電解水

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電解水(でんかいすい、Electrolyzed water)とは、水道水や食塩水などを電気分解することで得られる水溶液の総称である。生成装置によって、生成する電解水の物性が決まる。飲用のアルカリイオン水と洗浄殺菌用の電解水の2つに大別できる。強酸性電解水(殺菌用の電解水)を生成する装置からは、洗浄用の強アルカリ性電解水も生成する。殺菌効果の高いオゾンを含むオゾン水を水道水から作る技術もあるが、一般的に電解水と呼ばれるものとは異なる。

飲用のアルカリイオン水は、アルカリイオン整水器(家庭用医療用物質生成器[1][2])から生成するpH9~10の電解水で、日常的飲用により、胃腸症状改善効果が認められている(詳細はアルカリイオン水を参照)。

殺菌効果がある電解水は酸性電解水、電解次亜水と呼ばれており、それぞれ専用の装置からつくられる。
酸性電解水は、主成分が次亜塩素酸であり、その強い殺菌作用および高い安全性から食品添加物(殺菌料)としての用途が認可されており[3][4](詳細は次亜塩素酸水を参照)、pHの違いにより強酸性電解水、弱酸性電解水、微酸性電解水に分けられる。 強酸性電解水を生成する装置の中には、手指洗浄[5]や内視鏡の洗浄用に薬機法で認可された装置もある [6]

電解次亜水は次亜塩素酸ナトリウムを希釈したものと同等であると解釈されている[7]

強酸性電解水を生成する装置からは、pH10~11.5の強アルカリ性電解水も生成される。この強アルカリ性電解水は、希薄された苛性ソーダと同様に油脂やタンパク質などの有機物に対する洗浄能力がある[8]

保存性[編集]

電解水使用の原則は、装置から生成したものをその場で使用するが、実使用上、一時的にタンク等に貯めて使用するなどの工夫がされている。
飲用のアルカリイオン水をペットボトルや水筒に入れ持ち運んだ場合、1日以内に飲みきる方が良い。
強酸性電解水は有効塩素濃度の減少が速いため遮光密閉冷所保存で2週間程度だが、微酸性電解水は安定性が高く、同条件であれば室温でも半年以上も有効塩素濃度が持続する [9]

家電への応用[編集]

電解水で汚れを落とし除菌を行う洗濯機や洗浄機器、除菌を行う加湿器などが製品化されている。電解水技術を使った空気清浄機が新型インフルエンザウイルスと同型のウイルスを99%殺菌するなどの効果も報告されている[10]

環境への影響[編集]

強アルカリ性電解水の洗浄効果を利用した洗浄時の環境負荷低減[11]、産業分野でも電解水の利用への置き換えによってコストや界面活性剤の使用量や廃棄処理の削減が行われている例がある。電解水は、安全性が高いと評価され化粧品の乳化剤などとして界面活性剤の代替利用も模索されている[12]

手洗いによる有機物除去と殺菌[編集]

手洗い方法による菌数およびATPの変化(被験者15人)[13]
方法 一般生菌 ATP(RLU)
24時間後 48時間後
コントロール 314 483 6406
手指消毒剤 168(46) 128(73) 5373(16)
ハンドソープ 205(35) 219(55) 557(91)
強酸性電解水 54(83) 88(82) 950(85)
強アルカリ性電解水 134(57) 133(72) 1175(82)
強アルカリ性電解水&強酸性電解水 92(71) 98(80) 482(92)
( )は減少率 単位%

強アルカリ性電解水と強酸性電解水を組み合わせた洗浄消毒が提唱されている。手洗い方法を比較検討するため、ハンドソープ、エタノールと塩化ベンザルコニウムを含む手指消毒剤、強酸性電解水、強アルカリ性電解水、強アルカリ性電解水次いで強酸性電解水の5種類で検討した[13]。その結果、ハンドソープでは汚れ除去作用は強いが殺菌力が一番弱く、強アルカリ性電解水次いで強酸性電解水が総合的にもっとも強い洗浄効果があり、強酸性電解水と強アルカリ性電解水でも手指消毒剤と同等以上の効果がみられた[13]。また電解水では手が荒れないという意見が得られた[13]。ATP法は食品工場の衛生管理に用いる手指の微生物と有機物による汚れの指標であり、1500RLU 以下を綺麗であると判定する[13]。強アルカリ性電解水と強酸性電解水で手洗いする方法を3施設で行った結果、いずれの施設でも一般細菌およびATPの顕著な減少がみられ手あれも少なく、比較対象の手指消毒剤(ウェルパス)では一般細菌の顕著な減少、非抗菌石鹸ではATPの顕著な減少がみられた[14]

手術前の手洗いとして強アルカリ性電解水と強酸性電解水は、無添加石鹸と4%クロールヘキシジンで有機物除去と消毒をした場合と比較して、スワブ法の定量培養、ATP法による有機物汚染度、パームスタンプ法による一般細菌コロニー数を測定したところ細菌学的に十分な殺菌効果があるため手術前の手洗いとしてまったく問題なく、手荒れがない、コストが安い、環境負荷が低いなどのメリットもあると報告されている[15]

