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長銀事件

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最高裁判所判例
事件名  証券取引法違反被告事件
事件番号 平成17(あ)1716
平成20年7月18日
判例集 刑集第62巻7号2101頁
裁判要旨
 旧株式会社日本長期信用銀行の平成10年3月期に係る有価証券報告書の提出及び配当に関する決算処理について、資産査定通達等によって補充される改正後の決算経理基準(判文参照)は、関連ノンバンク等に対する貸出金の資産査定に関しては、新たな基準として直ちに適用するには明確性に乏しく、従来のいわゆる税法基準の考え方による処理を排除して厳格に上記改正後の決算経理基準に従うべきことも必ずしも明確であったとはいえず、そのような過渡的な状況のもとでは、これまで「公正ナル会計慣行」として行われていた税法基準の考え方によったことは違法ではなく、同銀行の頭取らに対する虚偽記載有価証券報告書提出罪及び違法配当罪は成立しない。
第二小法廷
裁判長 中川了滋
陪席裁判官 津野修今井功古田佑紀
意見
多数意見 全員一致
意見 あり
参照法条
証券取引法(平成10年法律第107号による改正前のもの)197条1号、証券取引法(平成12年法律第96号による改正前のもの)207条1項1号、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)32条2項、商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)489条3号、商法(平成11年法律第125号による改正前のもの)285条の4第2項
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長銀事件(ちょうぎんじけん)とは、旧日本長期信用銀行1998年3月の決算期に絡んで粉飾決算容疑で旧経営陣3名逮捕された事件である。

概要

1998年当時、長銀は財政悪化に苦しんでいた。そして、1998年3月期決算において関連ノンバンクへなどへの不良債権を処理せず、損失を約3100億円も少なく記載した有価証券報告書を提出した。その結果、配当できる利益がないにもかかわらず株主に約71億円を違法配当した。その年、金融再生法の適用第一号となり、長銀は破たんした。その後、長銀は一時国有化された。当時、24兆円もの資産を持つ大規模銀行の破たんは世界でも例がなかった。その後、投入された公的資金約7兆8,000億円のうち約3兆6,000億円は損失を回収できなかった。東京地方検察庁特別捜査部がこの事件を捜査する中で1999年5月に重要視していた経営陣のうち2名が自殺した。その後、特別捜査部は、1998年3月期決算などの違法配当などの粉飾決算容疑や「融資の資料は存在しない」などと虚偽の報告をした検査妨害罪で1999年6月に大野木克信頭取ら旧経営陣3名を証券取引法違反や長期信用銀行法違反の容疑で逮捕した。

裁判経過

その後、検査妨害罪で起訴猶予処分となったが、粉飾決算容疑で起訴された。

旧経営陣3名は当初は粉飾決算の罪を認めていたものの、当時の会計基準と照らして適法だったと裁判では無罪を主張。2002年9月、東京地裁1997年3月に旧大蔵省から出された資産査定通達に従い、関連ノンバンクなどへの査定を厳しくするべきだったとして執行猶予付きの有罪判決を下す。東京高裁2005年6月21日に控訴を棄却して大野木被告は懲役3年・執行猶予4年、元頭取の鈴木恒男・元副頭取の須田正己被告は懲役2年・執行猶予3年とした。しかし、2008年7月18日の最高裁判決にて、当時の旧大蔵省から出された資産査定通達は指針にすぎず、大手18行のうち14行が旧基準で不良債権処理をしていたという実態から、当時の会計処理は罪に問えないと無罪判決を下す。しかし、裁判長の1人古田佑紀は「長銀の決算は当時は違法ではないが、抱えている不良債権の実態と大きく離れており、企業の財務状態をできる限り客観的に表すべき企業会計の原則や企業の財務状態の透明性を確保することを目的とする証券取引法における企業会計の開示制度の観点から見れば、大きな問題があったものであることは明らか」と指摘していて、長銀の決算に問題があったとする補足意見を述べている。

長銀の不良債権を引き継いだ整理回収機構は、民事裁判を起こしていたが1998年3月期決算などについての賠償責任は認められなかった。

その他

  • この判決は長銀事件と構造が似ている旧日本債券信用銀行が起こした日債銀事件にも影響を及ぼしたと言われている(日債銀の旧経営陣の裁判は最高裁が審理を差し戻し、差し戻し控訴審で無罪判決が確定)。日債銀事件で大蔵省OBが起訴されているのに長銀事件では経営陣にしか責任を求めていないという点や、長銀の破たんの原因と呼ばれる杉浦敏介は公訴時効により刑事責任を免れている点が指摘されている。
  • 検察による調査も問題が生じている[1]

参考文献

  • 朝日新聞2008年7月18日朝刊
  • 伯野卓彦『レクイエム 「日本型金融哲学」に殉じた銀行マンたち

脚注

関連項目