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2,2,2-トリフルオロエタノール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2,2,2-トリフルオロエタノール
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識別情報
CAS登録番号 75-89-8 チェック
PubChem 6409
ChemSpider 6169
特性
化学式 C2H3F3O
モル質量 100.04 g/mol
外観 無色液体
密度 1.393 g/mL, 液体
融点

−45.0 ℃

沸点

78.0 ℃

への溶解度 可溶
エタノールへの溶解度 可溶
酸解離定数 pKa 12.4
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −859.4 kJ/mol[1]
標準燃焼熱 ΔcHo ? kJ/mol
標準モルエントロピー So ? J.K-1.mol-1
危険性
EU分類 有害 (Xn)
NFPA 704
3
2
1
Rフレーズ R10, R20/21/22, R36/38, R62
Sフレーズ S16, S36/37/39, S45
関連する物質
関連するアルコール ヘキサフルオロ-2-プロパノール
関連物質 1,1,1-トリフルオロエタン
トリフルオロ酢酸
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

2,2,2-トリフルオロエタノール(: 2,2,2-Trifluoroethanol)は化学式CF3CH2OH で表される有機化合物である。TFEと略されることがある。水に可溶の無色透明な液体であり、エタノールと類似した臭気を有する。トリフルオロメチル基電子求引性であるため、エタノールと比較すると酸性度が強い。このためTHFピリジンといった複素環式化合物と、水素結合による安定な錯体を形成する。

製造

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工業的にはトリフルオロ酢酸誘導体(エステルや酸塩化物など)のヒドリド還元により製造されている[2]

利用

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有機化学では溶媒として使用される[3][4]。例えば、過酸化水素を用いた硫黄の酸化反応などに用いられる[5]

生物の分野では、NMRを用いたタンパク質の立体構造解析において補助溶媒として用いられることがある。添加することで測定対象の溶解性を向上させることが可能となる場合があるためである。濃度によっては、タンパク質の立体構造にも大きな影響を与える[6]

このほかにもナイロンの製造や製薬の分野で用いられている。

反応

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酸化によりトリフルオロアセトアルデヒドトリフルオロ酢酸となる。ホーナー・ワズワース・エモンズ反応の変法などでは、トリフルオロメチル基源として利用される。

2,2,2-トリフルオロ-1-ビニロキシエタンは、トリフルオロエタノールとアセチレンとの反応で製造される。

出典

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  1. ^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem. Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
  2. ^ Günter Siegemund, Werner Schwertfeger, Andrew Feiring, Bruce Smart, Fred Behr, Herward Vogel, Blaine McKusick “Fluorine Compounds, Organic” Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, John Wiley & Sons, 2007.
  3. ^ Bégué, J.-P.; Bonnet-Delpon, D.; Crousse, B. (2004). “Fluorinated Alcohols: A New Medium for Selective and Clean Reaction” (Review). Synlett (1): 18–29. doi:10.1055/s-2003-44973. 
  4. ^ Shuklov, Ivan A. ; Dubrovina, Natalia V.; Börner, Armin (2007). “Fluorinated Alcohols as Solvents, Cosolvents and Additives in Homogeneous Catalysis” (Review). Synthesis 2007: 2925–2943. doi:10.1055/s-2007-983902. 
  5. ^ Kabayadi S. Ravikumar, Venkitasamy Kesavan, Benoit Crousse, Danièle Bonnet-Delpon, and Jean-Pierre Bégué (2003). "Mild and Selective Oxidation of Sulfur Compounds in Trifluorethanol: Diphenyl Disulfide and Methyle Phenyl Sulfoxide". Organic Syntheses (英語). 80: 184.
  6. ^ 浜田大三, Christopher.M. Dobson, 「1A1700 トリフルオロエタノール存在下での蛋白質の折れたたみ反応」 『生物物理』 2000年 40巻 supplement号 p.S11-, doi:10.2142/biophys.40.S11_1, 日本生物物理学会

外部リンク

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