生成装置の種類と生成する電解水[編集]

電解水は電解水生成装置から生成される。電解水の生成器には連続式とバッチ型がある。

連続式
電解槽に被電解物質(水道水、塩化ナトリウム水溶液、希塩酸など)を連続供給しながら電解分解を行う方法。大量生成装置にこのタイプが多い。
バッチ型(貯槽式)
一定量の被電解質(水道水、塩化ナトリウム水溶液、希塩酸など)を電解槽にため、電気分解してから利用する方式。少量生成装置にこのタイプが多い。

電解槽は主に3種類のタイプがある[9]

一室型電解槽
陰極と陽極で構成される(陰極―陽極)。隔膜による仕切がなく、無隔膜式電解槽とも呼ぶ。
二室型電解槽
陰極と陽極の間に隔膜の仕切があるもの(陰極―隔膜―陽極)。有隔膜式電解槽とも呼ぶ。
三室型電解槽
陰極と陽極の間に中間室が設けられた構造で、陰極および陽極と中間室とのそれぞれの間に隔膜の仕切がある(陰極―隔膜―中間室―隔膜―陽極)。有隔膜式電解槽とも呼ぶ。
電解水のいろいろ[9]
電解水 電解槽/生成極 被電解液 pH 有効塩素 認可状況
強酸性電解水 二室型・三室型 / 陽極 食塩水(<0.2%) 2.2~2.7 20~60 ppm 食品添加物(殺菌料)* 医療機器** 特定防除資材***
強アルカリ性電解水 二室型・三室型/ 陰極 食塩水(<0.2%) 11~11.5 -
弱酸性電解水 二室型・三室型 食塩水(<0.2%) 2.7~5 10~60 ppm 食品添加物(殺菌料)*
微酸性電解水 一室型 希塩酸(2~6%) 5~6.5 10~30 ppm 食品添加物(殺菌料)* 特定防除資材***
微酸性電解水 一室型 塩酸/食塩混合水 5~6.5 50~80 ppm 食品添加物(殺菌料)*
電解次亜水 一室型 食塩水(<0.2%) 7.5~10 50~200 ppm 次亜塩素酸ナトリウム希釈液と同等性
アルカリイオン水 二室型/陰極 水道水 9~10 - 家庭用医療用飲用水(胃腸症状改善)[1][2]

*食品添加物(殺菌料)については次亜塩素酸水を参照
**医療機器には、強酸性電解水生成装置  医療機器コード:70477000[5] 、軟性内視鏡用洗浄消毒器 医療機器コード:35628000[6]がある。
***特定防除資材での名称は、電解次亜塩素酸水であり、塩酸または塩化カリウム水溶液を電気分解したものに限られている[16]

厚生労働省が定める酸性度による分類
  • 強酸性 pH3以下
  • 弱酸性 pH3~5
  • 微酸性 pH5~6.5

強酸性電解水[編集]

強酸性電解水は略されて強酸性水とも呼ばれる。1987年に強酸性電解水生成装置が誕生し[17]、すぐれた殺菌・消毒剤として広く用いられるようになった[18]。強い殺菌力を持つことが特徴である。強酸性電解水は厚生労働省によって、生成装置とのセットで1996年に手術者及び介助者の手指消毒、1997年に消化管内視鏡洗浄消毒、2002年に次亜塩素酸水として食品添加物に認可された(詳細は次亜塩素酸水を参照)。日本で食品に使用する場合は、最終食品の完成前に除去することと厚生省告示により定められている[19]

強酸性電解水の抗微生物効果[20]
(殺菌またはは失活するまでの時間)
微生物 強酸性電解水 0.1% NaCIO
Staphylococcus aureus
(黄色ブドウ球菌)
<5秒 <5秒
S. epidermidis <5秒 <5秒
Pseudomonas aeruginosa
(緑膿菌)
<5秒 <5秒
Escherichia coli
(大腸菌)
<5秒 <5秒
Salmonella sp.
(サルモネラ菌)
<5秒 <5秒
その他の栄養型細菌 <5秒 <5秒
Bacillus cereus
(セレウス菌)
<5分 <5分
Mycobacterium tuberculosis
(結核菌)
<2.5分 <5分
他の抗酸菌 <1~2.5分 <2.5~30分
Candida albicans
(カンジダ菌)
<15秒 <15秒
Trichophyton rubrum
(トリコフィトン)
<1分 <5分
他の真菌 <5~60秒 <5秒~5分
エンテロウイルス <5秒 <5秒
ヘルペスウイルス <5秒 <5秒
インフルエンザウイルス <5秒 <5秒
0.1% NaCIOは、次亜塩素酸ナトリウム(ミルトン©)を使用

一般的な消毒で用いる次亜塩素酸ナトリウム水溶液はアルカリ性の為、ClO-(次亜塩素酸イオン)が主成分であり、強力な殺菌基盤であるHClO(次亜塩素酸)はあまり含まれていない。対して、酸性である強酸性電解水ではHClOが主成分であり[21]、有効塩素40ppmの強酸性電解水の殺菌活性は、1000ppmの次亜塩素酸ナトリウムと同等かそれ以上である[9]

