する描画、例えば漫画作品のペン入れや、美術作品としてのペン画、生物学の分類学における記載図の描画などに用いるのが一般的である。また、墨汁などのボールペンや万年筆にいれて用いることが出来ないインクを使用しなければならない場面にも用いられる。
ほとんどのつけペンはペン先とペン軸とに分かれていて、それぞれを特性や好みで選択し組み合わせるのが普通である。ガラスペンはペン先とペン軸が一体化したものが多く[2] 、丸ペンは専用のペン軸があるが、それ以外のほとんどの金属製ペン先とペン軸は互換性がある。インクは購入したインク瓶を机上に置いて、それをそのまま利用する場合と、机などに埋め込んだ容器など専用のインク入れに移して使う場合がある。
昭和40年代初頭までは銀行や郵便局には一般的に、振込用紙の記入用にはボールペンではなくインク壺とつけペンがセットで備えられていた。
種類
Gペン
もともと英字を書くのに使われたペンである。おもな特色は軟らかいことで、この軟らかさは強弱をつけやすいものとなっている。迫力が出やすいため、漫画、特に劇画に利用されることになった。
練習を重ねればどんな線でも描けるようになるので、このペンだけで輪郭から細部まで全ての描写をしてしまう漫画家もいる。
丸ペン
本来はマッピングペンと呼び、地図の等高線を描くために利用されていた。写真下の左から3番目。日本では丸ペン(まるぺん)と呼ばれ、ペン画や図面を描くのに利用される。メーカーによってペンの硬さや線の細さ、使い心地等が微妙に違う。ペンは、A(硬質)、E(軟質)がある。
細い線が描け、強弱も付けることができるので、Gペンと共に漫画を描くのにも広く利用されている。体毛の先端が細くなる様を容易に描けるため、昆虫の分類学における記載図の描画にも欠かせない。
日光ペンとタチカワの丸ペンは、現在、鋼の種類、作業工程、焼き温度、焼きなまし温度すべてが同一である。そのため刻印以外はほとんど差異が無い。
スクールペン
日本で簿記、帳簿用に開発された。Gペンとほぼ同じ形をしているが、側面の切り込みが無く、線がGペンよりも細く硬い傾向にある。
カブラペン
形状からスプーンペン、たまペン、さじペンとも呼ばれる。英字の筆記用に作られたペン。Gペンより硬めで、線に抑揚が付きにくい。漫画を描くのにも利用される。日本では漢字や仮名 (文字) を筆記しやすいように鋼素材に錫メッキを使用し表面を半光沢(ニューム色)にした物もある。
日本字ペン
日本字が書きやすいようにカブラペンを特化させたもの。独特の形をしている。カブラペンよりしなやかな線が出せる反面、強い弾力性には欠ける。
その他
脚注
- ^ 金子 亨、速水 敬一郎、西川 正恒、村辺 奈々恵、佐藤 みちる「素描に関する一考察─ リアリズム絵画を中心に ─」『東京学芸大学紀要. 芸術・スポーツ科学系』第64巻、東京学芸大学学術情報委員会、2012年10月31日、11-35頁。
- ^ かつては毛筆のように竹の軸にガラスのペン先が固定されているものもあった。また、ペン軸のアタッチメントを変えることでガラスペン先が使用できるようになっているものもある。