アルカリ性電解水[編集]

飲用のアルカリイオン水と洗浄用の強アルカリ性電解水がある。 飲用はアルカリイオン整水器(家庭用医療用物質生成器[1][2])から生成し、洗浄用は食塩水などを電気分解した際、陰極側から生成する。

掃除用として市販されているアルカリ性電解水は、食塩水の電気分解で生成された水酸化ナトリウムの約0.2%水溶液である。濃度5%を超えると劇物扱いであり一般向けには販売できない。インターネット上では成分や濃度を記載していない事が多いため注意が必要である。

飲用のアルカリイオン水では、料理の際、抽出成分を多く引き出す用途で用いられている。そのほか、歯科医療での使用が模索されている。

強アルカリ性電解水は、米を生育し収量や品質を改善させる研究も行われている[22][23]

強アルカリ性電解水は血液や油脂等の有機物に対する高い洗浄力がある。先に洗浄処理として強アルカリ性電解水で洗浄後、強酸性電解水で消毒する方法が、消化器内視鏡の洗浄消毒法として有効であることが報告されている[24]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 医薬品医療機器総合機構 連続式電解水生成器[1]
  2. ^ a b c 医薬品医療機器総合機構 貯槽式電解水生成器[2]
  3. ^ 官報第3378号厚生労働省令第75号[3]
  4. ^ 食安発0426第1号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通[4]
  5. ^ a b 薬品医療機器総合機構 基準の詳細 強酸性電解水生成装置[5]
  6. ^ a b 日本機能水学会監修『機能水による消化器内視鏡洗浄消毒器の使用手引き第2版』2015年
  7. ^ 衛化第31号厚生労働省生活衛生局食品化学課長通知[6]
  8. ^ 堀田国元「科学的・技術的および社会的側面からみた電解機能水の信頼性と将来展望」『医工学治療』20(1)、2008年、12-18p
  9. ^ a b c d 日本機能水学会編『次亜塩素酸水生成装置に関する指針第2版』2012年
  10. ^ 三洋電機、「ウイルスウォッシャー」が新型インフルエンザと同型の「H1N1」型に有効(2009年7月22日、家電Watch)
  11. ^ 大浦律子、熊田亜矢子「電解水を利用した洗浄の洗浄排水の負荷低減効果」『大阪人間科学大学紀要』2008年3月、105-110頁。
  12. ^ 北村敏彦、小池真理子ほか「電解水を用いた界面活性剤フリーエマルジョンの作成とその皮膚透過制御効果」『日本化粧品学会誌』32(1)、2008年、1-9頁。
  13. ^ a b c d e 左官愛野、西島基弘「電解水の手洗い効果」『医工学治療』20(1)、2008年、24-29p
  14. ^ 広中伸治 中藤誉子ほか「電解水による衛生学的手指洗浄効果」『日本環境感染学会誌』24巻suppl、2009年1月、P349
  15. ^ 鶴知光、竹内孝仁ほか「強酸性電解水を使用した手術時手洗いに関する消毒効果の検討―従来のスクラブ法及び新しいラビング法との比較試験」『日本環境感染学会誌』24巻suppl、2009年1月、P537
  16. ^ 2 5 消安第5 7 7 6 号 環水大土発第1403281 号 農林水産省消費・安全局長通知 環境省水・大気環境局長通知[7]
  17. ^ ウォーター研究会 『わかりやすい強酸性電解水の基礎知識』オーム社、1997年11月。5頁。ISBN 978-4274023637
  18. ^ 土屋桂、堀田国元「酸性電解水の化学」『拓殖大学理工学研究報告』9(2)、2004年10月、21-30頁
  19. ^ 厚生省告示第370号「食品、添加物等の規格基準」
  20. ^ 岩沢篤郎「医療における電解水の利用と応用」『機能水医療研究』1(1)、1999年、1-8p
  21. ^ 「添加物評価書 次亜塩素酸水」, 2007年1月, 食品安全委員会 (PDF)
  22. ^ 上田知弘、佐能正剛、深井正清ほか「各水稲品種に対する電解水散布による生育促進と収量増加に関する研究」『農業および園芸』83(7) 、2008年7月、785-789頁。
  23. ^ 阿部一博、上田知弘、佐能正剛ほか「強アルカリ性電解水散布による稲作の収量と米の品質に及ぼす影響」『ベジタリアン・リサーチ』8(1・2)、2007年、7-10頁。
  24. ^ 土居教生ほか「内視鏡を介しての感染リスクの高い細菌・ウイルスに対する電解水の効果:in vivo汚染除去試験」『機能水研究』7(1)、2012年、27-31頁

関連項目[編集]


参考文献[編集]

  • 堀田国元「科学的・技術的および社会的側面からみた電解機能水の信頼性と将来展望」『医工学治療』20(1)、2008年、12-18p

外部リンク[編集]